山林生活

【豊かな青春、惨めな老後】冷気茶室にソムタム嬢。ヤワラーの売春窟は今

【豊かな青春、惨めな老後】冷気茶室にソムタム嬢。ヤワラーの売春窟は今

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本日宿泊しているのはバンコクにある中華街、ヤワラートです。

私はこれまでアソークを中心に行動していました。そこを起点に市内を巡っていましたが行って帰ってくるだけで他の街との位置関係があまりわかっていませんでした。でも今回の滞在でバスや電車を使い、そして滞在先を変えてみたおかげで距離や位置関係をある程度把握できました。

ヤワラーはクルンテープ駅の近くでインド人街のそば。
現在の中心地から離れており、いわゆる旧市街、王宮にも近い。そしてバックパッカーの聖地・カオサンロードのそば。

バンコク到着。カオサン通りでボッタクリ飯を食べる
バンコク到着。カオサン通りでボッタクリ飯を食べる

バンコクへは過去に二回来てます。今回で三度目です。 ほかの国と違いバンコクは観光大国で観光客にとって使

カオサンは電車が走っておらず少し不便な場所です。それなのに旅行者に人気のスポットとなっています。
カオサンがバックパッカーの聖地となったのは1980年代ころ。ネットの普及していなかった当時、ここは情報交換の場だったそうです。自然と人が集まり安宿ができる。そのようにしてバックパッカーの街になったそうです。ただバックパッカーの皆が皆カオサンに集まったわけではなく、どうやら日本人のバックパッカーがいたのはカオサンではなくヤワラーのほうだったようです。

ヤワラーに中華街ができたのは1700年代後半でここは世界で最も古い中華街といわれているそうです。1900年代前半には100万人以上の華人が住んでいたんだとか。
中国人が海外に移住っていうと現代だと富裕層をイメージしますが、その当時は中国国内で生活が厳しい人たちが生きるためにタイに移住してきたそうです。

廃品を集めたりその手の仕事が多かったのでしょう。それが理由かわかりませんがこのあたりには自動車の中古部品を扱う工場が多く見られます。

こういうところワクワクしちゃいますね。なんかお宝が眠ってそうです。

この手の仕事は男性がやります。
生活をするために女性が稼ぐとするのであれば「マッサージイカガデスカー?」的な店でしょう。それは中国移民も同じでした。

ここヤワラーはその当時売春窟だったそうで冷気茶室と呼ばれる店が軒を連ねていたんだとか。冷房のきいた喫茶店。表向きは飲食店ですが実際は売春が行われているところでした。要は西川口にあった本サロ的な店。ただ日本のその手の店とは違い、そこで働く女性は、生活のために売られてきた人、隣接する他国から誘拐されてきた人など江戸時代の遊廓のようなことが行われていたそうです。
そういうのが1980年代でも当然のようにあったそうなのでおどろきです。まぁ当時でも違法な部分はあったのでしょう。誘拐自体が違法だし、中には小さな子供も働かされていたそうです。そのため非合法組織がその仕事を請け負っていたんだとか。

当然その手の組織が介入すれば売春以外にも賭博や薬なども扱っていたのでしょう。ヤワラーは売春だけでなくドラッグも簡単に手に入る。この辺りはそういったダークサイドの側面があり、そういうのが好きな日本人が多く集まったようです。

でも現在、冷気茶室はなくなっています。
バンコクは一時期エイズが蔓延していました。性交渉だけでなく注射器の使いまわしにより感染者が急増したんだとか。そのような状況だったため警察が取り締まりを強化したそうで、それによりすべて自然消滅したそうです。また置屋らしき店も今はありません。
現在はごく普通の町ですがバンコクの中心地に比べるとちょっと廃れており、肌感覚ですが治安が悪そうな感じがします。

こちらはジュライロータリーです。ここを中心に売春窟が広がっていたそうです。

ここは日本人が定宿として利用していたジュライホテル跡地です。ホテルが閉鎖されたのが1995年。建物はまだ残っています。20世紀の終わりころにはもう衰退しはじめていたようですね。繁盛していた時期は1980年ころ。その当時20代半ばだった人は今だと65歳前後ってことでしょうか。

