山林生活

鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣法)

鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣法)

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(1)鳥獣法一般

①鳥獣法の概要

鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣法)は、鳥獣保護管理事業計画、鳥獣保護区、鳥獣の捕獲許可、狩猟免許・登録等に関する制度について定めた法律である。

②鳥獣法の目的

鳥獣法の目的は、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化を図り、もって 生物の多様性の確保、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資すること」である(法第一条)。

③対象となる野生鳥獣

鳥獣法の対象となる野性鳥獣は、鳥類及び哺乳類に属するすべての野生生物(ねずみ・もぐら類、海棲哺乳類を含む)である。ただし、ドブネズミなどのいわゆるいえねずみや一部の海棲哺乳類については、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれがあること又は他の法令で適切に管理されていることから、鳥獣法の対象鳥獣から除外されている (法第二条第一項、法第八十条、規則第七十八条)。

※鳥獣の加工品や繁殖鳥獣の一部も鳥獣法の対象になっている。 例:ヤマドリの販売許可など
※鳥獣法の対象にならない鳥獣
ネズミ類:ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミ 海藤哺乳類:ニホンアシカ、ゼニガタアザラシ、ゴマフアザラシ、ワモン アザラシ、クラカケアザラシ、アゴヒゲアザラシ及びジュゴンを除く海棲哺乳類




④鳥獣法の体系

鳥獣保護管理及び狩猟制度は、法律、政令(施行令)、環境省令(施行規則)、条例、告示などにより定められている。従って、制度のしくみや狩猟者が守らなければいけない決まりごとは、鳥獣法(法律)を見ただけではわからない。

⑤担当行政機関

鳥獣法の担当行政機関
国 :環境省(自然環境局野生生物課鳥獣保護管理室)
都道府県:自然環境行政・林野 (農林水産) 行政の担当部局

(2)狩猟鳥獣
①狩猟鳥獣の種類

狩猟鳥獣は、我が国に生息していると考えられる約550種の鳥類、約80種 の獣類(モグラ・ネズミ類、海破哺乳類を入れた場合は約160種)の中から、 狩猟対象としての資源性(肉又は毛皮の利用など)、生活環境、農林水産業又 は生態系に対する害性の程度、個体数などを踏まえて、狩猟鳥類28種、狩猟 獣類20種の合計48種が定められている (法第二条第三項、規則第三条)。

○鳥類(28種)
カワウ、ゴイサギ、マガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、クロガモ、エゾライチョウ、ヤマドリ (亜種のコシジロヤマドリを除く)、キジ (亜 種のコウライキジを含む)、コジュケイ、バン、ヤマシギ(注:別種のアマミヤマシギは含まれない)、タシギ、キジバト、ヒヨドリ、ニュウナイスズメ、 スズメ、ムクドリ、ミヤマガラス、ハシボソガラス、ハシブトガラス

○獣類(20種)
タヌキ、キツネ、ノイヌ、ノネコ、テン(亜種のツシマテンを除く)、イタチ(オスに 限る)、チョウセンイタチ(オスに限る)、ミンク、アナグマ、アライグマ、ヒグマ、ツキノワグマ、ハクビシン、イノシシ(注:雑種のイノブタを含む)、ニホンジカ、タイ ワンリス、シマリス、ヌートリア、ユキウサギ、ノウサギ

※狩猟鳥獣と間違えやすい非狩猟鳥獣

ニホンザル、イタチ (メス)、チョウセンイタチ (メス)、ムササビ、ドバト、 ニホンリス、モモンガ、オオバンなど

※平成14年の鳥獣法改正に伴い、「種類」から「種」表記に変わったが、狩猟鳥獣の対象範囲に実質的な差はない。ほぼ従来どおりである。

※なお、平成25年度に、狩猟島類29種のうち、 ウズラが除外され狩猟島類は28種となった。

②狩猟鳥獣の指定
狩猟鳥獣の指定主体:環境大臣 (法第二条第三項)

③狩猟鳥獣の捕獲規則
生息数が減少した場合など、狩猟鳥獣の保護を特別に図る必要がある場合には、狩猟鳥獣であっても、環境大臣又は都道府県知事によって、一時的に 捕獲 (狩猟)禁止規制や入猟承認などが実施され、生息数の回復が図られる ことがある。
全国的・国際的な規制については環境大臣が、地域レベルの規制については都道府県知事が実施している(法第十二条第一〜三項、規則第十条第一項 ~第二項)。

1)環境大臣による捕獲禁止規則

○ヤマドリ・キジのメス
区域: 全国 (放鳥獣猟区を除く) 期間:平成24年9月15日~平成29年9月14日
※亜種のコシジロヤマドリ及び亜種のコウライキジを除く。

○ヒヨドリ
区域:東京都小笠原村、鹿児島県査美市及び大島郡並びに沖縄県
期間:平成24年9月15日~平成29年9月14日

○ツキノワグマ
区域:三重県、奈良県、和歌山県、島根県、広島県、山口県、德島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県及び鹿児島県 (東京都、京都府、兵庫県及び鳥取県、岡山県の一部地域は都府県告示で禁止)
期間:平成24年9月15日~平成29年9月14日

○シマリス
区域:北海道
期間:平成24年9月15日~平成29年9月14日

2)都道府県知事による捕獲禁止規制の例
兵庫県や京都府のツキノワグマの狩猟禁止など

④狩猟鳥のひな等
狩猟鳥の保護繁殖を図るため、狩猟鳥のひなや卵については、狩猟の対象とされていない(法第二条第三項、法第八条、法第十一条)。

(3)狩猟免許と猟具

①狩猟免許の種類
法定猟法の種類 (使用できる猟具の種類) に応じて、次の4種類の狩猟免 許がある(法第三十九条、規則第二条)。狩猟免許を取得するためには、狩猟について必要な適性、技能及び知識に関して都道府県知事が行う試験に合格することが必要である(法第四十一条、法第四十八条)

○網猟免許:網 (むそう網、はり網、つき網、なげ網)
○わな猟免許:わな (くくりわな、はこわな、はこおとし、囲いわな)
○第一種銃猟免許:銃器 (装薬銃 (ライフル銃・散弾銃)、空気銃)
○第二種銃猟免許:空気銃

