井戸水の水質検査について掘り下げてみる
年末に掃除をしていたところ二年前に井戸水の水質調査をした結果表が出てきました。
そうです。私は二年前に山林に井戸を掘ったのです。最初は自力で井戸を掘るつもりでした。当然素人には掘れるわけもなく仕方なく業者に頼みました。二日がかりで何とか掘った井戸。その井戸は明らかに飲み水に適さなそうでした。それでも数値で見なければ判断できないということで水質検査に出したのです。
以前の記事では写真に撮って報告しましたが、写真だと中身が見づらいです。
そのためスキャンしたものを用意しました。
24項目と限られた水質調査ですが、これだけでも参考にはなると思います。
前回は大雑把なところしか伝えておりませんが、今回は一つずつ見ていきましょう。
見ての通り項目がズラッと並んでいます。結果から伝えると私の所有する井戸は飲み水には適さないという結果になっております。
適さないというのは水道法水質基準値に満たしていないということです。検査項目に×があるものが不適切ということです。24項目なので横線が入っている部分は検査対象外となっています。
まず最初の項目は一般細菌、大腸菌などの菌類が含まれるかどうか。それと「カドミウム及びその他の化合物」「セレン及びその他の化合物」「鉛及びその他の化合物」「砒素及びその他の化合物」です。
もう出だしから×がついております。一般細菌とは大腸菌以外の細菌のことで、必ずしも人体に害を与える細菌というわけではないようです。例えば鉄バクテリアなんかは人体に影響はないようです。このようにそのほとんどが人体に影響を与えるような細菌では無いようですが汚水などの混入により病原微生物が混入していることもあるようです。
本来の基準値は1mlあたり100個未満でなければなりません。9000個ということは基準値の90倍ですからね。検査場に持っていく際に輸送に多少時間がかかるためそこで増えたところもあるんだと思いますが、一般的な量ではないのでしょう。この9000個の細菌がどのような影響を及ぼすかは不明ですが、飲むのならば煮沸または減菌装置などの対策が必要とのこと。
大腸菌に関しては検出されていません。そのため一般細菌も汚水が混入したとは考えづらいですよね。
「カドミウム及びその他の化合物」
カドミウムってあのイタイイタイ病の原因物質です。基準値は0.003mg/Lということですが検出量は0.0003未満ということです。十分の一以下なので、この土地はその手の汚染は無いようです。大腸菌とかだとお腹下すだけですが、この手の重金属が含まれてたら確実に飲めない井戸水になるんでしょう。
「セレン及びその他の化合物」
どうも、セレンさんはじめましてー。ウィキペディアみてもよくわかりません。環境基準の内容を見たところ、金属セレン自体には毒性はないが、化合物は猛毒なものがあり、胃腸障害や肺炎などの症状を起こし、全身痙攣から最終的には死に至ることもあるそうです。こちらも結構ヤバそうなヤツですね。基準値は0.01mg/Lですが検出量は0.001未満ということです。こちらも問題はありません。
「鉛及びその他の化合物」
これが今回の検査の中で一番ヤバそうなやつです。基準値は0.01mg/Lですが検出量は0.024mgですので2.4倍です。ちなみに農林水産省のウェブサイトに食品からの鉛の摂取量というのがあり、現在の日本人は一日当たり0.01gほど食品などから摂取しているようです。そして1980年代後半は0.08gも摂取していたようです。低下した理由は鉛の排出源対策が進んだからというのが理由です。現在は0.01gでも30年ほど前は0.08g摂取しており、皆さまそれでも生きてるわけです。今回井戸水は1リットルあたり0.024mgですので4リットル飲んでやっと30年前と同じくらいになる程度です。ちょっとくらい鉛多めですが、なんとなく大丈夫なのではないでしょうか。
鉛を除去するためにはフィルターを取り付ける必要があるみたいです。
「砒素及びその他の化合物」
豊洲市場で問題視されていた砒素です。こちらの基準値は0.01mg/Lとなっております。検出量は0.002mgです。とくに問題ありません。ちなみに豊洲市場で検出されたヒ素の量は0.004mg。豊洲も何ら問題ないですね。六甲のおいしい水は0.003mgです。私が所有する井戸は六甲のおいしい水よりも砒素が含まれていないということになります。ここについては問題ないのでしょう。
