山林生活

マニラトンド地区最大スラム「ハッピーランド」と「アロマ」

マニラトンド地区最大スラム「ハッピーランド」と「アロマ」

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私はフィリピンをどちらかというと下に見ていました。いわゆる発展途上国でイメージがあまり良くない。衛生的でないし民度も低い。このようにイメージがあまり良くないのは子供のころにテレビで見たスモーキーマウンテンが理由でしょう。

ホームレスが腐臭が漂うゴミの中でお金になりそうなものを拾い集め生活をしている。そのイメージがありました。あのゴミの山が衝撃的だったのです。
なぜ、ゴミを燃やさないんだろう?と疑問に思っていたのですが、それには理由があるからです。

フィリピンではごみを焼却しない理由は燃やすと大気汚染となるから。

フィリピンは大気汚染がひどく、現在も日中は空が白けていて空気が汚れているのが肌で感じられます。そのような状態でゴミを燃やすとさらに大気汚染が酷くなるため焼却処分をせず自然の力で土に還元させるようです。
微生物の力で土に還させる、いわゆるコンポストのようなものでしょうか。とはいってもフィリピンではゴミを放置するだけ。オープンダンピングという形で、ダンプカーに積んだゴミをゴミ捨て場に重ねて捨てていくだけの処理方法です。
塵も積もれば山となるって言葉の通り、ゴミが山となったのがスモーキーマウンテンです。生ごみが腐敗し徐々に土へと変わるわけですが、その間にメタンガスが発生します。発酵によりガスが発生。それに自然発火して年中煙が上がっていたのがスモーキーの名がついた理由なんだとか。

燃やさずに自然に返す。そうすればゴミが堆肥となり緑が豊かにな土地となる。

このように自然のサイクルに任せるってのは素晴らしいのですが、現実的にはそのようにはいきません。
生ごみなど自然に還るものであればよいのですが、ゴミの中にはプラスチックや瓶、缶などの不燃物や還元しない物質が含まれます。
フィリピンはゴミの分別が義務化されていますが、実際は守られておらず、生ごみもプラゴミも金属ゴミもごちゃまぜで回収されています。
またプラスチック製品を使わないように法規制してレジ袋は紙袋へ、プラの包装紙にも課税されているようですがこちらもうまくいっておらず、プラスチックゴミは変わらず排出されているようです。当然これらのゴミを土に埋めたところで還元されることもなくそれが残ったままになるのです。

ただそれらを回収する人がいるのです。

日本でも川崎区や隅田川沿いに空き缶を集める人がいます。集める理由はそれが売れるから。マニラでも同じようにリサイクル品は売り物となります。スモーキーマウンテンにはゴミを拾い生計を立てる人「スカベンジャー」が多くいました。ゴミの山の中に住み、ゴミの中から売れるものを探す人たちがそこにはいたのです。

しかしスモーキーマウンテンは1995年に閉鎖されました。閉鎖した理由はゴミの許容量がいっぱいになったってのと、イメージ改善など様々あるようですが、そこに住んでいた人たちは立ち退きを余儀なくされました。
しかしマニラ首都圏では一日あたり1万トンのごみが排出されます。つまりそれを処理する場所が新たに必要なのです。

それを担ったのがマニラ首都圏の端っこにあるパヤタス・ダンプサイトってところ。通称スモーキーバレーと呼ばれていました。パヤタスの最終処分場自体は1960年代頃から運用されていたそうですが、スモーキーマウンテンの閉鎖によりそこに住んでいたスカベンジャーらがスモーキーバレーに移住してきたことで世に知れ渡るようになりました。
スモーキーマウンテンと同じようにゴミの山の中に不法に住宅を建てそこに住んでいたそうですが、2000年にゴミの倒壊事故が発生。それにより200名以上(実際は800名くらい)が亡くなったそうです。この事故により一時閉鎖したもののゴミの処理問題は解決していないためすぐに再開しました。

ただスモーキーバレーも2018年に閉鎖となりました。

悪臭もするし見た目もよくない、そしてごみ処理の限界があるってことでフィリピンではごみ処理の手段を変えました。
現在のマニラのゴミ処理はオープンダンピング方式ではなく各所に衛生埋立場を設けゴミを処理しているようです。そのため今後はスモーキーなっちゃらってのはなくなるのでしょう。

このようにごみ処理の方式で翻弄されてきたスカベンジャーの人たち。スモーキーバレーやマウンテンが閉鎖されたら職を失うわけですが、今は新たな形式で仕事をしているようです。

