九州の文化が根付いた製鉄の街「君津リトル九州」
本日は君津に来ております。
こちらは君津駅です。私は以前千葉の房総に山林を所有していました。アクアラインを経由し木更津東で降り、下道を30kmくらい走って現地に行っていたのですが、その際に君津市には立ち寄っていました。久留里のあたりは無料で使える自噴井戸複数あり当初所有する山林には井戸がなかったので重宝しました。またお風呂の無い山林では帰りに七里川温泉に浸かるのが楽しみのひとつでした。このように君津市には頻繁に立ち寄っていたのですが、君津駅のほうへは一度も立ち寄りませんでした。
こちらは君津駅前にあるモニュメント「礎」です。
江戸時代の頃は海苔の生産が盛んで、君津でつくられていた海苔は上総海苔と呼ばれていたそうです。海沿いは漁村、少し内側に入れば田んぼが広がる田舎でした。地方によくある漁村でしたが、君津は戦後に漁村ではなくなりました。状況が変わるのは1960年、高度経済成長期の頃です。
関東は大田区、川崎、横浜の京浜工業地帯に多くの工場が集まっていましたが、その集中を分散させる目的且つ戦後の経済復興、失業者対策のために千葉県が京葉工業地帯造成事業計画を策定しました。
1960年に漁業組合に対して漁業権譲渡の交渉が始まり、翌年には県の要請を受け入れ漁業組合が漁業権を放棄。北九州にある八幡製鉄株式会社を誘致することとなりました。漁村で田んぼしかなかった君津が工業都市になることが決まったのです。工業化により人口が増えると予測し、君津では都市計画事業に着手したそうです。こちらの「礎」は中野土地区画整理組合の記念碑で1984年に建てられました。工業化の礎ってことなんでしょうかね。
現在の君津は工業都市です。湾岸部には火力発電所や化学工場があり、当時八幡製鉄だった日本製鉄もあります。今回この日本製鉄に関することで君津に立ち寄りました。
製鉄の町と言えば北九州の小倉。1901年、日清戦争で勝利した日本は更なる発展のために北九州の八幡に製鉄所をつくりました。歴史の授業で習う八幡製鉄所です。
その八幡製鉄を君津に誘致したのですが技術者がいなければ工場は操業できません。そのため工場新設とともに八幡製鉄所の従業員とその家族2万人を君津に移住させたそうです。今の時代じゃ考えられない大移動ですが、当時はこれができたってんだからすごいことです。
こちらは日本製鉄大和田団地です。君津駅から徒歩20分くらいでしょうか。日本製鉄の工場のそばにある社宅です。君津製鉄所の操業は1965年。これらの団地はその当時建てられたのでしょう。それから60年経っているため住宅は老朽化しているのでしょう。
2016年より建て替えが始まっているようです。建物がキレイになっているところがあります。
スチールハウス工法。材料の鉄は自社で製鉄したものなんでしょう。古くなった建物は順次このように変わるようです。
君津へは日本製鉄の従業員だけでなく北九州の文化も一緒に移り住んできたそうです。1965年の人口が4万人だった君津が、5年後の1970年には7万人に増えたのです。つまり40%が九州出身者。そりゃ街の雰囲気も変わるでしょう。
北九州の名物って何でしょうか?うどん、ギョウザ、ちゃんぽん、もつ鍋にラーメン...。焼うどんの発祥も北九州って説があります。関東とは少し違った食文化のある九州。引っ越し先でそういう店がないと北九州の人も困りますからね。丸ごと引っ越してきたんでしょう。
こちら、飲み屋街です。
北九州のイメージ、だいぶ偏ってる。
君津だけで3500人をかかえる日本製鉄のお膝元です。
東証プライム上場企業、日本最大手の製鉄会社。製鉄業界では時価総額が世界で二番目の日本製鉄。そんなところで働くエリートが3500人もいるんです。そりゃ福利厚生が充実しているのでしょう。
その福利厚生の一環である飲み屋街。
これは君津の鴎外通り。
もつ鍋屋とかそういうのがあると思ったんですが、そういうのはなく、あるのは女性が接客する福利厚生施設しかないようです。酒飲みの文化が九州から君津に引っ越してきたようです。普通の居酒屋ではダメだったようで、女性が接客する北九州スタイルのスナック(たぶん)。
スナックだらけの君津。こちらは北口側ですが南口側にもスナック街があります。
日本製鉄の社員はスナックに飢えていることだけはわかりました。でも君津駅前にあるのはパブスナックなどの接客を伴う飲食店まで。性風俗店っぽいやつは無いようです。そもそも利用者の多くが日本製鉄の社員です。そんなところに性風俗店があったら、社員が皆兄弟になっちゃいますからね。一応怪しめなマッサージ店はあるようですが、そちらは果たしてどんなサービスのところでしょうか。
こちらは君津市八重原ってところ。元々ここには日本製鉄の団地が41棟ありました。ピーク時は社員とその家族だけで6500人ほど住んでおり、団地内にスーパーがあったそうです。
しかし2012年に全棟閉鎖し、今は更地となっています。
また一戸建て住宅が建っております。
君津は1965年の九州人大移動により人口が増加。1995年にピークを迎えるも現在は人口減少傾向にあります。現在の人口は8万人で、来年にはその数字を割ることになるでしょう。高齢者の割合は30%ほどですが他の地方都市同様に年々増加しています。
新築住居に若い世代が移り住めば若返るのでしょうが、なかなか難しそうだし、一部は老人ホームになっています。
かつて北九州から大移動してきた人たちが住んだ団地のそば。現在はスーパーもなく住宅地となりましたが唯一ラーメン屋さんがありました。
九州ラーメン日吉です。
せっかく君津にあるリトル九州に来てるんです。九州の風、感じたいじゃないですか!ってわけでこちらでラーメン食べていきます。
ラーメン業界には1000円の壁というのが存在し、1000円を超えると客がこなくなるため、一般的なラーメンの価格は1杯800円程度です。ただ、近年は物価高により1000円を超えるラーメン店も出てきました。しかしそんな時流に流されずに低価格帯を保つ九州ラーメン日吉。一杯400円。これでも値上げをしてるそうで、コロナ前までは270円だったそうです。値上がり率50%ですがそれでも安くラーメンが食べられます。
屋台文化、角打ち文化が根付く九州。こちらのラーメン店ではおでんもあります。車じゃなければおでんをアテに一杯やりたいですが、地元の人以外は車がなければ来れない場所です。おでんは味が染みてておいしいです。
チャーシュー麺を注文しました。
九州ラーメンってことでトンコツです。チャーシューに海苔、もやし、ネギ、きくらげ。味はあっさり目で獣臭くありません。
とんこつラーメンって麺が少なめで替え玉を頼むのが前提みたいになっていますが、こちらのラーメンは普通盛りでも麺が多め。お腹いっぱいになりました。
家の近くにあれば確実に常連になってますね。残念なのは営業時間がランチ時の3時間だけしかやってないところ。夜営業していたら毎晩おでんで晩酌しにいきます。ちなみに大和田団地のほうにもこちらの系列店があり、そちらは夜20時まで営業しているそうです。
若干偏りはありますが、君津では北九州を味わえます。千葉にあるリトル九州。遊びに行ってみてはいかがでしょうか。そういえば小倉にはちょんの間がかつてありました。もしかしたら君津にもそんなサービスをしているところがあるのかもしれませんね。