続きの項目は「六価クロム化合物」「亜硝酸態窒素」「硝酸帯窒素及び亜硝酸態窒素」「ホウ素及びその化合物」です。
「六価クロム化合物」
こちらも豊洲市場で検出されていた項目です。基準値は0.05mg/Lとなっております。検出量は0.005未満ということでした。土壌汚染が酷いところは井戸水に六価クロムが含まれることがあるようです。所詮は山林なので周りに工場もありません。そのためこの手の化合物が含まれることはないのでしょう。
「亜硝酸態窒素」「硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素」
農地に散布された窒素が土壌中で微生物の働きによりアンモニア性窒素に変わり、さらに亜硝酸態窒素、硝酸態窒素に変わるようです。田舎だとこっちの方が検出されそうですよね。窒素は作物の栄養分なんで農家の人は散布します。それが原因で硝酸態窒素が出るわけですね。過剰摂取するとメトヘモグロビン血症っていう病気になるようです。こちらの基準値は亜硝酸態窒素については0.04mg/Lで検出量は0.004mg/L。硝酸帯窒素及び亜硝酸態窒素は10mg/Lで検出量は0.1未満。「亜硝酸態窒素」と「硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素」の違いが分かりませんが基準値以下でした。田舎とはいえ山林なんで窒素蒔く人も周りにいません。唯一蒔く人がいるとすれば私でしょうか。
「ホウ素及びその化合物」
こちらの基準値は1mg/Lで検出量は0.1未満。問題ありません。ホウ素は摂取すると嘔吐、下痢、腹痛などの症状が出るそうです。私がラーメン食べれば基本的に腹を下すわけですのでホウ素はラーメンと同等といった感じでしょうか。ヒ素や鉛なんかと比べると大したことは無いようです。
ジオキサンからトリクロロ酢酸までは調べておりません。
続きの項目は「亜鉛及びその化合物」「アルミニウム及びその化合物」「鉄及びその化合物」「銅及びその化合物」です。
「亜鉛及びその化合物」
こちらの基準値は1mg/Lで検出量は0.01未満。問題ありません。亜鉛に関しては得に多かったとしても問題ないのでしょう。「その化合物」っていう部分に問題があるのでしょうか。
「アルミニウム及びその化合物」
人が一生涯摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される暫定的な許容量(暫定耐容週間摂取量)として、体重1kg、一週間当たり、2mgという値を設定しています。
なお、一時期、アルツハイマー病とアルミニウムの関係があるといった情報もありましたが、現在は、この因果関係を証明する根拠はないとされています。
アルミニウムってアルツハイマー病になるっていわれていましたが、あれってウソだったんですね。こちらの基準値は0.2mg/Lで検出量は0.02。体重50kgの人が一週間で摂取してよい量は100mgまで。つまり一日15mg摂取しても問題ないわけで私の井戸水は750リットル飲んでも過剰摂取にならないということですね。
「鉄及びその化合物」
こちらの基準値は0.3mg/Lで検出量は1.24mg。基準値の4倍検出しています。鉄の過剰摂取は肝臓に負担がかかるそうです。でも貧血気味の人にとっては水飲めば鉄分摂取できるわけですから好都合です。基準に満たしておりませんが、ここは問題ないでしょうね。除去するためにはフィルターが必要みたいです。
「銅及びその化合物」
こちらの基準値は1.0mg/Lで検出量は0.01未満。問題ありません。銅も重要な栄養素みたいです。白髪は銅不足からくるんだとか。10円玉かじるしかないですね。
続きの項目は「マンガン及びその化合物」「塩化物イオン」「カルシウム、マグネシウム等(硬度)」「蒸発物残留」です。
「マンガン及びその化合物」
こちらの基準値は0.05mg/Lで検出量は0.083mg。若干多いようです。
頭痛・関節痛・易刺激性・眠気などを起こし、やがて情動不安定・錯乱に至る。大脳基底核や錐体路も障害し、パーキンソン症候群・ジストニア・平衡覚障害を引き起こすほか、無関心・抑うつなどの精神症状も報告されている。