※1:囲いわなは、農業者又は林業者が事業に対する被害を防止する目的で設置する場合は、狩猟免許がなくても一定の条件のもとで使用できる場合がある。なお、狩猟とは、法定猟法により狩猟鳥獣を捕獲等することである。

※2:第一種銃猟免許所持者は、使用する猟具の種類として装薬銃の他に空気銃を選択して第一種銃猟登録をした場合、又は第二種登録をした場合、空気銃を使用することができる。

※3:圧縮ガス銃は空気銃の一種とされている。

②狩猟免許を受けることができない者
次の者は狩猟免許を受けることができず、かつ、狩猟免許試験も受けることができない(法第四十七条)。

○20歳に満たない者(ただし、網・わな猟にあっては18歳に満たないもの)
○精神障害、統合失調症、そううつ病 (そう病及びうつ病を含む)、てんかん (軽微なものを除く) などにかかっている者
○麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
○自分の行為の是非を判別して行動する能力が欠如又は著しく低い者
○鳥獣法又は鳥獣法の規定による禁止若しくは制限に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その刑の執行を終り、又は執行を受けることがなくなった日 から3年を経過していない者
○狩猟免許を取り消された日から3年を経過していない者

※狩猟免許試験の日に上記の年齢に満たない者は狩猟免許を受けることができない。また、精神障害等の理由により狩猟免許を受けることができない者は狩猟免許試験を受けることができない。

③猟法の使用規制
狩猟に使用できる猟法は、狩猟免許の種類に応じて決められている。しかし、鳥獣の保護繁殖や危険防止を図るために、一部の猟法については禁止されている(法第十二条第一項第三号、規則第十条第三項)。

ア 狩猟鳥獣の保護に支障を及ぼすことから、使用が禁止さている猟法

・ユキウサギ及びノウサギ以外の対象狩猟鳥獣の捕獲等をするため、はり網 を使用する方法(人が操作することによってはり網を動かして捕獲等をする方法を除く。)
・口径の長さが十番の銃器又はこれより口径の長い銃器を使用する方法
・飛行中の飛行機若しくは運行中の自動車又は五ノット以上の速力で航行中のモーターボートの上から銃器を使用する方法
・構造の一部として三発以上の実包を充てんすることができる弾倉のある散弾銃を使用する方法
・装薬銃であるライフル銃 (ヒグマ、ツキノワグマ、イノシシ及びニホンジカにあっては、口径の長さが五.九ミリメートル以下のライフル銃に限る。) を使用する方法
・空気散弾銃を使用する方法
・同時に三十一以上のわなを使用する方法
・鳥類並びにヒグマ及びツキノワグマの捕獲をするため、わなを使用する方法
・イノシシ及びニホンジカの捕獲等をするため、くくりわな(輪の直径が十二センチメートルを超えるもの、締付け防止金具が装着されていないもの、よりもどしが装着されていないもの、ワイヤーの直径が四ミリメートル未満であるものに限る。)、おし、とらばさみを使用する方法
・ヒグマ、ツキノワグマ、イノシシ及びニホンジカ以外の獣類の捕獲等をするため、くくりわな (輪の直径が十二センチメートルを超えるもの、締付け防止金具が装着されていないものに限る。)、おし、とらばさみを使用する方法
・つりばり、とりもちを使用する方法
・弓矢を使用する方法
・犬に唆みつかせることのみにより捕獲等をする方法、犬に唆みつかせて狩猟鳥獣の動きを止め若しくは鈍らせ、法定猟法以外の方法により捕獲等をする方法
・キジ笛を使用する方法
・ヤマドリ及びキジの捕獲等をするため、テープレコーダー等電気音響機器を使用する方法

イ 危険防止等を目的として、使用が禁止されている猟法

爆発物、劇薬、毒薬、据銃、落とし穴(陥穽)その他人の生命又は身体に重大な危害を及ぼすおそれがあるわなを使用する方法(法第三十六条、規則第四十五条)。これらの危険猟法で鳥獣を捕獲しようとする場合は、環境大臣の許可を受ける必要がある (法第三十七条)。
※人の生命又は身体に重大な危害を及ぼすおそれがあるわなとは、イノシシを宙づりにできるようなくくりわななどである。

かすみ網
はり網の一種であるかすみ網は、法定猟法に使用される猟具であるが、違法捕獲が後を絶たなかったため、使用禁止猟具として、その使用・所持・販売などが厳しく規制されている (法第十六条、規則第十七条)

(4)狩猟免許の効力等免許の有効期間等

1)有効期間
狩猟免許は、管轄都道府県知事 (住所地のある都道府県の知事) によって発行されるが、有効範囲は全国一円である(法第三十九条)。また、管轄都道府県知事の行う講習を受け、適性試験に合格すれば更新することができる (法第五十一桑、規則第五十九~六十一桑)。

2)有効期間
狩猟免許の有効期間(合格当初)は、約3年間である。また、更新された狩猟免許の有効期間は、3年間である (法第四十四条)。

3)免状の携帯等
狩猟をするときは、狩猟者登録証を携帯し、狩猟者記章を見えやすい場所に着用しなければならないが、狩猟免状 (いわゆる免許証) は携帯しなくてもよい(法第六十二条)。しかし、狩猟者登録や更新の時に必要になるので、大事に保管しておく必要がある。

②免許の更新等

1)更新
狩猟免許の更新は、3年目の9月15日に行うこととされている。原則として有効期間の途中(1年目や2年目など)では更新できない (法第五十一条、 規則第六十条)。ただし、有効期間の満了日の異なる複数の狩猟免許を所持している場合は、一定の例外が認められている (規則第六十条第二項)。

2)更新の手続き
3年目の9月14日が来る前に、更新申請書を管轄都道府県知事に提出し、適性検査に合格した場合に更新できる。また、更新に当たっては、講習を受けるよう努めることとされている(法第五十一条、規則第五十八〜六十一条)。 更新しなかった場合は、失効するので、改めて免許試験を受けなければならない (法第五十三条)。ただし、災害などのやむを得ない事情 (詳細は228頁 参照)があって更新手続きができなかった場合は、その事情がなくなった日から1ケ月以内に必要な手続きを行えば、知識試験及び技能試験が免除される (法第四十九条、規則五十六条)。なお、旧狩猟免状は返納しなければなら ない (法第五十四条)。

