八王子が宗教都市と呼ばれるのは創価学会が理由ではなかった
八王子は意外にも大学が多く文教地区になっています。有名どころでいえば工学院大学、拓殖大学、帝京大学、中央大学、多摩美術大学でしょうか。これらの大学は23区内にもキャンパスがあります。
大学が多く集まる理由は単純に土地が安かったからなのでしょう。
大学は広大な敷地が必要です。これらの大学は1960年代後半から70年代にかけて新設されました。ちょうどそのころ多摩市や八王子市をまたがる多摩丘陵の都市計画があり、造成工事がはじまったころ。それに合わせて大学を新設したのでしょう。人口増加が見込まれたため入学者を期待したのでしょうか。
そしてこちらの大学も1971年に開学しました。創価大学です。他の大学と違い創価大学は23区内にキャンパスはなく八王子キャンパスだけです。てっきり信濃町にも大学があると思っていたのですが宗教と学問は別物。
宗学分離が徹底されているようです。
日本にはキリスト教や仏教系の大学が複数あります。例えば青山学院はプロテスタント・メソジスト派、上智大学はカトリック、駒澤大学は曹洞宗、武蔵野大学は浄土真宗。このように多くの大学には“後ろ盾”となる宗教があります。
一般的にこれらの大学には神学部や仏教学部といった宗教に関する学部が存在するもんですが、創価大学はそういった学部がありません。
だって、信仰とは学ぶものではなく信じるものだから。
創価大学は宗教に関係なく誰でも入学できるよう門戸を開いていますが、学生の多くは学会員なのでしょう。統計はありませんが9割近くが学会員のようなので、すでに履修済みなんです。そんじょそこらの仏教学部生よりも知識があるはずです。
1970年代当時はあまり良い印象を持たれていなかった創価学会。イメージ払しょくのため大学では宗教感を出さないようにしたのでしょう。当然ながら構内での宗教勧誘は禁止されています。まぁでも、大学に通い、日蓮上人のすばらしさに触れることで入信する人もいるのでしょうね。
このように八王子は創価大学があるんです。宗教法人は税金がかかりませんが同大学は宗教とは関係ありません。大学も公益上の関係から税制面で優遇はありますが、人の往来によって町が潤う側面もあります。創価大に助けれれているところもあるのでしょう。八王子ではなく西創価市を名乗ってもよいのではないでしょうか(東創価は信濃町)。
宗教に関係する大学ではありますが宗教施設ではない。宗教都市八王子みたいなイメージがありますがそんなことはありません。
と思いきや宗教都市八王子の名に恥じない施設。
統一教会はキリスト系から派生した宗教。
一神教ではありますが少し考えが違うようです。正統派のキリスト教団体からは異端扱いされているようです。
こちらには天の父母様と書かれてあります。キリスト教では「天の父よ」と神のことを父と表現します。
なぜ天の母じゃだめなのか??
「おかあさんといっしょ」って番組タイトルが差別だと言われる現代。近い将来「ご両親といっしょ」になるんだとか。それにも飽き足らず「保護者様といっしょ」になるって話もでているそうです。このように性差に対して厳しい世の中となりました。統一教会は神様にも多様性を求めたのでしょう。その結果が天の父母様。近い将来「天の保護者様」になるのかもしれませんね。
こんな感じで八王子は宗教施設が多くあるようです。
こちらは崇教真光の八王子支部です。1959年にできた比較的新しい新宗教で現在の信者数は100万人ほど。新興宗教なのでトラブルがゼロってわけではありませんが真光様はそこまで悪い噂は聞きません。以前岐阜高山の総本山の前を通った時は「スゲーやばそう」って思ったんですけどね。次に高山に行く際はお参りしてきます。
世界真光文明教団も八王子にはあります。同教団も崇教真光も世界救世教から分裂した宗教。
ちなみに東京黎明教会ってのもあるんですがこちらも世界救世教の教えを守る宗教。
私は以前、浅草を散歩した際に世界救世教発祥の地に訪れています。開祖である岡田茂吉氏。ここまで影響力があるのですごい気になります。世界救世教について色々調べたいです。
こちらは日本基督教団 八王子栄光教会。
なんか八王子、宗教施設がマジ多い。
日本基督教団はプロテスタント系の教団で日本最大の教派なんだとか。教派の名の通りプロテスタント系諸派の集合体のようです。廃娼運動をしていた救世軍もかつては日本基督教団に加盟していたそうです。
こちらは末日聖徒イエス・キリスト教会です。かつてはモルモン教と呼ばれていたところです。モルモン教ってカルト宗教みたいになっていますが、実際のところそこまでヤバそうではないようです。一般的な聖書を用いず独自の聖典「モルモン書」の教えを守ることから同じキリスト教からは「異端」と呼ばれているようです。エホバと似たような立ち位置なのでしょう。