自然に還るゴミは衛生埋立場で処分されるのですが、記した通り分別が守られているわけではありません。その状態では捨てられないため最終処分場に持っていく前に分別作業をしなければなりません。それを担っているのがこれまでゴミ集めをしていたスカベンジャーでした。

ゴミの分別をしてそこから有価物を探し出す。

結局やっていることは同じですが、彼らの仕事によってマニラのゴミ問題は多少改善しているのでしょうか。本日はそれを見るために街を歩きます。

早朝。日の出からそこまで時間がたっていませんが、これよりタクシーに乗り移動します。朝なのにすでに人がごった返しています。マニラの人口が多い証拠。

本日訪れたのはマニラの北側。中心地から10kmほど離れたトンド地区です。

この辺りはフィリピンで一番人口が密集しているエリアで、半数が貧民というスラムが多い地域のようです。スモーキーマウンテンがあるのもこのトンド地区です。

その地区に入る前から少し不安な雰囲気があります。幹線道路沿いですが道の半分がゴミとゴミ処理をする車、掃除人に埋め尽くされています。そして結構な臭い。

こちらにwelcomeと書かれた看板があります。以前はこの下にhappylandと書かれていましたが現在は取り外されています。

すげー怪しさ満点です。「幸福の地」と名付けられたこの場所。しかしハッピーな雰囲気はない感じ。本当かどうかわかりませんが、ビサヤ語で「hapilan」は「ゴミ捨て場」って意味なんだとか。調べたところハピランは「触る」って意味でしたが、別の意訳もあるのかもしれません。まぁここは幸せな雰囲気のある街ではないし、ゴミ捨て場って名が似合うところでもあります。

ネット上でその名前が知れたからでしょうか。現在はその看板がありません。

看板にはwelcomeと書かれていますが、入るのをためらう雰囲気だし、部外者が入るのを好まない感じ。入り口には門番のように地元の人が立っています。私は明らかに部外者だし、さらにはフィリピン人ではないのが外見でわかります。身なりはみすぼらしい感じにしていたつもりですが、私の服装はそれでもこぎれいな格好のようです。ここには身なりを気にできるほど裕福ではない人たちが住んでいるようです。

ハッピーランドはマニラで一番のスラムのようです。スモーキーマウンテンにほど近いこの場所はごみの最終処分場前の中間施設となっており、ここで生分解性のゴミと資源ごみを分けるようです。そのため付近にはゴミが散らかり、結構ヤバ目の臭いがします。糞尿の臭い、肉が腐った臭い、ドブの臭い。マスクをしているのですがそれでも強烈に鼻を刺激します。

今回、この場所に訪れるにあたり、かなり気をはっていたのですが、そこまで危険な感じはしません。

スラムって危険なところのような感じがしますが、ここまで貧困層の多い地域は逆に安全なのでしょう。例えば隅田川沿いのホームレスが集まる地域と、歌舞伎町の最深部では後者のほうが治安が悪いし危険です。強盗だってお金のないところでは仕事になりません。ここではお金のない人たちが身を寄せ合い生活をしているため強盗をしても実入りが少なく、むしろ歓楽街のほうが危険なのでしょう。マフィアがいることもないのでしょうね。わざわざこのような場所には住まないでしょうし、恐らくここはマニラで一番安全な場所なのかもしれません。

とはいってもスラム街であることには変わりありません。私は明らかに部外者。町内でマスクをしている人は一人もいません。このあたりは新型コロナウイルス感染症だけでなく、このコロナ騒動以前から赤痢、腸チフス、デング熱、結核、A型肝炎、コレラ、HIVなどの感染リスクと隣り合わせの地域でした。衛生的ではない上に人口密度が高い、そして満足な医療を受けられない人たちが多く住んでいるのです。そもそもこのようなリスクを抱えながら普通に生活をしているのです。マニラでは一部施設を除きマスク着用が緩和されました。でも高級住宅街に住む人たちは比較的マスクを着用しています。それとは反対にこの辺りでマスクをしてる人はいません。

マスクをしているとすごい目立つため外そうと思ったのですが、臭いが酷いためマスクを外せないんです。私が歩くたびに周りの人が見てきます。歩みを止めるとどうなるかわからず、ただひたすら歩くしかありませんでした。

こちらはハッピーランドの隣にあるアロマ地区です。こっちの方がさらにヤバい雰囲気。地面はぬかるんでいて黒い水、ほぼドブの中のような状態です。この地域に住む人は素足かサンダルかの二択です。
アロマという如何にも香りがよさそうな町名にもかかわらず、饐えた匂いがしてかなりきついです。ハッピーランドと同じようにこれは皮肉でしょうか。

