死の川と揶揄される「パシッグ川」のフェリーで中華街へ
マニラの交通渋滞はひどく、インドのベンガルに次いで二番目なんだとか。渋滞の酷さとしては目的地まで30分かかる道が渋滞で50分以上かかるくらい混んでいるんだそう。実際に現地に滞在していると朝夕のラッシュ時は全然車が動かず、徒歩の方が早い状態です。30分の道のりが50分かかるって統計では出ているようですが、おそらくラッシュ時はそれでは済まないのでしょう。
このように渋滞が深刻化するのは交通網が未発達なのと、貧困が原因のようです。
マニラ市内には一応鉄道がありますが、路線は少ないです。都市部を走る三路線と、南に向かう国鉄だけ。首都圏を走る鉄道は本数も多いようですが限られた区間しか網羅していません。そのため中心地での移動はタクシーかジプニーという乗り合いタクシーが主な手段となります。ジプニーはルートドライブをしており、目的地に行く車両を止めて荷台に乗るスタイル。低価格のため市民の足となっているようです。マニラ初心者にはなかなか使いづらいシステム。
路線バスがあればよいのですが、そういうのはなくジプニーがそれを担っているようです。ジプニーはディーゼル車のようで、マニラの公害問題の一つのようです。近々規制が入るということですが、公共交通機関が未発達な状態では規制もできず、今の状態がズルズル続いているんだとか。
そして貧困者が多いのも原因の一つです。日本と同じように地方では仕事がありません。そのためフィリピンもマニラ一極集中になっているようです。しかしマニラの中心地は地価が高く住めない。そのため近郊に住むわけですが、日本のように電車があるわけではないため移動手段は車となるのでしょう。これが交通渋滞の原因となっています。例えば日本で神奈川、千葉、埼玉から都心に向かう電車が無く、皆が自動車で出勤した場合どうなるでしょうか。おそらく10km程度の距離で3時間くらいかかるでしょう。時速3.3kmなら徒歩の方が早いですよね。マニラではこのように日々渋滞があり、損失額は一日あたり80億円程度なんだとか。当然それを解消しようとフィリピン政府も尽力しているようで、現在都市部に地下鉄をつくっているそうです(当然のように建設には日本も絡んでいます)。地下鉄ができれば空港から電車で中心地に行くこともできるようになるでしょう。
地下鉄ができるのは二年後です。まだそれまでは渋滞に悩まされなければなりません。
こちらはパシッグ川です。東南アジアで見る川って感じですが、こちらは別称「死の川」と呼ばれているようです。
マニラには多くの人が住んでおり、かつてからゴミ問題があります。日本のようにごみを焼却するのではなく、生ごみは自然の力で土に還すのだとか。しかしそれが追い付かずにゴミ処理問題が発生しているそうです。そしてごみ処理業者の中にはパシッグ川に不法投棄をする業者もあるようです。当然のように工業用水、生活用水は垂れ流し。さらには近隣に住む下水道が整備されていない地域の人は、川で用を足すらしく、川底に汚泥がたまりかなり汚く、生物が生きられない環境のため「死の川」と呼ばれているんだとか。
汚い川といっても結構な水量のある川です。かつては交通網の一つだったのでしょう。
そしてそれは今でもその役割を担っているようです。
船であれば渋滞を気にする必要が無い。これは水運都市バンコクで知っています。川が発達しているところはフェリーが市民の足となります。マニラでも同じように市民の足なのでしょう。本日はパシッグ川をクルージングします。
こちらはフェリー乗り場です。これより川を下って中華街まで行きます。
フェリーは一時間に一本のペース。乗車には身分証の提示や連絡先の記入が必要です。料金は現在無料で運航しているようです。調べたところ、日本の国交省的なところの予算枠に余裕があったそうで、フェリーの運賃を税金で補うようにしたんだとか。若干きな臭い話ですが、フェリーを使用する身としてはただで乗れるのはうれしいですね。このように税金が充てられているため帳簿上利用者の情報が必要なのでしょう。普段は50ペソくらいかかるようです。
フェリーの乗車時間は40分ほど。渋滞時でない限り車の方が早そうです。
でも異国にきて船で遊覧するなんてなんて素晴らしいのでしょうか!