3)取消し等
鳥獣法に違反したり、適性がなくなった場合は、その程度に応じて、狩猟 免許は取り消されたり、効力が停止されたりすることがある(法第五十二条)。 なお、取り消された場合、狩猟免状は返納しなければならない (法第五十四条)。

ア 取り消される場合(法第四十条第二 号〜四号、法第五十二祭第一項、規則第 四十七条)

・精神障害、統合失調症、そううつ病 (そう病及びうつ病を含む)、てんかん(軽微なものを除く) などにかかった場合
・麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者になった場合
・自分の行為の是非を判別して行動する能力が欠如又は著しく低下した場合など

イ 程度に応じて取り消されたり、効力が停止されたりする場合(法第五十二条 美二項)
・鳥獣法等に違反した場合
・狩猟に必要な適性に欠けるようになった場合

※受験の禁止

狩猟免許を取り消された者は、その後3年間は、どの都道府県でも、取り消された狩猟免許を取得するための試験を受けることができない。また、鳥獣法等に違反して、罰金刑以上の刑を受けた場合は、3年間、すべての狩猟免許試験を受けることができない(法第四十条、法第四十七条)。

※不正な手段を使って狩猟免許試験を受けた場合についても、合格が取り消され、また、免許試験を受けることが期間を定めて禁止されることがある (法第五十条)。

4)住所变更等

住所や氏名に変更があった場合は、遅滞なく管轄都道府県知事に届け出なければならない。届出先の都道府県知事は、新住所地の都道府県知事になる。 また、亡失等したときは、再交付を受けることができる(法第四十六条)。

(5)登録制度

①登録制度の概要
狩猟免許を持っているだけでは、狩猟はできない。狩猟をするには、狩猟をしたい場所の都道府県知事に対して、狩猟者登録をしなければならない (法第五十五条)

無登録狩猟や、自分の登録証を他人に貸したりすることは、重大な法律違反になる (法第八十四条第一項第二号など)。また、狩猟者登録制度の主な目的は次のとおりであるといわれている。

・狩猟事故が発生した場合に備え、被害者致済のための補償能力を審査
・鳥獣の保護繁殖を図るため、各都道府県における狩猟者の入り込み数等を調整

②登録方法
○登録の資格要件 (法第五十八条、規則第六十七条)

1)登録資格
・有効な狩猟免許を持っていること
・3千万円以上の損害賠償の保険 (猟友会の狩猟事故共済、民間保険会社の ハンター保険(第一種銃猟、第二種銃猟)、施設賠償責任保険 (網猟、わな猟) など)に入っていることなど

※銃砲の所持許可と異なり、同居親族の鳥獣法違反などは資格要件と無関係

2)登録の有効期間

登録の有効期間は次のとおりである(法第五十五条)。

○北海道以外の地域:10月15日〜翌年の4月15日 (約6ヶ月間)
○北海道 :9月15日〜翌年の4月15日 (約7ケ月間)

※実際の狩猟期間ではないので要注意。狩猟期間は、何の制限もなければ、この登録の有効期間と同一の期間である。しかし、現在は、鳥獣の保護繁殖等を図るために、3〜4ケ月間 (猟区 (捕獲調整猟区+放鳥獣猟区) については5〜5ケ月半) に制限されている (法第二条第五項、第十一条第二項、 規則第九条)。

3)登録の種類(種類と場所)

登録できる内容は、狩猟免許の種類によって異なる(法第三十九条第三〜 四項、法第五十七条第二項、規則第六十六条)。

○網猟免許(網) :網猟登録
○わな猟免許(わな) :わな猟登録
○第一種銃猟免許(装薬銃(+空気銃)):第一種銃猟登録、第二種銃猟登録
○第二種銃猟免許(空気銃) :第二種銃猟登録

※平成16年の鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則の改正により、第一種 (旧乙種) 銃猟免許所持者は、第一種銃猟登録をする場合に使用する猟具の種類として散弾銃及びライフル銃の他にも空気銃を同時申請した場合は、第二種銃猟登録 (旧内種) をしたことになるので、空気銃を使用することができる。ただし、空気銃を同時に申請しなかった場合は登録の内容を変更する届け出が必要になる。第一種銃猟免許所持者が、空気銃のみに係る登録を行なう場合は、第二種銃猟免許にかかる登録をすることになる。その後、散弾銃及びライフル銃を使用する場合は、第一種銃猟免許にかかる登録が必要となり、その場合は別途狩猟税と登録手数料がかかる。

登録申請書の使用する猟具の記載に当たっては、自分の使用する猟具は総て○をつける。

※捕獲調整猟区のみ又は猟区(捕獲調整猟区十放鳥獸猟区)を登録することはできない。
また、狩猟をしようとする場所の登録は、「都道府県全域(放鳥獣猟区を含む)」、又は「放鳥獣猟区のみ」のどちらかを選択できる。なお、放鳥獣猟区を設定していない都道府県もある (規則第六十六条)。

③登録証

1)携帯等
狩猟をするときは、狩猟者登録証を携帯し、狩猟者記章を着用しなければならない(法第六十二条第一〜二項)。
また、網やわな (網猟やわな猟に使用する猟具) には、その使用する猟具ごとに見やすい場所に住所、氏名、都道府県知事名、登録年度、登録番号を 書いた標識をつけなければならない。また、これらの記載事項は縦横1cm以上の大きさの文字で記載しなければならない(法第六十二条第三項、規則第七十条)。
また、登録証は、国又は都道府県の担当職員、警察官、鳥獣保護管理員、狩猟をしようとしている土地の土地所有者などから求められたら、提示しなければならない (法第六十二条第一項)。また、狩猟免状の備考欄に、眼鏡などを使用する旨を記載された者は、狩猟を行うときには眼鏡などを着用し なければならない。

