山林生活

散った花街「五条楽園」ヤクザと花札、そして任天堂

散った花街「五条楽園」ヤクザと花札、そして任天堂

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京都駅より四条方面に歩きたいと思います。京都は碁盤の目のようになっていてわかりやすいです。そして三条とか五条とか番号が振ってあるので大体の居場所がわかるというのもいいですね。京都駅は八条あたりになるのでしょうか。

こちらは高瀬川です。崇仁地区にも流れていましたが昔は運河として利用されていたのだとか。川は交通の要。そして発展するのも川の周り。鴨川や高瀬川付近は発展したのでしょう。

高瀬川沿いを登っていくとこちらにもサウナがありました。建物が時代を感じさせてくれます。高瀬川に架かる橋の上からサウナを見ると若干男湯の中が外から見えますがそれも愛嬌てやつなのでしょう。

銭湯なので刺青があっても入店できます。スーパー銭湯はアミューズメント施設の要素があるため刺青のある方の入店を断れますが、銭湯は公衆浴場法に基づいて設置された公衆浴場です。伝染病や公衆衛生に害を及ぼすもの以外の入店は拒否できません。刺青があるだけでは入店拒否をしてはダメなのです。そもそも昔はお風呂がない家も多くありました。刺青をしていたらお風呂に入れないとなれば汚い人があふれてしまいます。そのため万人が誰でも入れるようになっているわけです。サウナの梅湯も刺青はOK(マナーが著しく悪い方やホモ行為する方はお断りします)とのこと。

そもそもこちらの銭湯の二階にタトゥースタジオがあるそうなんです。

刺青は悪いイメージが払しょくできていません。外国人はファッションでタトゥーを入れますが、日本人は暴力団やヤクザの印象が強く残っています。
江戸時代は入れ墨刑などもありましたが、入れ墨ブームというのがあり武士階級にも広がったそうです。飛脚や火消しは刺青を入れているのが当然だったようです。しかし明治以降刺青は禁止となりました。

明治時代に「文身禁止令」が施行され、それにより新しく彫り物をするのは禁止となったそうです。
禁止の目的は「欧米人の目」を気にしたからなんだそう。文明開化となり外国人が自由に出入りするようになりました。そのためこれまで当然だったちょんまげを取り締まったりしていた地域もあったそうです。
刺青に関しては「服を着ずに刺青を見せるのは野蛮である」ということで禁止となったようです。
しかし欧米人は日本の刺青を高評価、その結果外国ではタトゥーが一般的となったのでしょう。
江戸時代にも「親からもらった身体に傷をつけるのはよくない」という理由で禁止となった時期もあったそうですが、明治の禁止は見た目がカッコ悪いという理由だったそうです。

明治の禁止は70年以上続きました。
禁止がとけたのは戦後ですが、その禁止の時期に入れ墨を彫っていたのがアウトロー、つまりヤクザだったのでしょう。そのイメージから「刺青=ヤクザ」という形が残ってしまっているのです。

そんなヤクザなイメージを払拭させる、偏見をなくすためにあえて銭湯にタトゥースタジオを設けたのでしょうね。

銭湯の近くにタトゥースタジオがあれば刺青を入れていても気兼ねなくお風呂屋さんにいけるわけです。最近ではファッションタトゥというのも増えています。とくに京都は外国人観光客が多いです。刺青の偏見を京都から無くしていくというのは素晴らしいです。時期にそういった悪いイメージも払拭できる日が来るのでしょう。

銭湯とタトゥスタジオが近いということはそういった相乗効果を期待できるんです。

ちなみに銭湯のとなりは暴力団の組事務所があったそうです。

相乗効果で「刺青=ヤクザ」のイメージが払拭できない。

その暴力団の組事務所は山口組分裂の際に内紛が起きたんだそう。ドンパチが始まれば近隣住民に迷惑がかかる恐れがあるため京都府暴力追放運動推進センターが暴力団を相手取り事務所の使用差し止めを家裁に申請を行ったんだそう。それにより事務所使用禁止処分が決定されたようです。現在はロープが張ってあります。