ゴミが積み重なり朝からゴミの分別に住民が勤しんでます。ごみの種類は金属、プラ、廃材などがありますが、なんとなくですが地域によって回収しているものが分けられているようです。アロマ地区の入り口あたりは廃材、ハッピーランドのあたりはプラスチック。こんな感じでしょうか。でもゴミの分別が出来ていないため一緒くたに運ばれ、ここで分別しているのでしょう。

皆がごみ処理で働いていますが住居もあるし食堂もあります。食堂の中にはゴミの中から耐えられる食材を集め、洗って油で揚げて提供する「パグパグ」ってのもあるんだそう。私は早朝にここに訪れ、その時間でも営業している食堂はありましたが、それらがパグパグ屋台なのかどうかはわかりませんでした。そもそも店前に立ち止まることすらできませんでしたからね。またこの臭いの中で食事をするのはしんどいです。

確かにトンドはこれまで見てきたマニラの中でも劣悪な環境でした。マニラ都市部にはホームレスらしき人も歩いていて、コンビニの前にはストリートチルドレンも見かけました。でも街は比較的清潔に保たれていますが、ここは少し不安な空気が漂っています。

フィリピンでは20%が貧困世帯のようで世帯当たりの月収が20000円以下で生活をしているそうです。人口にすると2000万人ほどが貧困世帯に該当します。トンド地区はさらにひどく、一日1ドル以下で生活をしている人が多くいます。そういう人たちが必死にここで生活をしています。

私が少しビビっていただけでハッピーランド、アロマ地区は危険ではありません。

野犬が徒党を組んで歩いているため夜間の立ち入りはリスクがありますが、日中であれば襲ってくることもないでしょう。唯一薬物やってそうなおっさんに怒鳴られましたがそんなのは歌舞伎町でも日常茶飯事です。むしろ深夜の歌舞伎町二丁目や東宝シネマ横のほうが強盗や恐喝など犯罪に巻き込まれるリスクが高いでしょう。でも一応現金は少なく持ち、貴重品は隠し、スマホも一切外に出しませんでした。

道の反対側のほうが危険な香りがプンプンします。こっちは街歩きすら不安レベル。

トンド地区は治安が悪いってことですが、これは「西成は治安が悪い」と言ってるのと同じ。たしかに悪い地域もありますが、それが全てではありません。ハッピーランドが治安の良いところとは言えないのでしょうが、トンドの中では逆にマシなのかもしれません。

こちらはスモーキーマウンテンです。閉鎖されたってことですが山の中腹には家が建ちそこに住んでいる人がいるようです。またこちらもゴミの分別をしているようです。どんなに恐ろしい思いをしても、たくさんの可哀そうな人がうまれても。ゴミから離れては生きられないのでしょう。以前はゴミから有価物を集めるだけでしたが、今では持続可能な社会の一部となっているようです。
ただフィリピン政府はごみ処理について方向転換の時期のようです。
日立造船が現在フィリピン国内で焼却炉建設を計画中のようです。ゴミ焼却をしつつ発電をする施設のようで、フィリピン初のごみ焼却施設です。令和四年度の二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金が通ったようなので近々この話は進展しそうです。

フィリピンマニラのゴミ問題はずっと続いていましたが、これで解決するのでしょうね。ただ、ゴミの恩恵を受けていた人たちは今後どのようになるのでしょうか。マニラは今後、貧困問題が加速化するためそれの解決をしなければならないようです。

ちょっと怖そうな雰囲気でしたが、慣れれば普通の街です。要は住めば都なのでしょう。危険なこともないし、ボッタクリの不安もないです。中心地にはボッタクリのタクシーとかいっぱいいますからね。こっちの方が安全なんです。

行きはGrabを利用しましたがトライシクルで帰ります。
本来であればGrabを利用したかったのですが郊外だからなのか、それとも貧困地区だからなのかわかりませんが全然つかまりません。

タクシーも通っておらず唯一帰る手段はジプニーかトライシクルという側車付きのバイク。ジプニーは乗り方が不明なのでトライシクルのあんちゃんに話しかけました。料金は300ペソ。

ゼッタイボッタクられてる。

ちなみにここに来るのにGrabで300ペソかかっています。ただ帰る手段がこれしかないため値引き交渉はせずに乗ることにしました。マニラを楽しむためには地元の交通手段を理解することですね。どうしても安全面からGrabタクシーを利用してしまっていますがジプニーを理解できれば行動範囲がかなり広がるでしょう。今回の旅ではジプニーに乗りませんでしたが、もし再度フィリピンの地を踏むことがあればその時は乗ってみるつもりです。

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