2)住所変更等
住所及び氏名に変更があった場合、又は亡失した場合は、遅滞なく、登録を受けた都道府県知事に対して届け出をしなければならない(法第六十一条 第四~五項、規則第六十五条第一項)。

3)返納等(捕獲報告)
狩猟者登録証は、狩猟者登録の有効期間の満了後30日以内に都道府県知事 に返納しなければならない(法第六十五条、規則第六十五条第十一項)。
また、返納時には、捕獲した鳥獣の種類、場所、頭羽数を報告しなければならない (登録証の裏面などが報告用紙になっている) (法第六十六条、規則 第六十五条第十三项)。

※平成14年度の猟期からは、報告事項に、鳥獣保護区等位置図 (ハンターマップ) に記載されたメッシュ番号等の捕獲場所を記載することになった。

4)取り消し等

狩猟免許が取り消されたり、効力が停止されたりした場合、すでに受けた登録証は抹消される。また、不正な手段で登録を受けた場合、有効な狩猟免許を有していなかった場合、3千万円以上の損害賠償能力がなかった場合、住所・氏名などの変更を行わなかった場合やうその届け出をした場合などは、登録が取り消されたり、期間を定めて効力が停止されたりする (法第六十四条など)。

(6)狩猟期間
狩猟期間は、登録期間と同じ期間とされているが、実際は、狩猟鳥獣の保護を図るため、次表に示したように短縮されている。現在、一般的な狩猟期間は、北海道以外の地域では約3ケ月間 (11/15〜2/15、北海道では約4ヶ月間 (10/1〜1/31) である。
ただし、鳥獣の種類や場所 (捕獲調整猟区や放鳥獣猟区など)によっては、この期間が延長又は短縮されている(法第二条第五項、法第十一条第二項、規則第九条)。

狩猟期間は、この他にも、狩猟鳥獣の保護を図るため、又は第二種特定鳥獣管理計画の達成を図るために、環境大臣又は都道府県知事により、狩猟鳥獣の種類や場所を定めて、延長又は短縮されることがあるので注意が必要である (法第十二条第一項、法第十四条第一項)。

例: 島根県のイノシシ 11/15〜2/15 ⇒ 11/1〜2/28に延長(但し隠岐島を除く)
(7)捕獲数
持続的な狩猟ができるように、一部の狩猟鳥獣については、次表のとおり捕獲数が制限されている。制限の実施主体は、環境大臣又は都道府県知事である。全国的な制限については環境大臣が定めている。地域の事情に応じてさらにきめ細かな制限が必要があると認められる場合には、都道府県知事によって捕獲数の制限が強化又は緩和されている (法第十二条、規則第十条第二項)。
なお、猟区については、各猟区ごとに捕獲数の制限を定めている(法第六 十八〜六十九条、令第二条、規則第七十五条)。

狩猟鳥獣の種類 1日当たりの捕獲数の上限

マガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ及びクロガモ
合計して五羽
(ただし、網を使用する場合にあっては、法第十一条第二項に基づき環境大臣の定める狩猟鳥獣の捕獲等をする期間ごとに合計して二百羽)
エゾライチョウ 二羽
ヤマドリ及びキジ(注:亜種のコウライキジを含む) 合計して二羽
コジュケイ 五羽
バン 三羽
ヤマシギ及びタシギ 合計して五羽
キジパト 十羽
ニホンジカ 一頭

※都道府県知事による独自の捕獲数制限の例 (特定鳥獣保護管理計画に基づくもの)

ニホンジカ 環境大臣 :1日1頭(全困共通)
北海道知事:北海道の○○地域 1日オス1頭、メス無制限など

(8)狩猟期間
捕獲数の制限 (法第十二条第一項第二号)を行うために必要があると認められる場合、環境大臣又は都道府県知事は、入猟者の数の総数を制限することができることとされている。この場合、入猟者は、捕獲等をする際にあらかじめ環境大臣又は都道府県知事の承認を受けなければならない(法第十二 条第三項、規則第十一条の二)
なお、猟区については、各猟区ごとに捕獲数の制限を定めている (法第六十八~六十九条、令第二条、規則第七十五条)

(9)捕獲規制区域等
①狩猟禁止の場所
狩猟は、どこでも自由にできるわけではない。鳥獣保護区や社寺境内などでは、狩猟が禁止されている。これらの場所では、銃器 (装薬銃、空気銃)による狩猟だけでなく、網やわなによる狩猟も禁止されている(法第十一条、規則第八条)。
なお、狩猟ができる場所は、「狩猟可能区域」、「可猟区域」、「乱場」などと呼ばれている。

○狩猟が禁止されている場所
鳥獣保護区 (鳥獣の保護繁殖を図る場所)
休猟区 (狩猟鳥獣の生息数の回復を図る場所)
公道 (人や車などが往来する場所。農道や林道を含む)
区域が想示された都市公園等(人が集まる場所 社寺境内・墓地(神聖さや尊厳を保持すべき場所)
自然公園の特別保護地区・原生自然環境保全地域(保護を図る場所)

※弾丸が、公道の上を通過する場合も、公道における銃猟と見なされている。また、わな猟の場合、わなが公道以外の所に設置されていても、わなにかかった獲物が公道にはみ出す場合は、公道での狩猟と見なされる。

②特定猟具使用禁止の場所
(銃猟やわな猟禁止の場所)

装薬銃、空気銃又はわな (くくりわな、はこわな、はこおとし及び囲いわな)の使用が禁止される場所としては、都道府県知事が、それらの猟具を使用した鳥獣の捕獲等に伴う危険を未然に防止し、静穏を保つことを目的として指定する特定猟具使用禁止区域がある。特定猟具とは、銃器 (装薬銃及び空気銃) 及びわな (くくりわな、はこわな、はこおとし及び囲いわな) のことであり、禁止される特定猟具の種類は、それぞれの区域ごとに指定される。 特定猟具使用禁止区域では、指定された種類の特定猟具を使用した狩猟は禁止されている。ただし、有害鳥獣捕獲等の許可を受けた場合は、この限りではない (法第三十五条第一〜二項、規則第四十一条の二)
また、住居が集合している地域、広場や駅などの多数の人が集まる場所、人・飼養動物・建物や電車・自 動車・船舶などの乗り物などに弾丸が到達するおそれがある方向での銃猟も禁止されている (法第三十八条)。

