世界一売れてるジン「Ginebra San Miguel」それはまだ、流行っていない
日本では今、空前のジンブームが来ています。
国内大手メーカーが挙ってジンのCMを出しています。またご当地ジンのようなものを作っているところがあり、地方の焼酎メーカーがその土地土地の原料を使って、独自のジンを開発していました、
このようにジンが熱いんです!
と言いたいところですが実際はそこまでジンの売れ行きは良くないのでしょう。
数年前にハイボールブーム、ウイスキーブームがありました。しかしウイスキーの原酒が枯渇したため、手軽に手に入らなくなりました。その代わりとなる予定だったのがジンだったのでしょう。ジンであれば寝かせる必要がありません。比較的早いスピードで製造・出荷ができるため酒販メーカーとしても利があるのでしょう。そんなわけで広告を駆使して行らせようとしていますが、クセの強いジンは万人受けしないのかブームにはなっていません。
ジンの出自はヨーロッパです。11世紀ころにはすでに作られており、ジンという名称になったのは17世紀になってから。人気となったのは産業革命のころ。貧困層の楽しみがアルコールってのはいつの時代も変わらなく、産業革命のころのロンドンでも貧困労働者の心のよりどころは酒でした。安くて酔える庶民の酒ってことで労働者階級に人気となったようです。日本でいうホッピーや焼酎的な立ち位置でしょうか。
そしてそれは海を越え、ここフィリピンでも活躍しているようです。
フィリピンでもコンビニやスーパーでジンが売られているのですが、そもそもフィリピンのジン消費量は世界一なんだとか。
世界的にジンを広めたイギリスの一人当たりの年間消費量が0.4Lに対し、フィリピンでは1.4Lも消費しているようです。
タンカレー、ビーフィーター、ボンベイサファイア、ゴードン、トムジン、シュタインヘイガー、シンケンヘイガー、ビクトリアンバットジン。
このように世界には有名なジンが様々あります。
個人的に好きなのはビーフィーターとボンベイ、ビクトリアンバットです。ビクトリアンバットジンのカスクストレングスは秀逸です(ちょっと高いけど)。庶民の酒だけど突き詰めると美味しいお酒となり、それは世界的に有名になるんです。このように有名な銘柄がいくつかありますが、フィリピンでは自国生産のジンが人気のようです。でもフィリピンのジンなんて聞いたことないし、飲んだこともない。
フィリピンジン。それはまだ、流行っていない。
ゴードン、ボンベイ、ビーフィーターを抑え、こちらが世界で一番売れているジンです。
「Ginevra S Miguel」と書かれています。日本語読みだと「ジネブラ・サンミゲル」または「ヒネブラ・サンミゲル」もしくは「ギネブラ・サンミゲル」。
結局フィリピンはサンミゲル一択。
こちらのジンはコンビニ、スーパー、どこの店にも置いてあります。というよりフィリピンでジンと言えばこれ一択なのでしょう。値段は350mlの瓶が84ペソ、およそ200円程度で買えます。ドメスティックオンリーと書かれてあるのでフィリピン国内でしか販売していないようです。つまり世界一といってもフィリピンが酒豪大国ってだけのようで、ビール以外の酒といえばワインかジンになるのでしょう。立ち位置としては日本の焼酎ってところでしょうか。低所得者層が飲む酒のようです。そもそものジンの発祥が労働者階級向けの大衆酒。まさにジンの立ち位置を地で行っています。
アルコール度数は80proofなので40%。普通のジンと同じ度数です。これが200円で手に入るんだからフィリピンはアル中を量産していますね。
では早速飲んでみます。
見た目はとくに濁りはなく無色透明。香りは消毒液っぽいです。ジン特有のジュニパベリー感は弱く、甘みが強いです。ほのかに塩っぽさもあります。飲んだ後の舌の痺れ、度数の強さをもろに感じられます。悪くはないのですが、全然ジンっぽさがありません。
原料がsugar alcoholとなっているため糖類、いわゆる甲類焼酎がベースのようです。nature indentical gin flavorsとは合成香料。一般的なジンだとジュニパベリーにリンドウやスミレといったボタニカルでナチュラリストが好きそうな材料を入れているますが、世界一のジンはそんな概念をかなぐり捨て、科学の力で味を表現しています。
これこそが真のジンの姿。
それ以外に砂糖も入っています。甘みの原因は砂糖を添加しているから。
香草系の香りがきつくて飲めないって人にはちょうどよい味わい。
フィリピンの人はコーラで割って飲むんだとか。
私は素材の味をできる限り生かすスプライトで。そもそも素材の味も何も香料足してるだけですからね。
このスプライト・ジネブラ・サンミゲルカクテルは結構おいしいです。ほぼ焼酎のスプライト割ですが、この組み合わせは合ってます。
あてはフィリピンの駄菓子で。こちらはナッツにチョコをコーティングしてあります。近いのがチョコボールのナッツです。フィリピンはナッツを食べる文化があり、屋台で売っているのも頻繁に見かけます。ナッツをアテに安酒を飲む。フィリピンの労働者階級の晩酌姿はこれなのでしょうね。
おそらくかつては蒸留技術が未熟のため穀物の香り成分がきつかったのでしょう。その香りをごまかすために香料を使ったのでしょう。まさにジンの発祥と同じ。しかし現在は蒸留により無味無臭のアルコールが精製できるため、香料が不要となりました。でもその当時の名残りがまだ残っているのでしょう。
ジンを求めてこれを飲むと物足りなさがありますが、甘めのラムとしてとらえると案外おいしいのかもしれません。これが世界一売れているジンなのであれば、日本のジンもこれに倣うべきだと思うんです。ボタニカルがどうのとか、ナチュラルがどうのとか、オーガニックがどうのとか、なんとなく自然な感じに迎合するより、化学!石油!ケミカル!な味のジンのほうが人気が出るのでしょう。私は結構この味、嫌いじゃないです。でもそれは、世界的に流行っていない。
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