そんなアウトローだった感じの街ですが、どうやらこの辺りには遊廓があったそうなんです。

もともとこの近くには五条新地、六条新地、七条新地という三つの遊廓があったそうです。京都の祇園が銀座ならば五条新地、六条新地、七条新地は池袋、歌舞伎町、五反田のような立ち位置でしょうか。

大正に入り三つの遊廓が一つにまとまったそうです。その際は七条遊廓と呼ばれていたそうです。祇園と同じように芸妓もおり、そして遊女もいたというわけです。まさに歌舞伎町のような場所だったのでしょう。

戦後、売春防止法が施行されました。全国各地の遊廓は解体を余儀なくされました。
一部は遊郭を解体。ごく普通の街に変貌を遂げましたが、中には隠れて営業をしているところもありました。

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後者は吉原や堀之内といったソープ街。また大阪の飛田新地になります。

七条遊廓は後者の選択をしました。つまり存続を選んだそうです。しかも名称を五条楽園として再スタートをしました。遊廓ではなく花街として営業することで名称を変えたわけですが、名前に「楽園」とつけているあたり全然隠すつもりはないようです。
吉原や川崎堀之内のようにちゃんと手続きを取り、特殊浴場という形式で営業するスタイルのところもあれば、手続きはせずに「普通の飲食店どすぇ」と表向きは飲食店や旅館、でも中で何が行われているかはわからないという営業スタイルで春を売っているスタイルのところもあり、五条楽園は飲食店スタイルでした。

こちら、その当時そういったことが行われていた建物なんだそう。

京都は空襲が少なかったためか古い建物が多く残っています。古き悪しき文化があったものも残っており、まさにこれはそれの代表だったのでしょう。

ほかにも遊廓だったのだろうなという建物もあり、カフェースタイルと呼ばれるタイル柄の建物もあります。これらも遊廓跡の名残りなのでしょう。

ここ五条楽園は売春防止法以降は“裏風俗”という形で存続していたわけです。しかもそれは10年ほど前まで続いていたのだとか。しかし2011年に売春防止法違反容疑で経営者が逮捕。それにより壊滅したそうです。経営していたのはおそらくその手の組織の方々だったのでしょう。店舗型裏風俗を営業できる人なんて限られていますからね。ヤクザの稼ぎ頭だったところなのでしょう。

ちなみに任天堂の創業地はここ五条楽園なんだそうです。その当時に建てた建物が残っています。

こちらは外国人に人気のスポットのようで壁に落書きがありました。訪日外国人の中にはアニメ、漫画、ゲームといった日本のサブカルチャー愛好家も多いです。とくにマリオやポケモンを輩出した任天堂の生まれ故郷に行くのは聖地巡礼という感じなのでしょう。

聖地といえどここは元遊廓跡。そして前述のとおりヤクザのシマの中です。ここを仕切っていた暴力団は博徒系指定暴力団だったようです。博徒、つまり賭け事を生業とする暴力団ということです。近年では闇カジノが主流ですが、古くは丁半賭博や花札といったものだったのでしょう。
花札といえば任天堂の主力商品です。

現在はポケモンが人気ですが、当時はスジモンに人気だったようです。

今の任天堂があるのもここで創業したからなのかもしれません。
キノコを取ると大きくなったり、花を取ると手から火が出る幻想が見えたり。ここ五条楽園が日本のゲームのルーツということでしょうか。

任天堂創業地にある建物は取り壊され、近くホテルになるんだとか。この建物が拝めるのも今年までという感じでしょうかね。

暴力団も排除され、違法風俗店も壊滅されました。街は徐々にクリーンになっていくことでしょう。
京都は外国人が多く訪れるところです。売春窟のようなところは一掃したかったのでしょうね。その結果が今の状態となっています。

今は一部がゲストハウスなどなっていますが、空き家が目立ちました。街が生まれ変わるのにはもう少し時間が必要なようです。おそらく芸術家などが集いカルチャーを発信する街と変化していくのでしょう。

来るのが10年遅かったようです。でもさらにここから上がると新しい花街があるそうです。そちらも行ってみたいと思います。

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