スラム跡地に天国を!カジノ建設で消えるスラム街「クロントイ」

本日はバンコク市内のクロントーイに来てます。こちらはMRTのクロントーイ駅です。
クロントーイ駅はクロントーイ地区にあります。
クロントーイ地区は範囲が広くバンコク中心地のプロンポンやアソークなどのスクンビット通りの北側はクロントーイ地区です。

でもクロントーイといえばこの駅の辺りを指します。

こちらは駅近くにあるクロントーイ市場です。こちらは小売店や飲食店向けの市場。
青果、精肉、鮮魚。
ありとあらゆるものが売っており日本では見ることがない蛙やタガメも売ってます。

市場って観光地くらいでしか見ないですよね。日本でも場外市場や朝市はありますが朝が早いしそもそも近くに市場がない。
日本は食材をスーパーで買う人が多いのでしょう。日本じゃこの景色はあまり見れなくなりました。でもバンコクは市場で食材を買うのが一般的でここは朝から活気にあふれています。
どうやらこの市場は24時間開いているそうで夜中でも営業している店があるそうです。

観光客が来るような場所ではない地元密着市場。買い付けに来る多くが飲食店なのでしょう。

いわゆるプロ仕様の市場です。私は金銭的な事情からレストランに行かずフードコートか屋台飯でしか食べてませんがその食材はここで仕入れているんでしょうね。

日本に比べると衛生的ではありませんがインドと比べるとはるかに衛生的です。やはり水がふんだんに使えるのはいいですね。
路上はビシャビシャで確実に濡れます。ここに来るときはサンダルがよいでしょう。
このように市場に多くものがあるのはクロントーイが物流の要だったからでしょう。
築地市場は港のそばにありました。水揚げしたものをその場で売れるし物資を水運で運べるから物資を運ぶのに港は重要拠点でした。そしてクロントーイにも港が近くにあります。

バンコクは海から30kmほど離れています。港って海にあるものですがバンコクは川にあります。バンコク港って川にある港でこちらの線路を歩いていくと行けるようです。
こちらは旅客鉄道ではなく貨物路線で港と都市を結ぶ路線なのでしょう。
バンコクに港ができる話が出たのは第二次世界大戦前の1937年ころ。1932年に民主化したタイは海運業の振興を図るため港湾建設を計画、クロントーイに港を建設することにしました。
港湾建設は大規模事業。多くの労働者が必要でした。そのため他州から労働者が集められたそうです。
政府は港建設に伴い沿岸付近の土地を接収し、そこに労働者のキャンプ地を作りました。
仕事もあり住まいもある。
労働者には良い環境だったのでしょう。
戦争により港湾建設は一時中断するものの1947年にはバンコク湾は開港しました。
開港となれば労働者は仕事にあぶれます。しかし地元に帰ったところで仕事がない。そんなわけで労働者はキャンプ地に居つくようになりました。それにより不法占拠ははじまったようです。このようにしてクロントーイスラムが誕生しました。
港が開港してから20年ほど経ったあと。アメリカがベトナム戦争における軍事拠点としてこの界隈に基地を設置することになりました。
基地を作るってことはまた労働力が必要です。仕事を求め、移民が集まりました。
さらに1970年代に各所にあったスラムを政府が排除することにしました。各所に住んでいた人は移転を余儀なくされクロントーイに集まったそうです。
このようにしてどんどん膨れ上がりクロントーイスラムは東京ドーム15個分。約70万平米の広さになりました。

この路線を進むとスラム街につながっています。というより線路に沿って住宅があります。
線路沿いって汚れているイメージがあります。汚れる理由は客がゴミを捨てたりするからです。
でもこちらの路線は貨物列車専用。そんなわけでゴミが散らからないのです。貨物列車なら頻繁には通らないのでしょう。道じゃないため車が通らないので静か。日当たりもよいし ここは過ごしやすそうです。
実は私ここに来るのは二度目です。
何度も来るような場所じゃない!
でも雰囲気がよいでしょ。
なんかスタンドバイミーの世界が味わえます。
日本でこんなことしたら怒られるけどここであれば怒られない。スタンドバイミーごっこができるんです。

