山林放置していると罪になる?条例から見る山林開拓
山買ってそこでDIYで小屋を作りたい。
誰にも気兼ねなくキャンプをするために土地が欲しい。
山にはこのように魅力が多く、そして宅地と違って低価格で入手できるため、ちょっとだけ無理をする、なんだったらそこまで無理をしなくても購入することができます。
買って好きなことをする、その日暮らしをしてみたい。
自作で小屋を作ってみたい。畑を作って自家栽培をしてみたい。
こんな感じで色々と妄想してしまいます。自分の土地だから何をやってもいいわけですが、買ったら買ったで権利だけでなく義務も発生します。
先日、山林における固定資産税のお話をしました。
税金を払うのは国民の義務です。でもそもそも山林は地価も安く、使い勝手も悪い。そのためここについてはそこまでお金がかからない、または固定資産税がゼロということが多いです。
お金かからないんだったら放置しておいても何ら問題ないと思ったら大間違い。つい先日知ったのですが、やはり土地を所有している人には一定の義務が課せられているようです。
買ったまま放置ていれば雑草も生える、倒木も出る。それが原因で火災やその他人的被害が発生する恐れもあります。そのため都道府県や市町村の条例で一定の規制があるようです。
私の山林は勝浦にございますので、勝浦市の条例を参考に見ていきましょう。
勝浦市には「勝浦市きれいで住みよい環境条例」というものがあります。だいぶ緩めの名前ですが、同条例は美化の推進と公衆衛生の向上を目的としたもので、大筋としては「ポイ捨て禁止」や「放置自転車禁止」といったものです。条例の名の通り、街をきれいにしましょうってやつです。そんな中に以下のような条文があります。
(管理者の責務)
第17条 空地及び空家の管理者は、当該管理する空地又は空家を次に掲げるところにより管理し、雑草地又は廃屋とならないよう努めなければならない。
(1) 空地の管理者は、廃棄物等の投棄、病害虫の発生、火災の発生その他不適正な管理により周囲の土地及び地域社会に生ずる危被害を防止するため必要な範囲において、定期的に繁茂する雑草等を除去すること。また、当該除去した雑草等についても法に従い適正に処理すること。
条文の通り、定期的に繁茂する雑草等を除去しなければならないようです。
「山林は買ったはよいが行くのめんどくさい。どうせ税金かからないし放置でいいわ」はダメみたいですね。
除去しなければならない理由は「廃棄物等の投棄、病害虫の発生、火災の発生その他不適正な管理により周囲の土地及び地域社会に生ずる危被害を防止」ですのでそれに該当しないのであれば草刈りは不要ということです。
私の山林の場合、廃棄物の投棄は考えづらい場所、病害虫や火災の原因にはなりづらいです。
「その他不適正な管理により周囲の土地及び地域社会に生ずる危被害」
恐らくこの部分でしょう。草木を野放しにしておくと、獣の隠れ家となります。付近には田畑もあり、農家の人もいて、獣が人里に下りてくる環境を作ってしまうのは「地域社会に生ずる危被害」に該当するのではないでしょうか。それらを考えると「放置でオーケー」とはならないですね。かといって近くの国有地がしっかりと管理されているかというとそれも疑問なところで、定期的に伐採などはしているものの、日々管理しているわけでは無いようです。そのため「年に一回」くらい様子を見に行く程度でよいのかもしれません。
(適正管理の指導)
第18条 市長は、雑草地又は廃屋が著しく不適正な管理状態にあり、かつ、市民生活に重大な障害が生ずるおそれがあると認めたときは、その管理者に対し、必要な指導を行うことができる。
2 市長は、前項に規定する指導を行うに当たり、当該空地等の管理者に対し、管理状況その他必要な報告を求めることができる。(適正管理の勧告)
第19条 市長は、前条第1項の規定による指導にもかかわらず、当該雑草地又は廃屋に係る適正な管理がなされない場合は、その管理者に対し、期限を定め、とるべき措置を勧告することができる。(措置命令)
第20条 市長は、前条の規定による勧告を履行しない管理者に対し、期限を定め、とるべき措置を命ずることができる。(関係機関への通報)
第21条 市長は、第19条の規定による勧告又は前条の規定による命令を行うに当たり、当該雑草地又は廃屋の著しく不適正な管理を原因とする事件、事故等の発生のおそれがあると認めるときは、消防署、警察署その他の関係行政機関にその旨を通報しなければならない。(緊急措置)
第22条 市長は、第19条の規定による勧告又は第20条の規定による命令をした雑草地又は廃屋が切迫して市民生活に著しく障害を与えるおそれがあると認めたときは、当該切迫した障害を排除するため必要な限度において、雑草の除去その他の措置を講ずることができる。
2 市長は、前項の規定により切迫した障害を排除するため雑草の除去その他の措置を講じたときは、それに要した経費を、当該雑草地又は廃屋の管理者に請求するものとする。
行政指導、行政代執行についての条文です。恐らくこの条文は廃墟や管理されず崩壊しそうな廃屋を行政で処分できるようにするためのものです。
余っている土地は転売するとかすればよいのですが、売り手が見つからず、売っても二束三文です。更地にすると固定資産税が高くなります。住宅用地は建物があるのと無いのとで固定資産税が6倍違います。また建物を壊すのにもお金がかかる。こんなことから廃墟になったとしても取り壊さずに放置されたままとなってしまうのでしょう。
そんな廃墟ですが一応は個人の資産。そのため行政が手出しできないのですが、この手の廃墟が増えてきたため、条例で処分できる形にしたのでしょう。そのため空き地に草が生えているからといって、行政指導とはなりづらいでしょう。でも同法に違反すると罰則もあるようです。
第50条 第8条、第14条、第20条又は第35条の規定による命令に違反した者は、50万円以下の罰金に処する。
第51条 第7条第2項、第13条第2項、第18条第2項又は第29条第2項の規定による報告を怠り、又は虚偽の報告をした者は、5万円以下の過料に処する。
つまり、行政より報告の求めがあったことによる虚偽の報告(同条例第18条2)と措置命令に違反(同条例第20条)には罰則があるようです。
買ったはよいが、通いづらい。その当時は趣味で買ったが、その熱も冷めてしまった。使いづらくて放置している。一世一代の買い物とはいえ所詮は山林です。当然こんな感じで買った山林を放置している人も多いでしょう。とくにバブル期に原野商法とかで買ってしまい、それが売れずにそのままになっているなんて人も多いようです。実際に私の所有する山林はリゾート会社が「リゾート地を作ろう」という触れ込みで山林売買をしたものの、バブルでその会社は倒産。以後は何の役にも立たない原野のままだったそうです。そのような放置された土地が日本には多くあるようです。
私もそのようにならないように頑張っているのですが、やっぱり山にいるより都心にいる方が便利で誘惑も多いのが現状です。市街化区域でも市街化調整区域でもないので風俗だろうがキャバクラだろうが都市計画法上は作れるのですが、なぜ作らないのでしょうか。客が来ない?そこは敢えて不便な場所という付加価値をつければいいんです。私は行きます。絶対に行きます。
そんな感じで一度山から離れると行くのが億劫になったりするわけですが、条例でこんな感じで書かれているので放置は望ましくないみたいですね。今回は勝浦市の条例で見ましたが、この手の条例はどこの市町村にも存在していると思います。山林を購入する際はこのあたりの条例も意識しておいた方が良いかと思います。