LAPHROAIG SELECT CASK(ラフロイグセレクトカスク)を飲んでみて
私が初めてウィスキーを口にしたのは恐らく幼稚園生のころでした。
当然ただの苦くて変な感じの飲み物という認識でした。ある程度の年齢になってもその認識は変わらず、アルコール臭い飲み物。そのようなイメージしかありませんでした。成人してもなお、そのイメージはそのままだったわけですが背伸びしたい年ごろなのか「ウィスキーはやっぱりコクが違うよねー」とかほざいていた時期もありました。
そうなんです。もともと私はウィスキーとか飲まないタイプの人間でした。
美味しいお酒といったら梅酒かカルーアミルク。
ぺシェを使ったファジーネーブルとかあとはカシスオレンジとか。
たぶんその手のどこの居酒屋にもたいてい置いてある甘めの酒が好きだったんです。
しかし人生に苦慮し、様々な困難を乗り越え、明日の目指す道すらわからなくなったとき、私が手に取ったのがウィスキーでした。
しかも運が悪いことに最初に飲んだのが、ラフロイグ10年。
万人受けを一切しない。ただの薬。なんだったら薬の方が飲みやすくされているのに敢えて薬っぽさを出している。飲む正露丸とも形容されるラフロイグです。
私も初めて飲んだ時はびっくりしました。
この酒を金払って飲むなんてただの罰ゲームでしかない。
頭がイカレた輩が飲む酒だ、と思っていたのですが、飲んでいるうちにクセになり。
気が付けば頭のイカレた輩の一人となっていました。
ラフロイグの香り成分は泥炭。
ウィスキーは麦から出来ているわけですが、その麦を乾燥させるために燃料が必要なんだとか。その燃料を泥炭(ピート)を使っているそうです。泥炭とは植物が発酵しそこなって出来たもの。つまり、腐葉土のなりそこないみたいなものらしいです。
ピート香が強いとか薄いとかはこの泥炭の成分によって変わるみたいなんです。ラフロイグが生産されている地域はアイラ島という小さな島です。そのため燃料になる木材もなく、ピートが利用されていたそうな。
恐らく正露丸っぽい香りがするのはピートに含まれる木クレオソートが関係しているんだと思います。これについては炭作りをしようとしたときに勉強しました。木材を乾留すると、水蒸気成分の中に木タールやメチルアルコール、木酢液がでます。その中に正露丸の成分である木クレオソートが含まれるのだとか。アイラ島の泥炭にも同じような成分が含まれ、小麦を乾燥させる際にその香りがついてしまうのでしょう。普通に木を燃しただけでも正露丸っぽい煙臭い匂いがすることもあります。恐らくそんな感じで正露丸臭いと呼ばれるようになったのでしょう。
そんな薬のような味わいのラフロイグですがいつしか虜に。なんだったらアイラウィスキー以外はウィスキーではないと思っていた時もありました。これは見栄を張るとかそういうのではなく、当時はラフロイグの良さが一番でした。そのためラフロイグ10年からはじまり、クオーターカスク、18年、25年、ブラックラフロイグといわれたオロロソシェリーカスクの27年とかまで飲んでいました。
27年のラフロイグは美味しかったですね。高いんで今なら絶対に飲みませんが、当時は少し酔っていたようです。
そんなこんなで月日は流れ、ウィスキーといえばニッカかトリスか角瓶。ちょっと頑張ってオールドといった感じなわけですが、先日スーパーにラフロイグを見つけてしまいまして。せっかくだから飲んでみようかと思いました。
ラフロイグのセレクトカスクというものです。
どうやら四年ほど前に出た商品みたいですね。
いわゆるノンエイジものでラフロイグを低価格で提供するためのもののようです。
クオーターカスクは原酒不足で終売、日本だけでなく海外でも原酒不足が続いているようです。どこかの国の人が大量購入するため、酒造りが間に合わなくなっているみたいですね。
味わいについてですが、ラフロイグ10年のようなパンチはありません。スモーキーさはあるものの物足りないといった感じでしょうか。個人的にはもっと強烈な奴が望ましいです。明らかにラフロイグ10年とは違い、別物といったところ。なんだったら正露丸すりつぶして入れたいって感じです。
非常にざんねんといった言葉しか出ません。
当然、ラフロイグのスモーキーさが苦手という人もいるのでしょう。しかしあのパンチを求めている人にとってはラフロイグの新商品は10年を超えてくるはず!と期待をしているのだと思います。
なんとなく無難な形にしたというか、流行りにのってみましたというか、そんな感じです。私としてはセレクトカスクよりもスタンダードの10年の方が好みです。
これはクオーターカスクのときも同じ気持ちになりました。10年よりもクオーターカスクの方が安い。安くておいしいならそっちの方が良いのではないか?と思って飲んだのですが、結局は10年のほうがおいしいんですよね。27年のすばらしさにはかないませんが、個人的にはスタンダードが一番なんだと思います。
まぁそんな酷評なわけですが、ラフロイグはラフロイグです。
飲み方としてはストレートがよいです。あとはソーダか水割りでしょうか。クセが強いためほかの割物には合いません。物足りなさはありますが、アイラ島の荒々しい感じは出ていると思います。また若干甘みもあるため、多少は飲みやすいかも。かといってアイラウィスキーの入門とするのは少し無理があります。私としてはクセのあるラフロイグ10年をまずは飲んでみて、その後27年。そしてセレクトカスクを飲んでほしいです。スモーキーさが苦手な人はボウモアあたりからがいいんじゃないでしょうか。
苦手な人には苦手な味。苦手じゃない人には物足りない味。そんな感じです。
そういえば私はお腹が痛いときに正露丸の臭いをかぐだけで腹痛がとまることもありました。ということは、ラフロイグを飲めば腹痛は治まるのではないか?
今度機会があれば試してみようと思います。