以前はここにジュライホテルと書かれていましたが、ペンキで塗られていました。もうジュライホテルの名残りは残っていないようです。

この辺りにはジュライホテル、楽宮大旅社、台北旅社という日本人バックパッカー御用達の安宿があったそうです。一泊数百円で泊まれるため一カ月宿泊しても三万円以下。安宿なので質は悪いですが、最低限の生活は出来ます。そしてタイの食費は安いです。そのため若年層に人気で20代くらいの社会に出ていない、もしくは社会に出ることができなかった人が多く集まっていたそうです。一時は日本人だらけで満室の状態が続いたんだそう。

こちらは楽宮大旅社の跡地。うっすらと看板の字が残っています。
こちらのホテルの壁にとある落書きがあり、それが日本人バックパッカーの心に刺さったそうです。

豊かな青春、惨めな老後

青春を謳歌しよう、人生は一度きり、大切な時間だから悔いなく過ごそう。若い人に向けてこのような言葉を投げかける人がいます。たしかに大人になると社会とのしがらみや日常生活の維持、体力的な問題から若いころにできたことができなくなってしまいます。若いころは勉強ばかりで何もできなかった人が「あの時やっておけば」と悔やみ、今の若者へ助言をしているのでしょう。では、若い時に青春を謳歌した人はどうなのでしょうか?

若いころに好きなことを好きなだけやり、それが糧となり大人になって成功した人もいるでしょう。しかしそのような人はほんの一握りで、ほとんどの人が若い時に経験を積まなかったせいで大人になって苦労しています。

そうなんです。青春を謳歌した大体の人はキリギリスなんです。

1980年当時、ホテル代も食事代も安いバンコクは日本人の若者にとって天国でした。少ないお金で性欲も快楽も満たせたので楽しい日々だったのでしょう。しかしそんな自堕落な生活をしていればある程度の年齢になって何もできなくなります。

若いころにしっかりと勉学に励み、知識や能力を身に着け足元を固めていれば大人になっても揺らぎない生活ができますが、若いころに何もせず欲望のまま過ごしていれば大人になっても何もないため誰も見向きもしません。

バンコクで女買って薬キメてました。

誰にも話せないし話したくないでしょう。若いころに何も得なかった人は、大人になって何も与えられないのです。もちろんこのような生活をしていても成功した人はいるのでしょう。でもそれはほんの一握りでほとんどの人が“惨めな老後”を過ごしているのでしょう。

「バックパッカーで世界を旅行して自分探しをする」なんて言っている人がいますが、そもそも海外に行かないと自分が探せない人はその時点で終わってますし、世界を旅行って言っても所詮は他国の日常を少しみるだけに過ぎません。これが未踏の地に足を踏み入れるとかであれば意義があるのでしょう。しかしやっていることは飛行機でインフラが整った物価の安い場所に行ってるだけなんです。そんなんでは何の糧にもならないのでしょう。豊かな青春とはただ単に身勝手に過ごしているだけ。つまり待っているのは厳しい現実です。その当時タイで自堕落な生活をしていた若者は、今では老害と呼ばれる人になっているのでしょう。

タイ=売春・ドラッグの図式ができたのは現在60歳以上で当時タイにぞっこんだった人たちのせいです。

その当時活躍したホテルもなく、冷気茶屋もなくなりました。ちょっと中心地から離れた普通の町に変わったんです。
でも、でも、なんかすごいあっちこっちから視線を感じるんです。そしてなんかタイ語で声をかけてくる女性がいるんです。

通り沿いにはプラスチック製の小さな椅子が等間隔に置いてあります。年配者が疲れた時に座れるようにおいてあるわけではありません。この椅子には女性が座っており、目の前を通る男性に声をかけているのです。つまりアレです。

立ちんぼならぬ座りんぼってやつでしょうか。
街の中を一周してみましたがけっこういます。年齢はばらばらで40過ぎっぽい人もいますが20代っぽい人もいます。見た目はアジア顔の人が多いですが、インドっぽい人もいました。声をかけてきますが椅子から立ち上がることなく、しつこく客引きはしてきません。

システムは一切わかりませんが、いわゆる一発屋的なヤツで交渉成立すれば近くのホテルに行く感じなんでしょう。私娼っぽいですが椅子が用意されているためもしかしたらその手の組織が差配しているのかもしれません。

