米どころベトナムでつくった清酒「越の一(えつのはじめ)」
ベトナムの酒税は安く、ビールは100円以下で買うことができます。また地元の焼酎やウォッカ、ワインも値段が安く買えるんです。しかし洋酒はどれも高いです。ウイスキーやブランデーなどの洋酒だけでなく、当然日本酒も洋酒扱い。スーパーで日本酒や日本の焼酎を目にしますが、高くてなかなか手が出せないしろものです。このように洋酒が高いのは関税が高く設定されているため。国内の酒販を守るため、高めに設定しているのでしょう。バーボンやシングルモルトは日本で売られているより値段が高いです。
こちらは越の一というお酒です。
米どころ新潟、福井、山形のあたりは「越国(こしのくに)」と呼ばれておりました。今でも越前、越中、越後と呼ばれる地域で、このあたりは米どころです。コシヒカリの名前も「越の国に光輝く」という意味を込めてつけられたんだとか。それだけ米の名産地なんです。
米といえば日本酒です。新潟のあたりは酒造も多く、米どころには酒どころあり。北陸はお酒の名産地です。有名なのは越乃寒梅でしょうか。
そう、新潟のあたりは「越(こし)」の字を冠する日本酒があるのです。私が好きなのは越乃景虎です。越乃と名の付くってことは越の国で作られているから。でもこちらの越の一は越の国でも少し異なります。
「こしのいち」だと思いましたがそもそも読み方が違いました。
まず「こしの」ではなく「えつの」です。そして「いち」ではなく「はじめ」です。つまりこちらの清酒の名前は「えつのはじめ」です。
初見だとなかなか読めない読み方。
若干日本人にいそうな名称ですが、こちらのお酒はベトナム産の清酒です。
日本では日本酒離れとなっていますが、日本酒はベトナムに限らず「ライスワイン」として海外で人気があり日本食と一緒に世界各国に輸出されています。たしかに和食に合う酒ってのもあるし、東南アジアの脂っぽくて味の濃い料理にも合いそうです。清酒の原料は米です。米の輸出量の世界一はインド、そして二位はベトナムです。
つまりベトナムは米どころと言ってもよいところ。
「米どころには酒どころあり」ってことで、ベトナムで清酒がつくられているそうで製造している会社は日本人の企業です。
※地理的表示制度により日本国外でつくられた原料を使用している場合、また国外で醸造されたものは「日本酒」と名乗れません。そのためこちらの商品は「清酒」となっています。
名前の越の一は、ベトナムは漢字表記で「越南」と書きます。その「越」と、ベトナムで初めて作られた清酒ってことで「一(はじめ)」という名になっているようです。
てっきり「越の」ってしておけばそれっぽい雰囲気が出せるってことで名付けたのかと思っていましたが、ちゃんとしたビジョンがあったんですね。ちなみに「越の一」の「の」がひらいているのは漢字だけだと中国っぽくなるからあえてひらがなにしてあるんだとか。
日本人が作る、ベトナムでとれる米のお酒。すげー気になったので買ってみました。ただベトナムはビール大国でアジアでは三番目にビール消費量の高い地域です(一位中国、二位日本)。ビール消費が高い理由は安いから。街で消費されているビールの値段は一缶60円ちょっと。こちらの越の一は900円ほど。なかなか市民には手の出しづらい値段ですが輸入関税がかかっていない分日本で作られる清酒よりは安いです。こちらは現地滞在日本人のためのお酒なんでしょうね。
早速ですが飲んでみます。色味は少し琥珀色しています。香りは雑穀の臭いが強め。中国の白酒と香りが似ています。
味はだいぶ穀物の味がします。おそらく日本の酒米よりたんぱく質が多いためでしょうか。メーカーの話では日本の酒米に近い品種のやつを使っているそうですが、雑味が強く、濃い味がします。
良い言い方をすれば個性的な味。悪い言い方をすれば臭みが強い味。
でも私はこの味は嫌いじゃありません。
ちょっとクセがある感じが結構いい味わいです。近いのが紹興酒でしょうか。紹興酒ほどえぐみはありませんが、もち米を醸した味わいに近いです。おそらく日本でも酒米ではなく食用の米で酒を造れば似たような味わいになるんだと思います。高品質な日本酒よりも、このような荒々しい味わいの方が私は好きです。
海外向けの日本酒は端麗辛口で、できる限り水に近い味わいが好まれているようです。冷酒として飲むのが一般的で、いわゆる赤ちょうちんがぶら下がるなんの酒なのかわからないのを熱燗で飲むってのは好まれないようです。
でもこちらの酒、熱燗で飲んでもよさそうな味わい。
こちらの酒は純米吟醸酒と書かれており、日本の法律に合わせ、精米歩合60%以下となっています。おそらく削らないともっと雑味が強くなるのでしょうね。
吟醸酒は冷酒で飲まれるのが一般的ですが、越の一は常温、もしくは熱燗で飲んでもよさそうな味わいです。
こちらは「冷蔵保存」と書かれてあるのに常温で販売されていました。ベトナムの常温は日本の常温とは様相が異なります。年中30度を超えるベトナム。エアコンがあるとはいえほぼ人肌みたいな気温です。
「お酒はぬるめの燗がいい」を地で行く国です。
暖かい国で飲む、ぬる燗。いいんじゃないでしょうか。
現状だとベトナムに住む現地日本人、もしくは日本大好きベトナム人向けの清酒となっていますが、東南アジアで十分覇権をとれる味だし、日本向けに「越南産清酒」として売り出せば、興味を持つ人も多いのではないでしょうか。また日本向けのお土産としてもよいですね。おそらく日本では売られてない酒ですからね。
ついつい地元の酒にばかり目をやってしまいますが、こういうのを飲むのもありですね。これまでワインとか一切気にしていませんでしたが、南国のワイン、ちょっと気になります。
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