③特定狼具使用制限区域(銃猟やわな猟の制限区域)
特定猟具使用制限区域は、特定猟具を使用した鳥獣の捕獲等に伴う危険を 未然に防止し、静穏を保つことを目的として、狩猟者の集中を管理するために、都道府県知事により設定される。ここでは、人数制限が行われ、入猟する場合には都道府県知事の承認が必要とされる (法第三十五条、規則第四十一条の二〜四十三条)。

④鳥獸保護区
鳥獣保護区は、鳥獣の保護を図るために期間を定めて指定される。鳥獣保護区には、国指定鳥獣保護区と都道府県指定鳥獣保護区がある。国指定鳥獣保護区は、国際的又は全国的な見地から環境大臣が、都道府県指定鳥獣保護区は、地域的見地から都道府県知事が指定する。鳥獣保護区では、狩猟が禁止されている。また、一部の地域(特別保護地区) では、一定の開発行為等が制限されている。また必要に応じて鳥獣の生息地の保護及び整備を図るための鳥獣の繁殖施設の設置等の保全事業が行われる。(法第十一条、法第二十八~二十九条、令第一条)。

⑤休猎区
休猟区は、減少している狩猟鳥獣の増加を図るために、都道府県知事によ り設定される。休猟区では、狩猟が禁止されている。ただし、都道府県知事 が指定した区域においては、特定鳥獣の狩猟ができる場合がある (法第十一 条、法第十四条、法第三十四条)。

※参考

○鳥獣保護区(固指定鳥獣保護区、都道府県指定鳥獣保護区)
設定目的: 鳥獣の保護
設定主体:環境大臣 →国指定鳥獣保護区
都道府県知事 →都道府県指定鳥獣保護区
規制内容:狩猟等による鳥獣の捕獲の禁止、開発行為の制限など
設定実績:366万ha(3878ヶ所)(H22年度)

○休狼区
設定目的:減少した狩猟鳥獣の増加
設定主体:都道府県知事
規制内容:狩猟等による鳥獣の捕獲の禁止(特定鳥獣については特例あり)
設定実績:98万ha (573ケ所) (H22年度)
※休猟区における特定鳥獣の狩猟の特例:農林業被害を防止するため、休猟区のうち都道府県知事が指定した区域においては、特定鳥獣(シカ、イノシシ等) の捕獲等をすることができる

○特定猟具使用禁止区域
設定目的:特定猟具による危険防止、静穏の維持
設定主体:都道府県知事
規制内容:特定猟具による鳥獣の捕獲の禁止
設定実績:268万ha (4,115ヶ所) (H22年度)

○特定猟具使用制限区域
設定目的:特定猟具を用いて狩猟を行う狩猟者の集中防止を図るなどの危険の防止
設定主体:都道府県知事
規制内容:特定猟具を用いて狩猟を行う狩猟者の人数の制限 (入猟には知事の承認が必要)
設定実績:1168ha(60分所)(H22年度)
⑥銃猟の時間規制
狩猟による危険防止を図るため、日没後から日の出前までの時間帯における銃猟は、禁止されている (法第三十八条第一項)。
この日没・日の出の時刻とは、実際の日光の明暗ではなく、暦による日没・日の出の時刻とされている。従って、都道府県によって、また、日によって、これらの時刻は変化するので注意が必要である。

なお、網猟やわな猟についての時間規制はない。また、指定管理鳥獣捕獲等事業の委託を受けた認定鳥獣捕獲等事業者が環境省令で件に従って夜間銃猟することができる場合がある。(法第十四条の2第8項第2号)

※例:日の出・日没の時刻 (平成24年度猟期)

○東京都
11月15日 :日の出6時16分、日没16時35分
2月15日: 日の出6時29分、日没17時22分

○鹿見島県

11月15日: 日の出6時45分、日没17時19分
2月15日: 日の出7時0分、日没18時4分

(10)土地所有者の承諾等
垣・さくなどで囲まれた土地、作物のある土地で狩猟や有害鳥獣捕獲などをする場合は、土地所有者(占有者) の承諾を得ることが必要である (法第十七条)。

※垣・さく・作物などがない土地であっても、他人の土地に立ち入って、自由に狩猟をする権利が認められているわけではない。他人の土地で狩猟をする場合には、土地所有者とトラブルを起こさないように、細心の注意を払う必要がある。土地の所有者等から狩猟しないようにという申し入れがあった場合は狩猟をしないこと。なお、国有林で狩猟する場合には手続きが必要か確認し、必要な場合は入林手続き等を行わなければならない。

(11)鳥獣の捕獲許可等 捕獲等のしかた(手続き)の種類

鳥獣の捕獲及び卵の採取のしかた (手続き)には、①狩猟で捕獲等する場合、②有害鳥獣捕獲などのように許可を受けて捕獲等する場合がある。
鳥獣法では、鳥獣又は鳥類の卵については、原則としてその捕獲又は採取が禁止されている。しかし、狩猟により狩猟鳥獣を捕獲することや、農林水産業被害が生じている場合や学術研究上の必要性が認められる場合などには、環境大臣又は都道府県知事などの許可を受けて、鳥獣の捕獲又は鳥類の卵を採取することが、例外的に認められている。

なお、ネズミ・モグラ類については、農林業活動に伴って、捕獲がやむを得ないと認められる場合は、許可を受けなくても捕獲することができる(法第八条、法第十三条、規則第十二~十三条)。

※鳥獣の捕獲規制

・鳥獣の捕獲及び卵の採取は原則として禁止
・鳥獣の捕獲及び卵の採取が認められるのは、主として「①狩猟 (登録狩猟) による場合」又は「②捕獲許可による場合」のいずれかの場合

