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ジャパニーズモルト「KANOSUKE NEW BORN PEATED」の味

ジャパニーズモルト「KANOSUKE NEW BORN PEATED」の味

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ウイスキーが世界的に品薄状態となっています。その理由は中国人にあるようです。
14億人いる中国人。急速な近代化、そして好景気により富裕層も増えたのでしょう。ウイスキーの良さを知った中国人が買い占めるようになったわけです。とくにジャパニーズモルトは同じアジア人の口に合っているのか人気のようで、どこの蒸溜所も品薄状態。山崎12年の小売希望価格は8500円ですが、価格は高騰し店売りで20000円前後、ノンエイジが9000円となっています。
白州12年は販売停止していたため35000円前後。今年の3月に数量限定販売するため多少落ち着くのかもしれませんが、供給量は依然として少ない状態です。これまで世界的人気がそこまでなかったジャパニーズモルトですが近年こんな感じで有名となり、高嶺の花となってしまいました。

このジャパニーズモルトブームに乗っかって、酒造メーカーが海外で買ってきたウイスキーを日本で瓶詰して「ジャパンウイスキー」として販売しているのも問題になっています。それもこれも蒸留所の運営が大変だからなんでしょう。
ジャパニーズシングルモルトといえばサントリー、ニッカ、キリン、ベンチャーウィスキー、江井ヶ嶋酒造、本坊酒造あたりが有名どころでしょうか。銘柄でいえば山崎、白州、余市、宮城峡、富士山麓、イチローズモルト、あかし、駒ケ岳。このあたりが昔からあるシングルモルトです。今では原酒不足で販売休止をしているものもあり、なかなかお目にかかれません。

でもここ5年くらいの間で30社ほどウイスキー製造免許を取得しているようです。この30社すべてが蒸留設備があるというわけではなく、海外から買ってきたウイスキーを瓶詰するだけの工場もあるようですが、蒸留器を設け自社でウイスキーを製造しているところもあるようです。
例えば茨城にある木内酒造。こちらでは2020年より蒸留所を稼働させているようです。日本酒の八海山で有名な八海酒造もニセコに醸造所を建設するんだとか。こんな感じで色々な酒造メーカーがウイスキー製造に着手しているようです。

先日酒屋でちょっと変わったウイスキーを見つけました。これも近年ウイスキーの製造免許を取得した鹿児島の焼酎メーカー、小正醸造株式会社が出しているシングルモルトウイスキーです。小正醸造といえばメローコヅルが有名です。
一般的な焼酎は陶器やホーローで保存熟成させるのですが、メローコヅルは木樽で熟成させます。そのため樽香がするんです。これがほんとのジャパニーズバーボン。ウイスキーに近い味わいなんです。ここの麦焼酎がバーボンみたいな味だったのでよく買って飲んでいました。
60年以上前より樽を使って焼酎を熟成していたためウイスキーの製造着手もしやすかったのかもしれません。2017年に嘉之助蒸溜所を設立、翌年の18年から稼働しはじめたそうです。

購入したのは「KANOSUKE NEW BORN PEATED 24months white oak」というもの。「PEATED」と書いてある通りピート香が強いウイスキーです。イギリス産のピーティッドモルトを嘉之助蒸溜所で蒸溜。そしてホワイトオークで24カ月熟成したもののようです。

ウイスキーの定義は国によって曖昧です。一番厳しく定義づけしているのはヨーロッパ。

・容量700リットル未満の木製樽における3年以上の熟成。
・最低アルコール強度は40%。
・甘味、香料は足さず、着色のための無味カラメル以外の添加物を含まない。

反対に日本のウイスキーの定義は「10%以上穀類由来の原酒を使用」とだけです。基準が緩いため未熟なウイスキーにアルコールを足したり、味を調えるために香料を足したりしているのも存在します。これでは日本のウイスキーのイメージが悪くなるばかり。そんなわけで先日日本洋酒酒造組合が自主的にヨーロッパの基準に近い定義を定めました。

KANOSUKE NEW BORN PEATEDはまだ熟成2年。そのため新しい基準ではウイスキーには該当しません。
ウイスキーの赤ちゃんといったところでしょうか。
生まれて間もないため熟成年数が規定値を満たしていないだけ。今後熟成させて良いものを提供してくれるのでしょう。このボトルはそのお披露目ウイスキーなのでしょう。

定価は3500円。容量は200ml。一般的なウイスキーボトルは700mlなので、それに換算すると8750円になります。カノスケは2年ですが山崎12年と金額が近いです。そう考えるとそこまで安くはありませんが、山崎蒸留所との規模を考えれば仕方ないでしょう。量多く作れないため単価は高くなってしまいます。ちなみに小売希望価格が3500円、店売りでも3500円でしたがネットでは10000円くらいで取引されている模様。品薄状態の蒸留酒も転売ヤーの餌食となっています。とくにウイスキーは海外でも売れる製品です。この辺の新規ウイスキーを買って保存しておけば一年後にはかなり高い金額で売れるんでしょうね。

でも、転売するとなると酒販免許の問題もあります。そもそも転売目的で買ったわけではありません。というわけで飲んでみましょう。

ピートが結構強めです。ほのかに甘みがありますが潮気がけっこう強いです。樽の香りも強い。24カ月熟成とは思えないほど味に深みがあります。熟成期間が短いと味にばらつきがあったり、アルコールっぽさが強くてまろやかさがないのですが、このウイスキーは若くない感じです。しっかりとまとまっていて味に落ち着きがあります。カスクストレングスのためアルコール度数は58%と高め。それによる辛味はありますが、それも悪くありません。かなり良いウイスキーに仕上がっています。

麦芽は輸入物。これが国産を使ったらさらに魅力的となるんでしょうがたぶんそれだとコストが高くなっちゃうんでしょうね。

二日でなくなってしまいました。今回はピートモルトでしたがノンピートのウイスキーもあるそうです。

問題は金銭面。もうちょっと安ければ気軽に買えるんですが200ml3500円は高いです。それだけ手間がかかっているのでしょう。でもその金額出すと手ごろな焼酎が買えちゃうんです。

日本には旨い日本酒と焼酎がある。

これが日本でウイスキーが浸透し辛い原因なんでしょう。それでもウイスキーを作る人たちがいます。
小正醸造以外にもすでに新しいシングルモルトを発売している蒸溜所もあるようです。今度はそれも飲んでみたいと思います。

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