ただ恋多き乙女が多いだけであり飛田新地は普通の料亭街
大阪市西成区に来ております。せっかく大阪にいるんだから「大阪らしい場所」は見ておかなければ損です。そんなわけで西成の釜ヶ崎まで足を運びました。でもここはただの街です。西成にはもっと刺激的な場所があるんです。
そうです。かの有名な“飲食店街”飛田新地です。
釜ヶ崎のついでに飛田新地に来たわけであり、飛田新地のついでに釜ヶ崎に行ったわけではありません。でも大阪のこのへんに行ったのであれば行かずに帰るのはもったいないでしょう。
前回大阪に行ったときは松島新地を見て回りました。
その時は「飛田新地って有名になり過ぎてつまんねー」といっていました。たしかに有名になり過ぎてしまい、色々なブログにも良く紹介されています。海外の人にまで紹介されるような場所になりました。以前はテレビにでることもなかったのに、今は普通にテレビで放映されるような場所になりました。そんな散々色々なところに紹介され手垢ベタベタの場所ですが、やっぱここに来たんだったら行くしかないですよね。
まずは商店街を抜けていきます。
動物園前という駅を降りて商店街を歩くわけです。動物園に行くわけではありません。
まぁ「檻の中」という点では似たようなところがあるんだとは思いますが。
地図を頼りにしなければこの場所は迷子になりそうです。狭い路地、似たようなアーケードが続きます。地元の人は分かりやすいんだと思いますが、大阪になれてない人にとっては秘境です。まさにディープタウンといった場所。自虐なのか自らディープストリートを名乗っています。個人的には大阪のアーケード街って好きです。都心でもアーケード街はありますが、なんとなくオシャレな感じを出していて全然地元の人に寄り添っていません。
大阪は地元の人のためのアーケード街といった感じです。
ほら、こんな感じで昼間からカラオケ居酒屋が営業しているわけです。この形態は大阪、とくにこのあたりでよく目にします。恐らくカラオケ居酒屋という店名にしているのは営業許可の問題からなのでしょう。客に接待をするような形式の場合風営法の届出が必要となります。いわゆるキャバクラなんかがソレに該当します。しかしキャバクラを出店できない地域があり、また出店できたとしても営業時間が24時までと規制があります。居酒屋であれば夜間飲食の届出のみで出店ができます。スナックやガールズバーというのは夜間飲食店。しかしこの手の業種は違法営業で摘発にあったりすることの多い業種。そのためその名称は使わず「カラオケ居酒屋」という名前になっているのかもしれません。それとガールズバーとかスナックとかいう名前よりも比較的入りやすい名称です。昼にもかかわらずお客さんが入っています。地域柄、この形が適しているのでしょう。地元の人による地元のためのカラオケ居酒屋です。
出てくるのは中国人のようですが。
でもここはチャイニーズパブでも姑娘スナックでもありません。列記とした居酒屋なんです。たまたま店員が中国人でたまたま仕事の休憩で隣に座ったりするだけ。別に接客をしているわけではないんです。たまたまなんです。
さて、そんな店には立ち寄らずに歩みを進めます。
ここがかの有名な“飛田遊廓があった”跡地です。飛田遊廓の大門です。
今は跡地なので何もないわけですが、以前はこちらに遊廓があったそうです。前に来たときはこんなところは見ませんでしたが、大門の脇にはこの街の成り立ちが書いてありました。
てっきり飛田遊廓は江戸時代からある花街だと思っていたのですが、そうではなく出来たのは大正に入ってからのようです。以前は難波の方に遊廓があったようですが、大火により焼失。その後こちらに移転したそうです。そう考えるとそこまで古い街ではないわけですね。
この大門をくぐるとタダでは帰れないわけですね。大門脇には交番があります。現代の門番といったところでしょうか。
ただ昔とは違って別の場所からも出入りできます。そのため大門で止められるという心配はご無用です。
ここはただの飲食店街です。
たまたま恋多き乙女が多いってだけの場所です。
飲食店といっても出される料理は飴です。出された飴を舐めていたら、なんとなくいい感じの雰囲気に。たまたま居合わせた店員が好きになり、またその店員も客のことが好きになり。気が付けばそのような関係になってしまった。売春とかそういうのではなく、たまたまなんです。
そういえば、大阪のおばちゃんって飴を持ち歩いてますよね。飴ちゃん文化ってまさか飛田新地発祥なんじゃ!?
そんな普通の飲食店ですが、撮影はNGなんです。あくまでも外側から撮影し、店の中の様子は写せません。
いろいろな事情がある人が働いているのでしょう。どのような事情なのかは分かりませんが、撮影はタブーになっているためそこは控えます。
唯一撮影をしても問題ない場所の鯛よし百番というところです。登録有形文化財にもなっている場所でジブリの千と千尋の神隠しのモデルにもなっているところです。大正時代、こちらは遊郭として利用され、現在は“付近の店と同様に”料亭として営業しているみたいです。付近の店では飴しか出てきませんが、こちらはちゃんとした料理を提供してくれます。
飛田遊廓は1916年から。鯛よし百番のある建物は2000年に登録有形文化財となりました。つまり84年頑張ればソレが人身売買の元凶となっていた施設でも文化財として認定されるわけですね。
飛田遊廓は1958年の売春防止法施行とともに解体。現在は飛田料理組合により「ちょんの間」となっておりますが、あと22年間頑張れば登録無形文化財としてこれまで行われていたことが認められる日が来るのかもしれません。
徐々に衰退してはいるものの現在も150軒ほど小料理屋があります。一応新規出店も受け付けているそうですが、業態が少しばかりグレーな部分もあるのでなかなかこの手の新規事業を始める人も少ないのでしょう。かなりハイリスクですからね。でも新規出店が出来るということは営業許可も警察が出しているわけです。警察の見解は「ここは普通の小料理屋」ということで通っていますからね。ここいらにある店が問題ともいえますが、法律がそれに則していないという点も大きな問題なんだと思います。
それでも20年後は文化財として登録される可能性がある地域なんです。
遣り手ババア「おにぃちゃん!こっち!かわいい子おるよ!」
果たしてこのような街が文化財となる日が来るのでしょうか。
ここの料亭で飴を食べても腹は膨れないし、財布は薄くなるばかり。それであれば近くの立ち飲み屋のほうがお腹いっぱい食べれて財布にも優しいです。
今回、西成を周ってわかったことが「西成には釜ヶ崎や飛田新地だけではない!」ということです。帰りがけに通った今池駅近くのアーケードにある立ち飲み屋さん。こっちの方が私には性に合っているような気がします。肉とだけ書かれた肉料理、恐らく牛肉なんだけれども「肉」としか書かれていないので何の肉なのかはわからない。これこそが西成ブランドといったところ。個人的に惹かれてしまいました。まだまだ私は西成のほんの一部しか見ていないようです。また巡る楽しみが出来ました。
でも、やっぱり一度は行くべきである飛田新地です。人生一度きりです。今後どうなるかはわかりません。もしかしたら明日、飛田新地がなくなってしまうかもしれません。その前に一度でいいから覗くことをお勧めします。
囲われた廓の中で何が行われているかはご自身の目で確かめてください。
次は、どこの飲食店街に行きましょうかね。