狩猟(登録狩猟) 許可捕獲

対象鳥獣の登録    狩猟鳥獣(ひなを除く48種)   すべての鳥獣及び卵
捕獲及び採取の事由  問わない        有害鳥獣捕獲、字術研究、個体群管理、その他
捕獲及び採取に当たっての個別の手続き  不要(ただし、狩猟免許の取得、毎年の猟期前の登録が必要)  必要  |  | 捕獲者及び採取者の資格要件 狩猟免許及び登録を受けた者 網猟免許:網 わな猟免許:わな  第一種猟銃免許:装薬銃、 空気銃 第二種銃猟免許:空気銃 なし(ただし、告示により、有害鳥獣捕獲等については、原則として狩猟免許を受けた者)

対象地域 | 鳥獣保護区や休猟区等の捕獲禁止の場所以外の地域であればどこでも可能 | 許可された範囲 (鳥獣保護区や休猟区でも可能)

時期 狩猟期間 (冬期)のみ 許可された期間 (通年可能)

方法 網猟、わな猟、銃猟 (環境省令で定められた法定猟法) | すべての方法(ただし、禁止猟法等については制限あり) –

②捕獲許可 許可による捕獲又は採取には、学術研究、被害防止(農林水産業・生態系)、個体数調整などを目的とした捕獲又は採取がある。許可主体は、環境大臣又は都道府県知事である。なお、一部の都道府県では、許可権限の全部又は一部を市町村長に委任している(法第九条、規則第五条)。

(捕獲の目的)
○捕獲又は採取の目的 (例)
·学衍研究
・生活環境、農林水産業、生態系に対する被害の防止
・第二種特定鳥獣管理計画に基づく特定鳥獣の個体群管理
・博物館、動物園などの施設における展示
・愛がんのための飼養
・養殖している鳥類の過度の近親交配の防止
・鵜飼漁業への利用

※参考 「捕獲方法と「銃器の所持目的」との対応」

捕獲方法(鳥獣法)   銃器の所持目的 (銃刀法)
狩猟(登録狩猟)    狩猟
有害鳥獣捕      獲有害鳥獣駆除
個体群管理      有害鳥獣駆除
字術研究等       狩猟

※銃刀法では、「有害鳥獣捕獲」のことを「有害鳥獣駆除」といっている。

(許可主体)
許可主体は、次のとおりとされている (法第九条)。なお、一部の都道府県では、捕獲又は採取の許可権限の全部又は一部を市町村長に委任しているが、これは各都道府県の条例を参照されたい。

<図式>

(許可申請者)
許可申請は、個人又は法人が行うことができる。ただし、許可申請ができる法人は、国、地方公共団体、農業協同組合、森林組合、漁業協同組合、認定鳥獣捕獲等事業者などの環境大臣の定める法人に限定されている。また、法人が許可を受けようとする場合には、許可申請の他に、従事者証の交付申請を行って、実際に捕獲又は採取作業に当たる者が、許可を受けた捕獲又は採取に従事する者であることを証明する従事者証を取得する必要がある (法第九条)。

(個体数調整:特定鳥獣保護管理計画)
鳥獣は、増えすぎても減りすぎても問題が起きる。例えば、減りすぎた場合に起こる問題は、種の絶滅である。一方、鳥獣の増加により引き起こされる問題は、農林水産業被害、生態系のかく乱、生息環境の悪化(餌条件の貧弱化等)による地域個体群の劣化などである。

※特定鳥獣保護管理計画の対象鳥獣は、「特定鳥獣」と称されている。

人と鳥獣とがお互いに我慢しながら共存するためには、鳥獣が極端に減りすぎたり、極端に増えすぎたりしないようにコントロールすることが、「人間」と「鳥獣」の両方のために好ましいことである。このため、鳥獣の保護管理 (ワイルドライフ・マネージメント)を実行に移すために、平成11年に鳥獣法が改正され、特定鳥獣保護管理計画制度が創設され、平成26年に鳥獣保護管理事業計画、ならびに第一種特定鳥獣保護計画、第二種特定鳥獣管理計画制度に変遷している。制度の概要は、次のとおりである (法第七条)。

1,目的
地域個体群の長期にわたる安定的維持 (環境収容力に見合った生息密度水準等への維持・誘導)
2,策定主体
都道府県(任意)
3,対象鳥獣
・ニホンジカやイノシシ等の地域的に著しく増加等している種の地域個体群
・ツキノワグマ等の地域的に著しく減少等している種の地域個体群
4,計画内容
・科学的知見、合意形成に基づく明確な目標の設定
・個体数管理、生息環境管理、被害防除対策の総合的・体系的実施
・モニタリングの実施によるフイードバック
5,達成手段
・地域の事情に応じた必要な狩猟制限等の設定や捕獲のコントロール
・保護区の設定等による生息環境の保全、生息環境の整備
・その他

「有害鳥獣捕獲」と「個体数調整のための捕獲」の許可基準の違い

有害鳥獣捕獲                    個休群管理

許可対象者     狩猟者等で、被害者又は被害者から依頼を受けた者 | 狩猟者等

鳥獣の種類・員数  影響を与益ている種 必要最小限の員数        第2種特定鳥獣管理計画に定められた種適切かつ合理的な員数

期間 被害等が生じている時期予察捕獲の場合は県が定めた時期 必要かつ適切な期間

区域 被害等の発生地域とその隣接地           第2種特定鳥獣管理計画に計画の対象地域の全域
方法 通常の方法による。劇薬等の使用は不可       通常の方法による。劇薬等の使用は不可
捕獲実施の要件 被害防除対策によっても、被害等が防止できない場合に実施 特に限定なし

なお、個体群管理を円滑に進めるために、第一種特定鳥獣保護計画、第二種特定鳥獣管理計画に基づき、都道府県知事によって、狩猟期間の延長や捕獲数制限の緩和などが行われる場合がある (法第七条、第十四条)。

例:○北海道ニホンジカ (エゾシカ):第二種特定鳥獣管理計画
捕獲数の上限 ○○地区において1日オス1頭、メス無制限
○島根県イノシシ;第二種特定鳥獣管理計画
狩猟期間 3ケ月間(11/15〜2/15)→4ヶ月間(11/1〜2/28)

