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汚れた運河の片隅 スエンタム運河流域の黒い川

汚れた運河の片隅 スエンタム運河流域の黒い川

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こちらは一区とビンタイン区の区境にあるニエウロック・ティゲー運河(kênh Nhiêu Lộc – Thị Nghè)です。
ホーチミン市はサイゴン川に沿って街が形成されていますが、古くは運河が交通手段の一つだったのでしょう。
一区にあるホーチミン人民委員会庁舎からサイゴン川まで続くグエンフエ通りってところがあり、現在は通りに沿って公園があるのですがそこもかつては運河だったそうです。このようにホーチミンは多くの運河がありかつては交通網として利用されていたのでしょう。

こちらはティゲー市場の場外市場みたいなところ。
ティゲー橋のそばの川沿いで生鮮食品が売られています。日本で青空市場のようなものはありますが、海外のとは少し違いますよね。

路上に魚もれちゃってますし。
一般的な魚もありますが、ドジョウやナマズ、ウナギといったニョロニョロ系のものが結構売っています。恐らくウナギは日本よりも安く買えるのでしょう。そしてウナギのかば焼きの味は万国共通で美味しいと感じるテリヤキ味です。この食べ方が世界中に広がれば、絶滅危惧種のウナギが食べられなくなるのでしょうね。

フィリピンの川と比べるとだいぶきれいです。
川は護岸工事がされており、河川敷沿いを散歩する人が多くみられます。また植林もされていて日中でも日差しがさえぎられ過ごしやすいです。

東南アジアの川沿いってゴミが酷くて汚く、ホームレスがいたりスラムが形成されているってのがデフォルトですが、ホーチミンは発展しているためそのようなことはないのでしょう。とはいってももともとはティゲー運河もかつては汚い川だったそうです。

1985年より前、この川はキレイで魚も取れて泳ぐこともできたそうですが、ベトナムの発展とともに川は汚れていきました。
1986年のドイモイ政策導入以降、ベトナム経済は急速に発展。ホーチミンは都市化が進んだようですが、経済発展とは裏腹にインフラ設備は整わず、大気汚染やごみ処理問題、下水道設備不足による水質汚濁が深刻化しました。さらに地方からホーチミンに移住する人が増え状況は悪化したそうです。
浄化設備を有さない家屋が多く、生活排水を垂れ流し、ごみが捨てられ、泳げるほどきれいだった川は不衛生な川になりました。運河はヘドロがたまりゴミでせき止められ、ただでさえ標高の低いホーチミンは川はゴミのせいで雨が降ると増水して頻繁に浸水被害があったようです。

川は汚れ魚が住めず、泳ぐこともできなくなり、いつしかこの川は「黒い川」と呼ばれるようになったんだとか。

2000年以降、日本の政府開発援助により運河の改修工事や下水処理施設を建設したそうです。それにより河川氾濫のリスクは軽減され、徐々に水質はよくなっているのでしょう。生物がいない黒い川と呼ばれていましたが、今は魚が泳いでるのを見ることができます。
休日は川沿いをのんびり散歩する。そういった過ごし方をしている人が多いようです。

ただ脇に流れる川の様子は少し異なります。こちらはスエンタム運河(Rạch Xuyên Tâm)流域のカウボン運河(Rạch Cầu Bông)です。川沿いに家が建っているのが見えます。

人の住む場所じゃないから、そこに人が住む。

ホーチミンはかつては雨が降ると河川が氾濫する地域でした。そのため川の近くは住居として好ましくない場所でした。そのような場所にしか住めない人たちが、家を建てそこに住みだしたのです。おそらく地方移住者の人たちなのでしょう。そしてその大半は不法占拠者。大きな運河を改善したとしても、このように脇にそれるとまだ“手つかずの不自然”がそこにあるのです。

こちらは運河のそばのブイフーギア通り(Bùi Hữu Nghĩa)です。通り沿いには多くのバイクや自転車の修理工場が目立ちます。

異常な数の修理工場。それだけ需要があるのでしょうね。
ベトナムは多くのバイクが走っており、市民の足となっています。実際に私もバイクタクシーでここまで来てます。ベトナムは車が入れないくらい狭い路地が多いため、取り回ししやすく狭い路地でも入っていけるバイクが重宝するのでしょう。世帯当たりのバイク所有率は86%もあるそうで、タイに続き世界第二位のバイク保有国なんだとか。16歳以上は50cc以下の原付に免許不要で乗れるってのも所有率が高い理由の一つになっているのでしょう。

