デリーにある丘の上のスラム街「バルジットナガル」
こちらはデリーメトロのシャディプール駅です。
ブルーラインとグリーンラインの乗換駅である同駅は利用者も多くいるのでしょう。でもメトロはバスと比べると値段が高く、市民の足は専らバスのようです。そのためメトロは空いてるので使いやすいです。
今回私はメトロを利用してここに来ました。本当はバスでここまで来るつもりでしたがラッシュ時のバスの難易度が高すぎるんです。
日本でもラッシュ時は電車やバスは混雑します。ラッシュ時の電車はギュウギュウ詰めですがインドでは体半分しか乗れていない人もいます。このバスに乗るのは不安なため電車にしました。
メインパテルロードの面したシャディプール駅。ちょうど出勤時間帯でしょうか。多くの人が行き来しています。デリーの中心から6kmほど離れたこの場所は住宅エリアのような場所なのでしょう。駅裏手は碁盤の目に整理された街並みが広がってます。
でも少しそれたこの道の先、古い町並みが広がっているようです。
こちらはバルジットナガルと呼ばれる場所です。西パテルナガルにある集落で丘陵の中に住宅街が広がっています。集落のメイン通りは坂道となってます。
約70万人が暮らすバルジットナガル。インド独立当時のこのあたりは森でしたが丘陵を掘削して石材採掘場となったようです。労働者らが森に小屋を建てたことにより街が形成、地方から多くの人が移住してきたそうです。
採石場は1970年代まで続き、その後は工業地帯となったようです。このあたりに多く住んでいるのが地方移住者。仕事があるためここに移住したのでしょう。
街の中はだいぶ入り組んでいます。枝葉のように小路があります。道は複雑に入り組んでおり地図をみながらじゃないと絶対に迷子になりそうです。
細路地で坂道の雰囲気は尾道みたい。
小さな家がごちゃごちゃある街並み。
スラム街のようなところをイメージしてましたがここはただ単に住宅密集地なだけです。住んでいる人の意識が高いのでしょうか。インドって基本的に汚い町並みだらけですがここはそこまで街は汚くなく衛生的です。ゴミが全く転がっていないわけではないですが掃除はしっかりとされているようです。
ごく普通の住宅街の様子。そうここにあるのはごく普通の住宅街です。でもたとえごく普通の住宅街だとしても普通の生活ができるとは限らないのです。
日本の水道普及率は99.4%。そして当たり前のことですが水道水が飲めます。蛇口をひねれば安全な水が飲める。日本では当たり前なことですが世界的にはそうではなく水道水が呑めるのはたった12カ国しかないんです。アジア圏だと日本とアラブ首長国連邦だけでほとんどの国が飲み水に適していないのです。
水道水を飲まないのは海外旅行の鉄則です。
お店で出される水も怪しいので手を付けない。飲用するのはペットボトルの水だけ。このように海外は飲み水が手軽に手に入らないのです。
ここインドでもそうです。
インドは世界的に見ても水が汚いと言われてます。蛇口をひねっても安全な水が飲めないインド。
蛇口があっても水が出ない家があるのです。
こちらのように朝になると給水車が巡回してます。給水車が走ってるってことは水が出ない証拠です。上水道のない地域があるようです。
インドはインフラの整備が不十分で上水道のない地域が多くあるようです。
インドの上水道普及率は7割ほど。年々増加傾向ではあります。デリーの上水道普及率は90%もあります。そのためよ多くの場所で水道が使えそうですが、配管の漏水や降雨量減少による水不足などで水道が使えない地域が4割ほどあるようです。
このあたりはその4割に該当する地域でしょうか。それとも上水道すら通ってない地域でしょうか。給水車が複数台街中に停車し水を汲みに来ている人が大勢います。水の供給は給水車頼みのようです。
使える水に限りがあるんじゃ衛生を保てるわけがない。そりゃトイレは汚いままだし用を済ませたあと手を洗わないのでしょう。インドが衛生的じゃないのは水のせいのようです。
このように安全な水が手に入れられづらい環境のためそれに目を付けた悪いやつらが水を売ってるそうです。インフラを破壊し水道を停止させて水を販売する水マフィアと呼ばれる人たち。やっていることが転売ヤーと似ていますが水が闇組織のシノギとなっているようです。
まさにヒャッハー水だーの世界。
やってることが北斗の拳。
肩パッドつけたモヒカン野郎がバイク乗ってそう。
ここはガヤトリ・コロニーと呼ばれる地域です。向って右手側は壁がありますがその先はだだっ広い空き地になっています。かつてここにもスラムが広がっていたようです。
スラムがあったのは2011年頃まで。ここは市が所有する土地ですがそこに不法占拠でできたスラムがありました。不法占拠を排除するため2011年に都市計画や都市開発を担うデリー開発庁が事前告知なしにスラムを解体し始めたそうです。
日本でも不法占拠の強制立ち退きはあります。渋谷の宮下公園のホームレスの立ち退き、大阪城公園のホームレスの立ち退き。人権問題もありますが都市計画上仕方ないのでしょう。
宮下公園はホームレスを排除したことでキレイな商業施設ができました。インドでもそんな感じでスラムを排除したのでしょう。
キレイになってねーけど!