③飼養
許可を受けて捕獲した鳥獣(狩猟鳥獣を除く)を飼養する場合は、都道府県知事の登録を受けなければならない(法第十九条)。また、登録鳥獣の譲渡し等は、登録票と一緒に行わなければならない(法第二十条)。
※狩猟鳥獣の飼養については、登録手続きは不要である。

④販売
販売禁止鳥獣に指定されているヤマドリ (卵、加工品、繁殖個体を含む) を販売しようとする場合は、都道府県知事の許可を受けなければならない (法第二十三~二十四条、規則第二十二~二十三条)。

⑤劇薬等の使用
爆発物、劇薬、毒薬、据銃、落とし穴(陥穽)その他危険なわななどを使用して鳥獣を捕獲する場合は、環境大臣の許可を受けなければならない(法第三十六条、規則第四十五条)。

※上述の飼養登録、販売許可、劇薬等の使用許可を受ければ、鳥獣の捕獲ができるわけではない。捕獲許可 (法第九条)などの手続きが、別途に必要である。

⑥輸出入の規制
規則第二十五条で定められている鳥獣、鳥獣の加工品、卵を輸出しようとする場合は、適法に捕獲したものであることを証明する証明書が必要である。
また、規則第二十七条で定められている鳥獣、鳥獣の加工品、卵を輸入しようとする場合は、適法に捕獲したものであることを証明する証明書又は輸出を許可したことを証明する証明書が必要とされている。ただし、規則第二十九条で定められている証明制度がない国から輸入する場合はこの限りではない。さらに、これらの輸入鳥獣等のうち規則第二十九条の二で定められている鳥獣については、環境大臣から交付を受けた標識を、輸入後速やかに着けなければならない(法第二十五条〜二十六条、規則第二十五条〜第二十九条)

(12)猟区

①猟区の概要
猟区とは、狩猟鳥獣の生息数を確保しながら、秩序ある安全な狩猟を行うため、放鳥獣等により積極的に狩猟鳥獣の保護繁殖を図る一方、猟場の一部を区切って、排他的に入猟者数、入猟日、捕獲対象鳥獣及び捕獲数の制限等を行う区域のことである。いわば、有料の天然釣り堀のようなものである。
猟区は、都道府県知事の認可を得て、10年以内の存続期間を定めて設定され、猟区管理規程に基づいて運営される (法第六十八条など)。

②猟区の種類
猟区には、狩猟鳥獣を捕獲対象とした「①捕獲調整猟区」(本書では放鳥獣猟区以外の猟区のことを捕獲調整猟区と称している)と、放鳥獣された狩猟鳥獣のみを捕獲対象とした「②放鳥獣猟区」の2種類がある。いずれの猟区も、設定主体は、国、地方公共団体 (都道府県、市町村)、民間 (猟友会や森林組合等) である。猟区で狩猟をしようとする場合には、猟区設定者の承認を得るとともに、入猟承認料を支払わなければならない (法第七十四条第一項)。案内人の同行サービス、休憩・解体処理施設等が整備されている猟区もある。
また、狩猟者登録は、猟区であっても必ず必要である。また、狩猟鳥獣が捕獲対象 (猟区によっては限定されている場合あり)であるなど、猟法に関する制限などについては一般の猟場とほぼ同じであるが、捕獲数や狩猟期間などが異なっている場合がある (規則第九条、規則第十条第二項)。
なお、前述したとおり、狩猟者登録のしかたには、放鳥獣猟区のみの登録、都道府県全域(猟区を含む)の登録の2通りがある(「猟区 (捕獲調整猟区+放鳥獣猟区)」のみの登録、「捕獲調整猟区 (放鳥獣猟区以外の猟区)」のみの登録はできない)(規則第六十六条など)。

※猟区と一般猟場との違い
対象種 :猟区は狩猟鳥獣全種が捕獲対象 (ただし、猟区によっては管理規程に基づき対象種を限定)
捕獲数 :猟区は制限数が緩い場合がある
狩猟期間:猟区は最長で一般猟場より2ケ月間長い場合がある
その他 :猟区のうち、放鳥獣猟区ではキジ・ヤマドリのメスを狩猟できる場合等がある

ア 捕獲調整猟区
対象種 :狩猟鳥獣全種が捕獲対象 (ただし、猟区によっては管理規程に基づき対象種を限定)
設定実績:22猟区:10万ha(11道県)(平成22年度)
狩猟期間:一般の猟場より最長で2ケ月間長い場合がある

北海道以外の地域:10/15〜翌年の3/15(5ヶ月間)*
北海道 :9/15〜翌年の2月末日 (5ヶ月と半月間)
※青森・秋田・山形の3県のカモ猟の狩猟期間については、11/1〜翌年1/31(3ケ月間)

イ 放鳥獣猟区
対象種 :放鳥獣のみが捕獲対象 (法第七十四条第二項)
設定実績:1猟区:01万ha(1県)
狩猟期間:一般の猟場より長い
北海道以外の地域:10/15〜翌年の3/15 (5ケ月間)
北海道 :9/15〜翌年の2月末日(5ヶ月と半月間)
※都道府県により、猟期の延長、短縮があり、それにともない猟区の狩猟期間の変更及び狩猟対象鳥獣も限定される場合がある。

(13)捕獲等の定義等
捕獲等の定義
鳥獣を射止めて手にした場合などは、明らかに鳥獣を捕獲したことになる。半矢 (負傷させた状態) で逃がしてしまったりした場合などのケースについても、捕獲等の「等」に該当する。

1)半矢など
一般的に、鳥獣を捕獲するということは、鳥獣を手に入れられなくても、捕獲の方法を行い、鳥獣を捕獲しうる可能性を生じさせたことであるとされている。また、追い払いのための発砲などの威跡行為により当然予想し得る鳥獣に殺傷又は鳥獣の卵に損傷を与える危険が発生した場合は法に抵触すると考えられている。
なお、平成2年の法改正により、鳥獣の殺傷又は鳥類の卵の損傷は、鳥獣の捕獲と同様に鳥獣に大きな悪影響を与える行為であることから、鳥獣の捕獲や卵の採取と同じように規制されている (法第八条)。
2)追い出し猟
鳥獣保護区などでは狩猟などが禁止されているが、ニホンジカなどを鳥獣保護区などから狩猟ができる場所に追い出して狩猟することは、違法な行為である。
また、狩猟ができる場所から鳥獣保護区などに逃げ込んだニホンジカなどを狩猟することも、違法な行為である。

