地獄谷にのんべえ横丁。再開発で消える大森飲食街
こちらイトーヨーカドー大森店です。
現在のイトーヨーカドーがあるところにはアサヒビールの工場がありました。アサヒスーパードライが誕生したのもここだったんだとか。
JR大森駅は乗換えの無い駅の中でも乗降者数が上位でベッドタウンのようなところのようです。実際に駅東側は大きなマンションや集合住宅があり、駅西側の山王地区は高級住宅地だったところで低層階の住居が目立ちます。このように多くの人が住みベッドタウンのようなところですが、駅前には飲み屋街があります。これもスーパードライ発祥地だからでしょうかね。本日は大森の飲み屋街を散策します。
こちらは入新井西公園です。同公園は子供用の自転車の貸し出しをしており、子供が交通ルールを学べる公園となっています。そんな子供向けの公園ですが、その手前にある道は“大人向けの公園”になってます。
こちらは交通公園通りと一本隣にある路地です。
居酒屋、スナックなどの店が建ち並ぶいわゆる飲み屋街で大人向け場所です。そのような飲み屋が多くある通りに交通公園通りと名付けちゃう大田区。大森駅付近にある道は少し変わった名前のところがあり、幼稚園のそばにある通りは幼稚園通り、神社のそばにあるから神社通り。これくらいであればまだマシですが、救急車が頻繁に通るからピーポー通りってところもあります。もう交通公園通りはのんべえが多く集まるからのんべえ通りでいいんじゃないでしょうか。
こちらは大森飲食街ビル、通称のんべえ横丁です。
やっぱりそのまま。
大森飲食街ビルは1966年にできたそうです。
二階建てで各階に25軒、合計50軒の飲食店。長屋のようになっていてこれらすべてつながっています。
ほぼスナック。
築50年以上のビルです。このごちゃごちゃした感じが好きなんですがそろそろ建て替えの時期なのかもしれませんね。
ミスターママ。
名前だけでどのジャンルの店か想像できます。
これだけのスナックが駅前にあって成り立っているようなので結構お客さんも来るんでしょうね。乗換えの無い駅にもかかわらず飲み屋街が成立するってことは地元の人に支えられているのでしょう。
こちらはすでに潰れてるっぽいですが、このフォントの感じ、そっち系の店の雰囲気な気がします。
こちらの居酒屋、なんかよさげですね。
煮込みが名物料理の大衆居酒屋は間違いないでしょう。
大森駅の西側に来ました。こちら側は山王地区と呼ばれており、高台となっています。山の上を登ると低階層の住居があり高級住宅地だったそうです。高級住宅地なのは池上通りの先。手前側の線路沿いは少しチープな街並みが広がっており、そこに飲み屋街があります。
山王小路飲食街ってところで谷底のようなところにあります。
大森は東京湾が目の前にあるため海側は低地ですがJR線のあたりから山になっており、このあたりは崖になっています。大森貝塚もこの崖の部分にありました。
飲み屋街があるのも崖のところ。
ここは大森の地獄谷と呼ばれているそうです。
日本国内には地獄谷と呼ばれるところがいくつかあります。以前大阪の地獄谷にも行きました。大阪の野田にある地獄谷は元々青線街でレベルの低い売春婦が集まったことから地獄の名がついたようですが、大森のソレの名前については由来が違うようです。
こちら、一段低くなっており飲んだ後帰るためにはこの階段を登らなければなりません。べろんべろんに酔っぱらってこの階段を登る。結構地獄ですよね。かつては階段ではなく急な坂道で登れなくなるから地獄谷となったそうです。
飲食街なので飲み屋が多め。スナックとBARがメインのようです。新宿のゴールデン街や思い出横丁のような雰囲気です。ゴールデン街も元々は線路脇でした。山王小路飲食街も似たような成り立ちなのかもしれません。
公衆トイレっぽいけど公衆トイレではなく飲食街の共有トイレがあります。
これがあるってことは各店舗にお手洗いがないのでしょうね。
山王のあたりはもともと高級住宅地で政治家や実業家、文化人などの富裕層が住んでいたそうです。
その目の前にある飲み屋街。小さな店舗がひしめき合い高級住宅地の目の前とは思えないような場所です。でも居心地がよさそうな場所です。大森に住んでいたら地獄谷にあるスナックの一軒や二軒、馴染みの店ができそうですね。
ただ山王小路飲食街は今の街並みの状態を続けられないようです。
大森駅の東口側は再開発され駅前にはバスロータリーがあり拓けてます。しかし西側は交通量の多い池上通りに面し、駅前にバス停はあるもののロータリーにはなっておらず、それが渋滞の原因となっています。
大森駅西口側は70年以上未整備のままでした。そのため大森駅西口広場の再開発が始まるようです。駅前の約530m区間を広げ、駅前にはバス停留所のスペースを設け駅前西口広場をつくるそうです。
西口広場の計画図では地獄谷のあたりがバス停留所スペースと西口広場に変わるようです。山王小路飲食街を残してほしいという声もあったようですが、どうやら飲食街はなくなることが決定しているようです。大森駅西口広場は高低差を活かし、上にオープンスペースの広場を、下ににぎわい空間をつくるそうです。つまり今の賑わっている地獄谷の谷底は酒が飲めないにぎわい空間になるようです。
現在測量中とのことで今年度内に事業認可を取得する予定のようです。用地取得のための期間は概ね10年ってことです。再開発が実質はじまるのはまだまだ先ですが、もう山王小路飲食街がなくなるのは確定しています。用地の取得が始まれば飲食街を照らしてる灯は徐々に消えていくのでしょう。
また昭和の街がひとつなくなります。その前に一度飲みに行ってみてはいかがでしょうか?
ってわけで大森で一杯ひっかけます。行ったのは交通公園通りのほう。
勧めておいて自身は行かないスタイル。
山王小路飲食街は営業が始まるのは少し遅いので、早めに営業しているところを選びました。
ちょっと気になっていた煮込み屋さん。こちらは間違いないでしょう。
同店は元々平和島競艇場内で煮込み店を経営しており、1970年に大森駅前にお店をオープンしたそうです。しかし経営者の高齢化により営業継続を断念。2015年に一度閉店しました。閉店から半年後、都内で飲食店を経営している人が再オープンしたんだとか。経営者は変わりましたが、当時の煮込みは先代から継承しているようです。
牛モツ煮込みは芝浦屠畜場から仕入れた和牛ホルモンを使用しているそうです。牛モツと玉子、豆腐。ほかにも色々なメニューがありましたが完成形のこのもつ煮があれば十分酒がすすみます。この煮込み、おいしいです。罪悪感満載の脂たっぷりモツが入っていますが、それがうますぎるんです。大森に住んでいると毎日これが食べられるんですね。家の近くにあったら頻繁に通いそうです。
大森は飲み屋が結構あり、こんな感じで個性のある店もまだまだあるようです。しかし再開発によりそれらも徐々に減っていくのでしょう。なくなる前にぜひ一度飲みに行ってみてはいかがでしょうか。私も今度は山王小路飲食街にチャレンジしてみます。