ロシアだけどロシアじゃない。ラトビア産ウォッカ「ストリチナヤ」
ウクライナとロシアの戦闘は未だ終わらず。仮に終わったとしても問題が解決するわけではありません。個人的にはウラジオストクからシベリア鉄道でヨーロッパに行ってみたかったんですが、この旅はもう一生できないのでしょう。イクラもカニもこの戦争で出荷量が少なくなっているそうです。またロシアといえばウォッカがあります。日本は今回の戦争でロシアへの制裁対策としてロシア産のウォッカの輸入を禁止しました。つまり戦争が終わらない限りロシアのウォッカが手に入らないんです。
でもこれ、大した問題ではないんです。
ロシアといえばウォッカ。ウォッカといえばロシアのイメージがありますが、実際ロシア産のウォッカはそこまで海外に出回っているわけではないんです。そもそもロシア人は飲兵衛が多いので、体良く言えば地産地消。つまり自分のところで全て消費しちゃうのです。そんなわけでそもそもそこまでロシア産のものがない。
世界で一番売れているウォッカはスミノフでしょうか。スミノフは元々モスクワで創業し、ロシア皇室の御用達となったようですがロシア革命の際に命を狙われフランスに亡命。現在はイギリスのディアジオ社が製造販売しており、日本で飲まれているスミノフは韓国で作られています。
スカイウォッカはアメリカ。アブソリュートウォッカはスウェーデン。グレイグースとシロックはフランス。フィンランディアはフィンランド。ギルビーはイギリス。エリストフはジョージア。ベルヴェデール、スピリタス、ズブロッカはポーランド。ウィルキンソンは日本。
こんな感じでほとんどがロシア産ではありません。
私の知ってるロシア産のウォッカは唐辛子入りのペルツォフカとスタルカ、ストロワヤくらい。
そしてあとはストリチナヤでしょうか。本日はこのストリチナヤで乾杯します。
厳密に言うと、というより日本で売られているストリチナヤの原産国はラトビアです。ラトビアは元々ロシア帝国の支配下にあり第一次世界大戦後に独立したもののソ連ができた際に合併したバルト三国の一つです。ソ連崩壊の際にラトビアは独立。NATO、EUに加盟しているためウクライナのような状態にならずに済んだのでしょう。
このようにラトビアが製造国ですが元々はロシアで製造したのが始まり。これについてはスミノフと同じですね。ロシア語で首都のことをスタリーツァと言うそうでストリチナヤはスタリーツァの形容詞。
ストリチナヤはソ連時代の1940年前後にロシア帝国の首都だったレニングラードで製造されたのが始まり(諸説あり)。その当時からウォッカはロシアの国民酒。今でこそ大衆向けのストリチナヤですが、その当時は庶民だとなかなか買えないお酒でした。
高級酒でしたがそれでも人気があり、海外でもプレミアムウォッカとしてかなり売れていたんだそう。
ただそんなストリチナヤ、ラトビア産が出回っているのは色々問題を抱えているからのようです。
社会主義だったソ連は酒造りも国営のため、ストリチナヤはソビエト連邦が作っていたのです。権利関係もすべて国が所有していたのでしょう。
しかし1991年にソ連が崩壊。それによりストリチナヤの商標権が宙に浮いてしまったんだそう。
その結果ストリチナヤを名乗るどこで作られたかわからない“なんちゃってストリチナヤ”が大量発生したそうです。このような事態となったためロシア当局がロシアの連邦国営会社「Sojuzplodoimport」に商標権を返還したそうです。
商標問題は解決。これで収束すると思ったのも束の間、その当時株主だったロシアのオリガルヒ・ユーリー・シェフレル氏が1997年に商標を自身の所有する会社(SPIグループ)へ売却してしまったそうです。その結果、ロシアとシェフレル氏との間で訴訟問題となり、シェフレル氏はロシアから亡命。現在も商標権の訴訟問題は続いており、2020年にオランダの最高裁でSPIグループはロシア側に負けています。ただ現状で世界180国に商標を持つSPIグループ。商標権の争いはまだまだ続くのでしょう。
終売になったりしていた時期があったのはこういう問題を抱えていたんですね。
今日本に輸入されているのはSPIグループ傘下のストリ社がつくるラトビア産のストリチナヤ。
つまり日本がロシアに対して輸入禁止阻止をしても変わらず飲めるのです。
ただ今回の戦争はストリ社にも結構な打撃があったそうです。
ウォッカといえばロシアのイメージがあるようにアメリカでは不買運動が発生。ロシア産ではないけどロシアのイメージが強くあるストリチナヤも売り場から撤去するような動きもあったそうです。
ラトビア産ですが原材料はロシア産。イメージ回復のため、またロシアの戦争に抗議するためでしょうか。ストリ社はこの戦争を機にロシアとの関係を切り、「ロシアの原料からスロバキア産に変更」「ストリチナヤの名称を“ストリ”にする」ってことにしたそうです。このようにして古巣だったロシアと袂を分けたそうです。
まだストリチナヤのままだけど。
この宣言をしたのは3月4日。つまりこの酒のラベルはそれ以前に作られたやつのようですね。
ズブロッカやスピリタスも好きですがストリチナヤはクリアな味わいでノーマルのウォッカの中で一番好きです。スミノフの力が強すぎてなかなかスーパーとかで売ってないんですが、先日酒屋に立ち寄った際に買ってきました。
しかも1L容量のやつです。正規のストリチナヤは日本ビールが販売元となっているのでしょうか。500と750mlの取り扱いですが今回購入したのはコルドンヴェールという輸入商社が輸入した製品。コルドンヴェールはイオン系列の輸入会社でやまや、イオン、まいばすけっとに卸しているところです。
久しぶりのストリチナヤ。飲み方はソーダ割(レモン垂らす)で。
スミノフって雑味と甘みがあるんですがストリチナヤはすっきりしているんです。穀物の甘みがあり雑味がない。クリアーな味ってところでしょうか。癖がないんでグビグビ飲めます。
ほぼ甲類焼酎なのでキンミヤ焼酎で事足りるんですがそこはやはりラトビアの風、浴びたいじゃないですか!
バルト三国の一つってことぐらいしか知らず今まで「ラトビア」という国名を口にしたのも数えるくらいですが、このようにお酒で私はラトビアと繋がってるのです。
ストリチナヤはソーダ割が美味しい。
でも、せっかくクリアーな飲み口なのでカクテルにも当然適してるんです。
私は以前スミノフでシークワーサー割りを作りました。今回はストリチナヤでそれを作ります。
材料は100%シークワーサージュース。
それにシュガーシロップです。このカリブというシュガーシロップ、ちょっとお値段がするのですが使い勝手が良いんです。お酒のベースだけでなく料理にも使えるしアイスティのシロップ代わりにもなります。今回買いましたが、これが空になった後は砂糖を煮詰めて自作のシロップを作ります。
分量は適当。瓶の中に突っ込んで混ぜます。
と思ったらストリチナヤの瓶、特殊な形状で入れられないようになってました。
仕方ないので普通にグラスで割り、ソーダを入れて出来上がり。
いわゆるシークワーサーサワーで、味もシークワーサーです。でも焼酎で作るのと違ってこっちの方がすっきりしてる感じ。
やっぱりストリチナヤのおかげでしょうかね。
でもわざわざシークワーサーを用意しないといけないし混ぜなくちゃならない。結構めんどくさいんでストリチナヤの飲み方はソーダ割が一番のようです。