見たところホンダ車が主です。WAVEはベトナムホンダが製造するバイクで、スーパーカブと同じアンダーボーンフレームです。私もかつてはタイホンダのDASH125に乗ってました。都市部では道が舗装されていますが、まだまだ地方に行けば未舗装路も多い東南アジア。そのような悪路でも足つきがよく低重心で取り回ししやすいアンダーボーンフレームのバイクは人気のようです。

そもそもベトナムでバイクといえばスーパーカブであり、そしてホンダが人気のようです。
ベトナムではバイクのことを「ホンダ」と呼んでいたそうで、どこのメーカーでもヤマハのホンダ、スズキのホンダ、カワサキのホンダとなるようです。このようにホンダがバイクの代名詞となったのには歴史があるからです。

ベトナム戦争は北ベトナムと南ベトナムとの間で起きた戦争で、アメリカは南ベトナム側についていました。
戦争に介入していたアメリカ軍がホンダのスーパーカブ2万台を南ベトナム政府へ援助したそうです。それによりベトナムではスーパーカブが浸透しました。水を入れても走るバイクと揶揄されるくらい丈夫なスーパーカブは人気となり、戦時中に75万台がベトナムに輸出されたそうです。

ただベトナム戦争は北ベトナム側が勝ったためアメリカは撤退。アメリカは1979年から国交正常化する95年までベトナムに対し経済封鎖を行いました。日本はアメリカと同盟国のためアメリカに同調。輸出規制がされました。つまりスーパーカブの部品が手に入らなくなったのです。
ここでスーパーカブの本領発揮。よほどのことをしない限り壊れないスーパーカブは経済封鎖した16年間を乗り切ったのです。必要な部品は自主製作で乗り切ったそうです。
今ではスズキやヤマハ、また中国産のバイクもありますが、経済封鎖時は戦時中に出回ったバイクを直して乗り続けたためホンダへの信頼度は高く、整備士もホンダ車が扱いやすいのでしょう。そのため今でもバイクはホンダという状態のようです。

ちなみにかつてはバイクに乗って春を売る「流しの娼婦」がベトナムにいたそうで、そのような娼婦を「ホンダガール」と呼んでいたんだそう。

つまり、ホンダが娼婦の生活を支えていたようです。

こちらはスエンタム運河流域沿いにある路地です。すげー生活感があります。かなり狭い道ですがバイクの往来が激しいです。

路地はさらに狭くなり、バイクがギリギリ対面通行できるくらいの狭さの橋があります。
このような道が多いためバイクの使い勝手が良いのでしょう。

こちらが橋の下を流れる運河です。ホーチミンの中心地からさほど離れていませんがこのようにごみが溜まっています。

プラスチックのゴミが浮いており、水の色もどす黒く水路というよりドブのような感じ。

ホーチミンの中でも一番汚い地域と呼ばれているスエンタム運河。
だいぶ前から問題視されておりそれを改善しようと8km続く運河を改修工事をする算段となっているようです。清掃だけでなく運河の両岸に道路を建設するそうで、すでに一部では立ち退きが始まっているようです。改修工事の立ち退きのため正規に住んでいた人には新たな住まいが用意されているそうですが、不法占拠していた人に対しては強制的に追い出される形になっているのでしょう。

今のベトナム社会主義共和国ができたのはベトナム戦争後の1976年です。まだ戦争から50年も経っていません。戦傷による四肢に障害のある人も多くいるようです。実際にホーチミンの中心地に足を欠損した物乞いの人がいました。
ベトナムにも社会保障制度があり社会的弱者のための生活保障はあるようですが、物乞いをしている人の多くは南ベトナムの兵士だった人が多いんだとか。戦争に勝ったのは北ベトナム。統一はされてもこのような差別が国レベルであったそうです。そしてそれはまだ残っているのでしょう。スエンタム運河沿いに住んでいた不法占拠者はそのような差別を受けていた人なのかもしれません。

この黒い川も数年後にはきれいになるのでしょうね。しかし強制的に追い出された人の行き場は果たしてどこにあるのでしょうか。おそらく中心地からさらに離れた不便な場所に、新たなスラムが生まれているのでしょうね。

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