3)止めさし 「銃器による止めさし」とは、一般的に、網やわなにかかった鳥獣を確実に捕まえるために、銃器を使用してとどめを刺すことをいう。地域によっては、「止め矢」といわれている場合もある。
この止めさしについては、「捕獲の完了の時点」に対する考え方に不明確な点があり、違法な行為ではないかという疑問があがっていた。現在は、くくりわな等の鳥獣の動きを確実に固定できない構造のわなにどう猛かつ大型の鳥獣がかかった場合などの一定の要件を満たす場合は、通常の捕獲行為と同様の行為であると整理されている。

※一定の要件

①くくりわな等のように鳥獣の動きを確実に固定できない構造のわなに鳥獣がかかった場合であること。
②わなにかかった鳥獣が、イノシシ、ニホンジカ及びクマ類等のようにどう猛かつ大型のものであること。
③わなを仕掛けた狩猟者等の同意に基づき行われるものであること(同意を得ずに、他人のわなにかかった鳥獣を撃つことは違法な行為)。
④銃器の使用に当たっての安全性が確保されているものであること。
(跳弾による事故等が発生するおそれがあるので、安全確保には細心の注意を図る必 要がある)

※止めさしが違法と考えられていた理由
はこわなにかかったイノシシがいるとする。このイノシシの捕獲は、既に終わっている、確実に捕まえていて完全に自分のものにしていると考えた場合、このイノシシは「飼育されているイノシシ」と同じようなものだと考えられることになる。飼育されているイノシシに向かって銃を発射するのは、銃刀法に規定されている銃器の所持目的の「有害鳥獣駆除(鳥獣法の「有害鳥獣捕獲」に該当)」でも「狩猟」でもない。従って、猟銃の目的外使用となり、発射制限の違反になるので、止めさしは違法(銃刀法上の) であると考えられていた。

○猟銃の使用目的
銃刀法に基づき猟銃の所持許可が受けられるのは、標的射撃、有害鳥獣駆除、狩猟を目的として使用する場合に限られている。所持許可を受けた目的以外に銃を発射することは、発射制限の違反になる。

(14)犬のみによる猟
平成14年度の猟期より、犬に咬みつかせることのみにより捕獲等する方法又は、犬に咬みつかせて狩猟鳥獣の動きを止め若しくは鈍らせ、法定猟法以外の方法により捕獲等する方法、での狩猟は禁止されている (規則第十条第 三項)

(15)残滓放置規制
捕獲した鳥獣は、全量を回収するか、又は適切に埋設処理することが基本である。平成14年度、また平成26年度の法改正により、捕獲した鳥獣の残滓 (個体の全部又は一部) は、適切な処理が困難な場合又は生態系に影響を及ぼすおそれが軽微である場合、また、指定管理鳥獣捕獲等事業を実施する者で一定の条件を充足する場合を除いて、捕獲した場所に放置してはならなこととされている (法第十八条、法第十四条の2第8項第一号、規則第十九条)。

○放置が許される場合の例
・捕獲等をした鳥獣又は採取等をした鳥類の卵を地形、地質、積雪等の要因により、持ち帰るのが困難で、かつ、これらを生態系に大きな影響を与えない方法で埋めることが困難と認められる場合
・過失がなくて捕獲等をした鳥獣の行方を確知することができない場合
・法第十三条第一項の規定により捕獲等をした鳥獣又は採取等をした鳥類の卵を農地又は林地に放置する場合
・法第十四条の2第8項第一号の規定による時
放置することによって、指定管理鳥獣捕獲等事業が特に効果的に行われると認められる場合であって、銃猟にあっては非鉛弾を使用し、放置した鳥獣が誘引した鳥獣等により生態系等に支障を及ぼすおそれがないとき。(指定事業として実施される場合に限る) (鳥獣法施行規則第13条の7)
・漁業活動に伴って意図せず捕獲等をした鳥獣を、当該捕獲等をした場所で放出する場合

(16)指定猟法禁止因域
①指定猟法禁止囚域とは
指定猟法禁止区域とは、「水辺域における鉛散弾の使用」などの鳥獣の保護に重大な支障を及ぼすおそれがあると認められる猟法 (指定猟法)により、鳥獣を捕獲することが禁止される区域のことである。全国的な見地からの規制については環境大臣が指定し、地域的な見地からの規制については都道府 県知事が指定する (法第十五条第一項)。

②指定猟法による捕獲の許可
指定猟法禁止区域では、指定猟法による狩猟や有害鳥獣捕獲などはできない。ただし、有害鳥獣捕獲などでの捕獲については、別途に環境大臣又は都道府県知事の許可を受ければ指定猟法による捕獲も可能である(法第十五条 第四項)。

(17)その他
①鳥獣保護管理員
都道府県の狩猟行政を補助するために、鳥獣保護管理員が配置されている。鳥獣保護管理員は、主に狩猟の取り締まりや密猟の監視等を行う。身分は、都道府県の非常勤職員であり、都道府県知事により任命されている (法第七十八条)。

②審議会
環境大臣又は都道府県知事の諮問機関として、環境省に中央環境審議会、都道府県に自然環境保全審議会などが設置されている。これらの審議会等では、鳥獣行政に関する諮問事項の審議などが行われている。

③違法捕獲物の譲渡等
鳥獣法に違反して捕獲した鳥獣 (標本やはく製などを含む)の譲渡又は譲受は禁止されている。

④標識のき損規制
鳥獣保護区等の標識の移転又はき損等は禁止されている (法第八十六条第三号)。

⑤両罰規定
法人の代表者、法人又は人の代理人、使用人その他の従事者が法人又は人の業務に関して、本法に違反したときは、その違反行為をした者のみならず、法人又は人も連座的に罰金刑を科せられることになっている(法第八十八条)。なお、法人又は人が、代理人、従業員などの違反行為を防止するため、業務に対して相当の注意及び監督をしたことを証明した場合は、この適用を受けない。

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