ガヤトリ・コロニーに住んでいた人は80%がダリットと呼ばれてるもしくは呼ばれていたカーストに属さないいわゆる不可触民の人です。
インド全土のダリットの人口割合は20%なのでここにはかなり多く住んでいたようです。
3000年以上前から続くカースト制度ですが1950年にカースト差別は禁止されました。それにより不可触民制が廃止されています。しかしカースト自体は廃止されていません。
カーストを理由にした差別が禁止されただけでカースト制度は残ったままなのです。
カースト制の否定はヒンズー教の否定と同義。差別はよくないが教義は否定できない。差別は禁止したけどシステムは残したのでしょう。このようにすごい曖昧な状態のため今でも差別が蔓延しているんだとか。
差別をなくすためかつて不可触民と呼ばれた人は指定カーストと呼ばれ一定の恩恵があるようです。
日本も明治時代に身分制度を廃止しましたがその際に不可触民の人は新平民とされていました。それと似たような感じなのでしょう。また日本には同和対策事業の一環で公務員の選考採用などの優遇が受けられますがインドも同じように公的機関への就職の優遇や大学への優先入学など恩恵が受けられるようです。
でも皆が皆この恩恵を受けられるわけではなく救われない社会的弱者もいるようでここはそういった人が集まる地域なのでしょう。そもそも恩恵が受けられるのはインド国民だけで、IDを持たない人、つまり移民にはその権利が与えられません。救われない社会的弱者がここに多くいるようです。
ここはジョイ・マウンテンと呼ばれる丘の上でこちらには長屋のような建物があります。アナンド・パルバット・トランジット・キャンプってところでスラム再開発プロジェクトのために一時的に移住した人のキャンプのようです。
行政はスラムを潰して再開発をしたいのですが、不法占拠でできたスラムだとしても追い出すだけだと人道問題になります。
このように避難所を設けてスラムを解体。解体しそこに高層ビルを作り再度入居できる形をとっているようです。つまり新たな家ができるまでの仮設住宅で現在2800世帯が住んでいるようです。
ここから2km離れたところにカトプトゥリコロニーってスラムがありましたがそこから引っ越してきた人がここに住んでいます。
カトプトゥリコロニーは少し特殊で曲芸師や蛇使い、ダンサーや俳優、人形遣いなど芸事を生業としたカーストの人なんだとか。コロニーの名前になっているカトプトゥリは糸人形劇のことを指すようで、インドの伝統芸能の一つのようです。日本の河原者と似たような感じでしょうか。
1950年頃にシャディプール駅近くに住みだし、カトプトゥリコロニーが形成されました。メトロが通るメイン通り沿い。そんなわけで開発地域に指定されたのでしょう。現在元コロニーの場所は商業ビルを建設中です。建物ができれば再度同じ場所に戻れるのですね。
ちなみにここ避難所が用意されたのは2014年。
もうそれ避難所じゃねぇ!ほぼ定住しちゃってるやつ。
避難所の生活は2年間って話でしたがすでに10年過ぎていた。もう仮設って雰囲気じゃないし一つの街が出来上がっちゃっています。
活気があるし なんか楽しそうな街の雰囲気です。トランジットキャンプ、直訳すると一時避難所になるのでしょうか。ぜんぜん一時の期間ではないですが一時的に用意した住居なので建物は簡素な造り。各家にトイレはなく各棟にトイレが設けられてます。ここにある建物は築10年のはずですが築50年くらいの建物の様相です。インドの建物、劣化が異常に早い。
ここに来るまでは比較的街並みがキレイでしたがこのコロニー内は比較的汚めな街並み。
民度の差。
あえて汚しているとしか思えない街の感じ。水が無いから衛生面が保てないと思ってましたが、水だけじゃなかった。
もう10年、いつ元の場所に戻れるようになるのやら...。
コロナで工期が遅れちゃいました!とかそういったレベルじゃない!
本日はインドの住宅街を巡りました。インドではスラム排除を目指しているようですがまだまだ改善するには時間がかかりそうです。
丘の上にあるスラム。
スラム排除でできた避難所。
インドでは色々な問題を抱えているようです。
インドの街並みを見るだけのインド旅行、しかも見ているのが普通の住宅街とスラム街。明らかに異質な旅ですが案外楽しいもんです。でも連日スラム街に行ったので満足しました。
せっかくインドに来てるんです。
観光スポットも巡りましょう。
さてこの後は別のスラム街を見に行きます。