日本の東京もかつては水運都市で四方に川が流れていました。下町に河川が多いのもそれが理由です。おそらくマニラもこの川を交通網として利用していた時期があったのでしょう。川沿いってのはその街の成り立ちを見ることができます。船から見る景色、楽しもうと思います。
まさかのすりガラス。
おそらく以前は窓があったのでしょうが、割れたのでしょうか。プラスチックの窓になっています。外が見えるところに座りたかったのですが、タダで乗れるフェリーのためほぼ満席状態です。
フェリーでの撮影は基本的に問題ないですがPUPってところからLawtonって乗り場までは撮影禁止のようです。調べたところこの区間内にマラカニアン宮殿という大統領官邸があるため警備上の理由から撮影禁止となっているようです。
この停留所の先にマビニ橋ってのがあるんですが、そこから撮影禁止エリア。この区間、フェリースタッフの人は少しピリピリしていました。
河口に行くにつれ、橋げたの下や河川敷沿いに人が住んでいるのを見かけます。
多摩川の河川敷、隅田川の河川敷のように川沿いには社会から見捨てられた人たちが身を寄せ合い生活をしている光景を目にします。このように河川敷に多い理由は単純に人が住むのには適していないからなのでしょう。
川が氾濫すれば家財だけでなく自身も流される危険のある場所です。そのようなところには家が建たず人も寄り付きません。人が住まないからこそ、人が住むのです。貧困層の多いマニラではパシッグ川の川沿いに住む人が多いようです。とくに河口のほうは町が形成されるくらいです。そこでは河川から流れてくるゴミ、マニラ湾に流れ着くゴミから有価物を探し、それで生計を立ててる人が住んでいるそうです。
死の川と呼ばれ、工業用水が流れ生物が生きれないような川のそばに住み、そこで拾うごみを集め食いつないでいる。そこに住む人たちにとっては生きるために必要な川なのでしょうね。
今回そちらのスラムも見に行きたかったのですが、下調べが足りず辞退しました。次にマニラに行く際はパシッグ川の河口を見に行きます。
船で一時間ほど下ると中華街のあるフェリー乗り場に行けます。ちなみに一つ手前の乗り場は「キンタマーケット」という名の市場です。バヌアツのエロマンガ島、オランダのスケベニンゲンと同じようにゼッタイ日本人は声に出して言いたい名前。
この金玉の近くに中華街があるそうなんです。
私は昨年バンコクに行った際、市内にある中華街ヤワラーに行きました。その際ヤワラーは世界で一番古い中華街と話していましたが、どうやらそれは間違いで、マニラにあるこちらの中華街が世界で一番古い中華街なんだとか。
中華街らしき門があり中華料理屋もありますが、横浜中華街のような様子はありません。
そもそも中華街の中に教会があるってのが異色です。
マニラにあるチャイナタウンはビノンド地区と呼ばれるところにあり、こちらができたのは16世紀末、スペイン統治時代にカトリックに改宗した中国人が住んだところのようです。ちなみに対岸にはスペイン人が住んでいたイントラムロスがあり、近くにはカトリックに改宗し、鎖国の際に追い出された日本人が移住していた日本人街もありました。
かつては中心地だった場所ですが先の大戦で壊滅状態に。ビノンド地区の隣は多くのスラムがあるトンド地区ですがビノンド地区は活気があります。ただ少しばかり治安が悪そうな雰囲気があります。
日中なので人の往来が激しいですが、少しわき道をそれると治安が悪そうな感じ。実際に夜になると強盗事件や誘拐事件が発生する地域なんだとか。とはいってもそもそもマニラはどこもかしこも夜になれば危険です。注意しておくのは別にビノンド地区に限ったことではないでしょう。
中華街を色々見て回りたかったのですが、ちょっとお腹の様子がおかしくなってしまいました。そのため早々に引き上げます。行きはフェリーでしたが帰りは電車で帰ります。電車の方が早いし楽ちんです。
どうやらビープカードという日本でいうSuicaのような交通系ICカードがあるようですが、現在生産が追いついておらず売り切れのようです。カードが無いと切符を買うのに窓口に並ばなければならず、その窓口が結構混んでるんです。
現在マニラに住む人たちの足はジプニーですが、地下鉄ができれば電車の使い勝手がさらによくなるでしょう。次に来るときはもっと楽に移動できるようになってほしいです。