フィリピンのご当地焼酎 椰子花糖で造った死の酒「ランバノグ」
旅行に行くとその土地の名物料理を食べたいし、そこで飲まれる酒も飲みたいです。
日本国内だと各地に地酒があるため比較的日本酒を飲む機会が多いです。海外だとビールが主になっています。私の行く海外は大体が南国。そして東南アジアなのでビールがメインとなるのでしょうね。例えばこれがヨーロッパであればワインとかになるんだろうし、イギリスだったらウイスキーを飲むことになるのでしょう。
ただフィリピンにだってワインはあるし、他のお酒もあります。
先日はラム酒とブランデーを飲みました。でも、なんか違うんですよね。日本にもワインを生産していますが、なんとなくご当地って感じがしない。ラム酒もブランデーもフィリピンっぽくなんです。なんかフィリピンっぽい酒ないかなーって探していたところ、フィリピンのご当地酒ってのがあるそうなんです。
それはランバノグという酒。
お酒は糖を発酵させてアルコールを出します。日本酒であれば米をコウジカビで糖化させてそれを発酵させます。ワインはブドウの糖分を発酵させます。このように糖分があればアルコールが作れるので、例えば牛乳の乳糖を使ったお酒ってのもあるんだとか。ここ、フィリピンはココナッツの産地です。フィリピンのココナッツの生産量はインドネシアに次ぐ第二位で世界シェアの25%ほどあるそうです。それだけココナッツが採れるのです。
ココヤシはオイルなどに加工されますが、椰子花糖と呼ばれるヤシの木の花の蜜が取れます。糖があれば酒が造れる。つまりココナッツで作ったお酒があるそうなんです。
何となく南国っぽいじゃないですか!
そのお酒はトゥバというもので、糖蜜を自然発酵さえたもの。ココナッツワインに該当するそうです。いわゆるどぶろく的なヤツ。しかし醸造酒でローカル酒なので一般的なスーパーでは売っておらず、多くが自家醸造なんだそう。フィリピンの田舎では各家庭で作られているそうですが、マニラ市内ではなかなか手に入らないんだとか。
そんなわけでトゥバは諦めました。ただトゥバを蒸留した蒸留酒であれば手に入れられそうです。それがランバノグってお酒。
ランバノグはココナッツウォッカに該当するものです。もともとフィリピンではトゥバが飲まれていましたがスペインが植民地化した際に蒸留技術がはいってきたのでしょう。トゥバが自家醸造されるように、ランバノグも自家蒸留する家庭が多かったそうです。ここで問題となるのがメチルアルコールです。
世界では密造酒で死者が出ています。安価に手に入るメチルアルコールを原料にしていたため、それを飲んだ人が死ぬってやつです。以前インドネシアのバリ島でアラックを飲んで複数死んだケースがありましたが、それはこの工業用メチルアルコールを利用したケースでした。
しかしそうではなく、製造の過程で生成してしまうケースがあるのです。林檎や洋ナシなどに含まれるペクチンは発酵の過程で微量のメタノールが発生するそうです。醸造酒であればそこまで多くないのでしょうが、このメタノールが含まれる醸造酒を蒸留したら、当然濃度が濃くなります。
メタノールの沸点は65度、エタノールの沸点は79度なので、最初に蒸留される初垂れを捨てればメタノールは含まれないのでしょうが、その辺の管理がずさんだったり、蒸留する温度が低くメタノールだけ抽出してるケースもあるのかもしれません。
そしてどうやら椰子にはペクチンが含まれるそうで、メチルアルコールのリスクが高いんだとか。フィリピンでは毎年10人程度がランバノグを飲んで死んでいるようです。飲むのに命を懸けなければならない「死の酒」なのです。そんな危険な酒、大丈夫なんでしょうか。
一応頻繁に死者が出ているためフィリピン政府も監視を強化しているようです。しかし密造は横行しておりその摘発は死者が出ない限り確認はできないのでしょう。「怪しいメーカーのものは買わないように」とのことですが、怪しいかどうかの判断ができないんですよね。これは死を覚悟して飲むしかありません。
売っているんですがサイズが700mlのものなんです。唯一これが小さいサイズのランバノグ。お土産品コーナーで購入しました。少量であればメタノールも多少のスパイスとなるはず!
エクスポートクオリティと書かれてあるので大丈夫なはずです。
度数は13%です。ただこちらはランバノグではなく、ランバノグを使ったリキュールのようです。材料はココナッツウォッカのランバノグとダランダンという蜜柑に近い柑橘系の果物。蜜柑リキュールみたいなやつでしょうか。
そして味は蜜柑リキュール。これ結構うまいです。ほぼランバノグの要素はわからないんですが、ポンジュースと焼酎に砂糖入れた感じ。炭酸で割って飲んでも美味しそうですが、私はストレートでいただきました。
そもそもランバノグは焼酎の類い。むしろ穀物を利用する焼酎の方が穀物由来のにおいが残るのに対し、ランバノグは花の蜜を利用しているためラム酒に近い感じなんでしょうね。甘みがあり香りも華やか。そんな感じなのでしょう。今回ビビッて普通のランバノグを飲めませんでしたが、どうやら日本にも輸入されているようです。当然それは「エクスポートクオリティ」のはず。今度ネットで注文して飲んでみたいと思います。
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