ここの線路沿いはきれいです。
インドでも線路を歩きましたがうんこだらけなんです。それと比べるとかなりキレイ。猫がいるためうんこゼロではないですがすごい清潔感があります。
線路に清潔感を求めるやつなんていない。
でも住むのに最適そう。

ちなみにクロントーイ駅そばには大きなマンションが建っていました。スクンビットから駅二つしか離れてないクロントーイ。めちゃくちゃ利便性がよいのでしょう。この界隈はどんどん開発がされそうで線路沿いの景色は見れなくなるかもしれません。

線路を抜けた先、こちらはアットナロン通りです。ここは駅から少し離れたところです。バンコクはメトロが今でも延伸していますが市民の主な交通手段はバスです。渋滞で全く動かなくなることが多々ありますが安い値段で移動できるバスは使い勝手が良いです。別に駅のそばでなくても不便ではないのでしょう。

この先がクロントーイで一番混雑してるところです。
人口10万人以上が住む住宅密集地、クロントーイ。
多くが地方から転居してきた人が住んでおりまたカンボジアやミャンマーの移民もいます。さらには不法移民も住んでいる地域です。
バンコクは大小約2000のスラムがありますがその中で一番大きいスラムがクロントーイです。

ここがスラムの中のメイン通りでしょうか。
私は今回インドからバンコクに来ました。インドでも散々スラム街を巡りましたが、なんかバンコクのスラムって普通の街に見えるんです。バンコクは急速に発展しスクンビットのあたりは高層ビルが出来ています。そこと比べるとここは昔のままの状態です。昔のままってだけで別にスラムっぽくはない。

おそらくこのあたりは市営住宅でしょう。
建物は古そうですがキレイに保たれています。やはりインドとは異なります。
スラムってもっとゴミが散らかってたりうんこ転がってたりするじゃないですか。

こちらはフィリピンマニラのトンドスラムです。ゴミだらけで汚い感じ、これがスラム。

こちらはインドデリーのスラムです。ゴミだらけで汚い感じ、これがスラム。

タイ、めっちゃキレイなスラムなんです。なんかキレイなジャイアンみたいな言い方ですがタイのスラム、スラムじゃない!
インド行ってからスラムの基準が厳しくなってる。
スラムには定義があるようで国連の場合は、
1.改善された水へのアクセス
2.改善された衛生施設へのアクセス
3.住み続けられる保証
4.住居の耐久性
5.十分な生活空間
これのどれか一つでも欠けたらスラムなんだとか。国連の基準はだいぶ緩めです。
ちなみに私の住まいは定期借家です。
3の住み続けられる保証が危うい。
また、古いため震災には耐えられないようです。
二つも欠けてる!
俺んち、国連の基準だとどうやらスラム。
日本人、1、2はクリアできそうですが3、4、5はクリアできない人、結構多そう。日本にはスラムが存在しないと思ってたけど国連基準だと結構ありそう。
ちなみに日本にはスラムの基準がないんだとか。基準がない理由は「スラムがないから」。
いや、なんかありそうな感じだけど...。
国連基準だとクロントーイはスラムになります。
タイ国内のスラムの定義は、人口が密集し不衛生で住環境が劣悪なエリア。この定義の場合、クロントーイはスラムになります。
バンコク市内には2070カ所スラムがあり約200万人がそこで暮らしているんだとか。
タイ基準でもクロントーイはスラムですがゴミとか転がってないし街並みがキレイなんです。
日本にもこんな感じの街並みはありそうですがここはスラムなのでしょう。でも私の中での基準だと違うんですよね。

スラムってこんなとことか。

こんなとことか。

こんなとこ。

これ、日本だった。しかも全部川崎。
スラムを満たした条件、日本にいっぱいある!
なんだったら日本の方が酷い気がする!