結構ヤバそうな症状ですね。日本人の食事摂取基準は一日当たり4mgが目安。耐容上限量は11mgのようです。検出量は0.083mg。つまり130リットルまで一日飲んでOKというわけですね。基準値をちょっと上回った程度ですのでそこまで気にすることはないのでしょう。
「塩化物イオン」
こちらの基準値は200mg/Lで検出量は12.5mg。とくに問題はなさそうです。
塩化物イオン自体はとくに毒性などは無いようです。
「カルシウム、マグネシウム等(硬度)」
こちらの基準値は300mg/Lで検出量は100mg。とくに問題はなさそうです。
硬度が高いとお腹壊しますからね。硬度120mg以下は軟水になるので私の所有する井戸水は軟水になります。
「蒸発物残留」
こちらの基準値は500mg/Lで検出量は180mg。
つまり水を蒸発させて残ったカスがどれくらいあるかってやつですね。硬度が低ければ当然残るものもないのでしょう。
続きの項目は「有機物(全有機炭素の量)」「PH値」「味」「臭気」です。
「有機物(全有機炭素の量)」
こちらの基準値は3mg/Lで検出量は0.5mg。
これも蒸発残留物同様にどの程度有機物があるのかを測定するやつのようです。基準値の6分の1なので何も問題ありません。ここだけ見ると比較的綺麗な水のように感じてしまいます。
「PH値」
こちらの基準値は5.8以上8.6未満で検出結果は7.1。
つまり弱アルカリイオン水ってことですね。
「味」
こちらの基準値は「異常ではないこと」で検出結果は「異常なし」。
二年前にこの検査結果を見た時は「味は異常なしなんだぁ」と思ったわけですが、検査してくれた人、この水飲んだんですね。どこで取れたのかもよくわかっていない水によく口付けてくれました。私はいまだにこの井戸水を飲んでいません。でも検査員の人が味を確かめてくれたのであれば、飲めそうな気がしてきました。
「臭気」
こちらの基準値は「異常ではないこと」で検出結果は「微金気臭」。
私でもこの匂いについてはわかっていました。だって鉄臭いんですもん。味は異常なしだけど臭いがするわけです。味も鉄っぽいんだと思ってましたがそうではないんですね。まぁ「微金気臭」です。「微」なのでそこまで問題はないのでしょう。鼻つまめば良いってことです。
最後に「色度」と「濁度」についてです。
「色度」
こちらの基準値は5度以下で検出結果は9.2。
「濁度」
こちらの基準値は2度以下で検出結果は3.4。
どちらも基準を満たしていません。でも色が悪かろうが濁っていようが飲めるのであれば飲めばいいんです。
結論を言うと煮沸すればちょっと鉄臭いけど飲めるってわけですね。味は問題ないんで鼻つまんで飲めばいいんです。今度この水を沸かしてカップラーメンかコーヒーでも飲んでみようと思います。
ただこの検査では24項目しか調べておりません。クロロホルムとかベンゼンとかなんだかヤバそうなものは調べてないわけです。でも、子供のころって雪降った後雪食べたりしていましたからね。人間意外にも丈夫にできているもんです。基本的にはミネラルウォーターを買って持っていきますが、たまに井戸水飲むのもありなのかもしれません。
小屋暮らしをしている人は水を川で汲んできたり雨水を貯めたりと色々と試行錯誤しています。私の山林の近くには小さな川が流れていますが飲み水には明らかに適しません。また汲みに行くのも崖を降りていかなければなりません。その結果、金払ってでも井戸を掘りました。本来であれば飲み水として、また風呂を沸かすために用意したものが、このような検査結果となりまして。もっと深く掘ればよかったと少し後悔していますが、深く掘ったところで飲めるかどうかも分かりません。どうせメンテナンスとかいろいろあるため浅井戸で充分なのでしょう。
井戸があれば畑に水を撒くこともできるし、コンクリートや漆喰を水で溶かすこともできます。また先々風呂を沸かせば鉄臭いので温泉気分を味わうこともできるでしょう。このあたりを考えれば井戸を掘って正解だったのではないでしょうか。もちろん飲み水に適していた方がよかったのですが...。
どちらにしても仕方ないことですので、この状態で何とか飲んでみたりするしかないでしょう。別に山林じゃなくても井戸は掘れます。むしろ平地の方が掘りやすいでしょう。一回に一台の井戸。あなたも掘ってみてはいかがでしょうか?