タイも日本と同様に売買春は犯罪ですが日本と同じように成人であれば罰則はありません。厳しいのは児童買春だけです。また日本と同じように売春あっせんや管理売春は罰則がありますが、日本の様に厳しくなく黙認されている状態です。そのためカラオケスナックは連れ出しパブとなり、BARはゴーゴーバー、マッサージは性的な店となるのでしょう。
このようにどこでも売春が行われているため、日中から娼婦がいても周りは気にしないし、とがめられることもないのでしょう。ただ、こんな昼間っから客引きをして、はたして人は集まるのでしょうか。

夜20時。ヤワラートの中華街のあたりです。
コロナ蔓延が嘘のような人だかり。東洋人はマスクしているのに対し西洋人はマスク無しの人が多いです。この様子だとタイも感染拡大しそうですね。しかしワクチンができたおかげで重症化しづらくなっているのでしょう。コロナは風邪という扱いになる日も近そうです。

このあたりは人も多く健全な街並みです。

しかし少しずれると雰囲気が変わります。

不安アンテナがビンビンです。ヤバい人が出てきてもおかしくない感じ。
基本的に海外では日が暮れたら外出しないように心がけています。出かけるとしても近くのコンビニくらい。それでもバンコクの中心地は人通りが多いため夜でも外出できます。しかし、ここはちょっと危ない空気が漂っています。

ジュライロータリーの周りには日中にいた売春婦がまだいます。ここでどれくらいの稼ぎがあるんでしょうか。まぁ多くの娼婦がいるってことは需要があるのでしょう。

夜の街歩きは怖いけど、夜にしか見れない景色があります。とくにこの辺りの雰囲気はアジアっぽくてサイバーパンクっぽくてよいですね。

クルンテープ駅前に来ました。駅前は静かですが駅から道を渡った反対側には地べたにゴザを敷いて座っている女性がいます。

どうやらクルンテープ駅前にはソムタム屋台がありそこで働くソムタム嬢ってのがいるんだそう。
ソムタム屋台って、なんとなくたこ焼き屋みたいなテイクアウト専門店っぽいですが、そうではなくソムタムを酒の肴に店員女性と話しながらその場で飲むってのがクルンテープ駅前にあるソムタム屋台の作法のようで、要はキャバクラのフルーツ盛りがソムタムになった感じでしょうか。屋台のキャバクラってのは日本に無いですがそういった類の店のようで、ゴザを敷いて営業していることからゴザバーと呼ばれているそうです。

ここで振舞われる酒はヤードン酒という薬草酒。
タイの北部、イサーンではラオカオ(タイの焼酎)の自家蒸留が盛んに行われています。自家蒸留なので常圧蒸留でクセが強く飲みづらいのでしょう。その臭みを隠すために薬草を漬けて味を調えているようです。要はタイのジンスピリッツってところでしょうか。
各家庭で製造方法も材料も異なります。また中にはヒキガエルの血入り(毒)のヤードンが販売されていてそれを飲み死んだ人もいるようです。焼酎に漬けて飲むようなヤツなので、中にはチンチンおっきくなっちゃう系の薬草酒もあるっぽいし、ここのゴザバーではそういうの振舞われていてもおかしくないですね。

ソムタムを食べてヤードン飲みながらイサーンの田舎娘とくっちゃべる。そういった楽しみ方もいいのかもしれませんね。

もちろんソムタムが気に入ればテイクアウトできることも。

そうなんです。キャバクラでもアフターや“まくら”といった接客スタイルがあるように、ゴザバーでも春を売るソムタム嬢がいるようです。

クルンテープ駅は東京駅というより上野駅のようなところで東北から上京して降り立つ最初の駅。そのような場所で東北からきた田舎娘が生活のために春を売るそうです。一時期はかなりの数のソムタム屋台があったそうですが、警察の取り締まりやコロナの影響で現在は激減しているんだとか。そんでもってレッドラインの開業。まだクルンテープ駅は現役で使われていますが、徐々にターミナルとしての機能はバンスー駅に移動し、人の往来は少なくなるのでしょう。そうなるとゴザバーも見納めになるかもしれませんね。

消える歴史もあれば残る歴史もあり、新たに生まれる歴史もある。
ヤワラーはかつて売春街でしたが、その名残りはまだまだ残っているようです。そしてそこで働く人は搾取される側の人間です。貧富の差が激しい地域ではいつの時代もこのような状態になります。タイでも貧富の差は変わらずあり、コロナや戦争によってその差は広がる一方なのでしょう。このような世界情勢ではここに新しい冷気茶室ができる日も近いのかもしれません。

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