こちらがクロントーイの最深部です。
細い路地が続き、その中に小さな家があります。下水が垂れ流しの状態のためニオイがしますがなんか昔の日本っぽい感じです。

バンコクの中心と比べると差がかなりあります。落差が激しいので汚く感じますがごく普通の住居でスラムっぽさがない。ただここは川岸の近くです。バンコクは雨季の期間中は洪水が発生します。市街地でも冠水は頻繁に起こり当然川沿いであるここも冠水するのでしょう。

床下は水が流れています。
常時床下浸水。

冠水すると酷い状態になりそうです。下水まみれで衛生的ではない。これがスラムといわれる所以なんでしょう。

こちらはスラム児童財団です。
この界隈にはNPO法人が複数あります。
貧困は教育の機会を奪います。
教育の機会を奪われると貧困が繰り返されます。子供が貧困から抜け出すための施設です。この手の施設があるってことはまだ必要な人が多くいるのでしょう。

スラムの雰囲気は弱めのクロントーイですがほかのところよりか安く住めるのでしょう。そのため低所得者が集まる地域です。
ちなみにタイの低所得者割合は約10%。人口7000万人に対し700万人います。
貧困者は国民福祉カードというものをもらえます。カードは日用品購入の割引や列車の割引など生活に最低限必要なものの割引ができ、また毎月一定額の電子マネーが受け取れます。
人口の10%が低所得者。つまり10人に1人が貧困者なのです。先進国の仲間入りをすると言われるタイでもこのように貧困者が多くいるようです。なかなか貧富の差の改善は難しいですね。とくに発展途上国ではその差は激しいのでしょう。
ちなみに日本の低所得者の割合は15.4%。
6人に1人だった。
他国の心配している場合じゃねぇ。
日本は発展どころか後進してる!
日本の生活保護の利用率は1.6%程度。それと比べるとタイの方が割合が高めです。でも生活保護に至らなくても相対的に貧困といわれる世帯は多くありそれが15%もいるんです。
先進国の中では最悪な数値。日本の未来はだいぶ暗いです。

本日はバンコクの最大スラム。クロントーイを巡りました。ほかの国のスラムとは違いキレイな街並みです。日中なら危険は少ないですがここはスラムです。訪れる場合は注意した方がよいでしょう。ただこの景色はもうじき見れなくなるかもしれません。クロントーイは再開発地区に指定されてるからです。ここにアミューズメント施設を建設予定なんだとか。
観光大国のタイですが、現在旅行者が減少しています。コロナの影響もあったのですが物価ダタ過度の影響もあり観光客が激減。中国人観光客は日本が旅行先となり、欧米人はアフリカが旅行先となったようです。このようにしてタイの人気がなくなりました。
観光収入に頼っているタイなので現在本腰を入れて観光客を呼び戻そうと新たな施策を打とうとしています。
タイでは2024年にギャンブルが合法化されました。
規制が緩和されたことで市内にザ・ロイヤルサイアムヘイブンというカジノやホテルを備えた娯楽施設を建設予定です。その建設予定地にクロントーイが含まれていました。
バンコク港を潰し娯楽施設をつくる。
バンコク港は河川にできた港。
水深が浅く大型コンテナの係留が困難なためバンコク湾に面したレームチャバン港に順次機能を移設してます。現在はレームチャバン港がメインの港となっておりバンコク港は不要となりました。そのためカジノ建設予定地となったのでしょう。
バンコク港を潰しカジノとホテルを建てる。つまり港がなくなることになります。港がなくなれば港湾業務がなくなる。
この界隈には港で働いている人もいます。その人たちの職はなくなるのでしょう。また港がなくなればこの路線も不要となります。
そしてここも建設予定地に含まれているなら立ち退きとなるのでしょう。

立ち退きも何も元々は国の土地だったのですがタイも日本同様に時効取得があるのでしょうか。立ち退きや補償など今後はこの問題が加速しそうです。
娯楽施設ができるのは2039年。まだできるまで時間がかかります。カジノができるまでこの景色は眺められそうです。カジノができるころには、もうここはスラムじゃなくなるのでしょう。
スラム排除の一環でもあるカジノ建設ですがスラムのあった場所が金持ちが遊ぶところになる。なんとも不思議な光景です。でもスクンビットから駅二つしか離れておらず歩けない距離でもないクロントイ。ここに舵のが出来れば観光客も期待できます。
日本のカジノは2029年にオープン予定なのでバンコクはその後になりますが、こちらは首都です。観光地としての基盤はすでに出来上がっています。
バンコクのカジノの方が人気になりそうです。これまではバックパッカーの観光地でしたがこれからは金持ちを対象とした観光地になります。バンコクに観光客が戻ること間違いなしです。それにしてもスラムそばに天国をつくるなんて皮肉が効いてます。







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