こちらはセブンスデー・アドベンチスト八王子キリスト教会(SDA)。プロテスタント系ですがメソジスト派からは異端とされているそうです。エホバやモルモンと同じような扱いですが、そもそもものみの塔の創始者はSDAに入信していたそうです。家系ラーメンで考えればSDAが吉村家、エホバが本牧家あたりでしょうか。
こちらは天運教会 (Heaven's Fortune Church)です。キリスト教福音宣教会の教会です。
キリスト教福音宣教会は韓国のキリスト教から派生した1981年にできた新宗教で創設者は鄭明析。日本支部ができたのは1985年なのでまだ40年程度しか経っていません。
基本理念は他のキリスト教とさほど変わりないようですが、宗教の勧誘が好ましい形ではなく大学のサークルなどを通じて強引な勧誘をしているそうでそれが問題視されているようです。日本では統一教会が問題視されていますが、韓国ではキリスト教福音宣教会のほうが問題視されているんだそう。
創立者の鄭明析は2009年に強姦の罪で懲役10年となり大田(テジョン)刑務所に収監。2018年に出所するものの、出所後すぐにセクハラをしたと複数人からの被害の訴えにより起訴され2023年12月に懲役23年の実刑判決がでました。
そのほか八王子には天理教、普明会教団、金光教といった宗教施設がありますがキリスト系の宗教施設が多めです。
高度経済成長期に新しく出来た街で比較的土地代が安かったのが理由なのでしょうが、どうやら八王子にはキリスト教が根付く土台があったようです。
八王子市の北西側、北浅川沿いに泉町という街があります。凄いキレイな市営住宅があります。公営住宅が供給され始めたのは1951年以降。古いところだと築70年以上。さすがに建て替えているのでしょう。
市営住宅ってボロい汚いって印象がありますが、こちらは令和にできたばかりの新築です。家賃は15000円~65000円。市営住宅なので収入によって変わるのでしょう。すげー魅力的な家ですが、市営住宅なので住むには一定の条件が必要なのでしょう。
こちらはかつて下壱分方村福岡という集落でした。
八王子には八王子千人同心という幕府直属の下級武士が集まる組織が形成されていました。今でいえば警察と消防、自衛隊など街の治安維持をする人たちにあたるのでしょうか。八王子は街道沿いだったため江戸の防衛のためこのような組織が置かれたようです。八王子市内に千人町って町名がありますが、八王子千人同心が由来のようです。
町の警備には武具が必要。そのため武具を作る人が必要です。ここでは武具を作る職人が集まった地域でした。
泉町の町名の通りこの近辺には湧水があり小川が流れています。皮の鞣しには多量の水が必要で、この地域は武具制作に最適な場所だったのでしょう。
泉町にはカトリック教会「カトリック泉町教会」があります。こちらはかつて「聖瑪利亜教会」と呼ばれていたそうです。
1848年、ここで生まれた山口重兵衛という方がいます。重兵衛は部落出身者でしたが20歳で商人として独立しました。その間にキリスト教に興味を持ち1876年に洗礼を受けました。
1876年は明治になって10年ほど経過しています。国民の自由が叫ばれた自由民権運動が強まっていた時期です。1871年には身分差別が廃止され四民平等となりました。
身分差別の廃止によりアウトカーストと呼ばれる人たちが同等に扱われるようになったのですが、実際はその後も差別が続いており、被差別部落の子供たちは教育が受けられない状態でした。そのため重兵衛は1886年に生まれ故郷でカトリック教会と子供たちが学べる学校を設立したそうです。
その教会がこちらのようです。
弱者救済のキリスト教。社会的弱者がいたからここに教会ができたのでしょう。
部落解放は水平社や帝国公道会が部落解放の先駆けってイメージがありますが、それよりも以前に融和に向けて活動していた人がいたそうです。
土地が安かったから宗教施設が増えたってのもあるのでしょうが、山口重兵衛のような先駆者がいたから宗教家が集まる土壌ができていたのかもしれませんね。そもそも八王子は牛頭天王と8人の王子が名前の由来。神様が集まる場所なんです。
「牛頭天王と8人の王子」ってディズニー映画でありそうなタイトルですが、八将神が街の名前になってるんです。
神様がいる街・八王子。
そういえば市内を散歩してみて気付いたことがあるんです。
やたら公明党のポスターが多い。
さすが宗教都市「八王子」。
関連記事
香辛料を使って料理を作る。最初の頃は時間をかけて作っていましたが慣れてくると短時間で料理が作れるようになりました。出汁に香辛...