終の棲家「簡易宿泊所」ドヤ街寿町で夢は見れるか
先日までドヤ街と呼ばれる街、寿町にある簡易宿泊所に数日間泊まってみました。
Gotoキャンペーンにより安くなったからホテル暮らしをしてみたいといった理由もありますが、本当のところは将来もしここで住まなければならない状態になった際、果たしてちゃんと生活ができるのかという予行練習を兼ねたものでした。
これを思い立ったのは新型コロナウイルスの発生前でした。以前新宿にある簡易宿泊所街に行ったときに思い立ったのです。
新宿に住んでいたため都内で宿泊することはありませんでした。現在も川崎なので宿に泊ったことはありません。終電に間に合わず漫画喫茶で過ごした経験はありますがその程度です。それであれば一度泊まってみたい。そしてどうせなら将来世話になるかもしれない簡易宿泊所に。
そんな気持ちで宿泊所に予約の電話をしたのですが満室でいつ空くかもわからない状態でした。
それを思ったのが昨年の9月末頃。
一度は諦めたのですが海外旅行に行ったり色々な経験をするうちに再チャレンジしようという気持ちになりました。
しかし今年に入りコロナウイルスの感染拡大となりました。そのため宿泊の機会はどんどん先延ばしになってしまいました。
一時は外出自粛という状態でしたが緊急事態宣言も明け新たな生活様式へと変化。さらにGotoキャンペーンが開始されました。しかし都内は除外という結果に。そのような中で安く泊まれてGotoキャンペーンが適用される場所を探した結果、行きついた先が寿町だったわけです。
短期間ですが宿泊してみて「住み続けることは出来そう」という結論に至りました。
数日間では判断できませんが問題なく生活できるだろうという気持ちにはなりました。その理由は以前歌舞伎町に住んでいたのと同じような感じがしたからです。
住んでいたのは10年以上前。その時とは時勢も変化しそもそも年齢も若いころなので比較は難しいところがありますが歌舞伎町マンションと簡易宿舎は非常に似ていたのです。
歌舞伎町のマンションにはキッチンと簡易冷蔵庫はありましたが一切利用しませんでした。マンション付近に飲食店が多くゴキブリやねずみが多かったからです。
ユニットバスが室内にあったため簡易宿泊所よりも住環境はよいのですが、部屋の圧迫感は似たようなものでした。寝るために帰っていただけなので部屋にはベッドのみ。テレビすらありませんでした。
今回簡易宿泊所に泊まっていた際、近隣から寄生が聞こえましたが新宿では頻繁に聞いていたためとくにストレスは感じませんでした。
このようなことから簡易宿泊所でも何も問題なく過ごせるという結論に至ったのです。
歌舞伎町マンションの最安値は60000円前後。これにネット代、電気・水道・ガス代がかかります。ざっくりと75000円くらいでしょうか。簡易宿泊所の場合一カ月51000円。光熱費込みです。シャワー代が別途かかりますが毎日入っても3000円です。ホテルのようなサービスはありませんが低価格でシーツ交換をしてもらうこともできるわけです。同等の条件で賃貸を探すとなると3万円以下の部屋となります。
年金では足りず野宿も混ぜて生活する必要も出てくるかもしれません。諸々から簡易宿泊所に住むというのが一番負担の少ない形なのでしょう。
簡宿以外にも現代版の簡易宿泊所といわれるネットカフェで生活するという方法もあります。
一つに決めることなくその時に合わせて対処すればよいんだと思います。
ネットカフェだと深夜パックで1600円くらいでしょうか。簡易宿泊所と金額は同じくらい。でも夜だけですからね。まぁ簡易宿泊所にいても日中ゆっくり部屋で過ごすことも少ないのでどちらでも変わらないのでしょうが。
ちなみに寿町にあるコインパーキングが12時間で1700円でした。
寿町の宿は1700円が相場。つまりコインパーキングの半日の金額で宿泊が可能というわけです。それを終の棲家としなければならず、このあたりにはそれをしている人が多くいるというのが現状です。
簡易宿泊所は日中部屋にいるのがしんどい。部屋の中で楽しむことができない。そのためこのあたりに住んでいる人は外で過ごします。
お金のある人は場外舟券場に行ったりパチンコ屋に行くのでしょう。無い人は路上で日が暮れるまでのんびり過ごしています。部屋にテレビはあるけれど、狭い部屋の中で過ごすのはしんどいのでしょう。
多くは老人です。独り身で家族もいない人たちがここに集まってくるのでしょう。
このままでは特等席に座ることになりそうです。数年後にはこのソファーに座っているかもしれません。
ただ寿町は年寄りの街というとそうではないようです。
たしかに老人の割合は多いです。車いすに乗った人、覇気の無い人、大体が年寄りです。
ドヤ街は元々日雇い労働者が集まり、ここに来れば仕事にありつけるというところでした。
しかし年寄りには土工などの仕事につけません。結果的に路上で寝泊まりをして鉄くずを集めて日銭を稼ぎ糊口をしのいでいるのでしょう。
みんな簡易宿泊所やアパートに住めていればよいのですがこのようにセーフティーネットから漏れた人も一定数おり、路上生活をしている方もいらっしゃいます。
また必ずしも老人だけがあつまっているわけではないようです。
子供を数人連れたお母さんを街で見かけました。寿町内には保育園があるのですがそこに通わせているのではなく、ここに住んでいるといった感じでした。お父さんは見当たらないので山に柴刈に行っているのでしょう。お母さんは川沿いのパチンコ屋へ命の洗濯に。その間子供たちは広場で遊んでいます。
子供を車に放置して熱中症で死なせてしまう親もいますが、ドヤ街に子供を放置する親もいるようです。一見すると危険な感じがしますが、実際はかなり安全のようです。確かにこの街の中には危険な人もいて悪い人もいるのでしょう。でもしっかりとコミュニティが出来ていてその辺にいる人たちが監視しているんです。天然の保育園といったところでしょうか。
果たしてこの子らが幸せなのかどうかはわからないし、不幸だと決めつけれるものではありません。おそらく自分よりも幸せなのでしょう。でも本来受けるべきものが受け入れられていないのであれば、死に損ないの老人に生活保護費を渡すより、未来ある子供たちに救いの手を差し伸べて欲しいです。
出来ればここではなく別のどこかを終わりの棲み処としたいところです。でも住めば都です。寿町には寿町の楽しさもあるのでしょう。一応娯楽もあるようでしたし。結局は慣れなんです。慣れちゃえばどこも一緒です。
コインパーキングよりも安い値段で泊まれる宿で生活するのもいいんじゃないでしょうか。