【NO CINEMA NO GAY!】野毛を探索。横浜光音座で映画鑑賞
横浜に来ております。まだまだ新型コロナウイルスの影響はありますが、緊急事態宣言解除以降徐々に営業再開をする店舗も増えてきました。
東京では再開直後に歌舞伎町でクラスターが発生。発生場所をずっと「夜の街」や「夜の繁華街」、「接客を伴う飲食店」という言葉で濁していますが要はホストクラブやキャバクラなのでしょう。
日本では海外と比べて感染率が低いようです。PCR検査が少ないとも言われていますが死者数から考えると実際に感染している人は少ないのでしょう。“夜の街”で感染が多くなるのは単純に濃厚接触が濃厚過ぎるんだと思います。当分はこの手の店には行きづらいしお店も肩身の狭い思いをすることになるのでしょう。
本日は“夜の繁華街”ではなく“昼の夜の繁華街”です。場所は日ノ出町です。
横浜はみなとみらいや赤レンガ倉庫、元町中華街といったレンガ造りでハイカラ、ハイソできらびやかなイメージがありますが、本当の横浜というのは大岡川の両サイドを指すんだと思います。伊勢佐木町、黄金町、阪東橋、関内、桜木町、そしてここ日ノ出町。明治から昭和の頃はこのあたりが中心地だったのでしょう。
現在は場外馬券場になっておりますが、こちらには横浜国際劇場があったそうです。劇場があったということは周りにもいろいろな店があり栄えていたんだと思います。今は平日は比較的静か、週末は馬券を買いに来る輩で集まるという感じのようです。
美空ひばりがデビューした劇場ということでこちらに銅像が立っているんだとか。
以前、横浜に職場があったのですが、というより形だけの事務所だったので月に一回行く程度でした。そんなわけで横浜で飲みに出たりすることもなくほとんどスルーしていました。そして居たのが大岡川の反対側、関内の方だったんでこっちのほうに来たことがなかったんですよね。
と思っていたのですが、過去に何度かこっちのほうにきていたかもしれません。
なんとなくこの景色、記憶にございました。
街の感じがたまらなく好きです。今だったら区画整理をしてまっすぐな建物を建てるんでしょう。そのためこのような建築物は出来ないんだと思います。この昭和な感じ、ごちゃごちゃしているところがいいですね。
こちらは都橋商店街ビルという商業施設です。戦後、このあたりの川沿いに露店が並んでいたそうです。しかし1964年の東京オリンピック開催が決まり、急遽この建物を作ったんだそう。
野毛にくれば何でもそろう。このあたりはそのように言われていたそうです。
終戦直後の日本、連合国軍占領下の日本は物資が不足していました。国からの配給は滞り、都市部では食糧を手にすることができなかったようです。そのため当時の人たちは闇市という違法なところから食糧を買っていたんだとか。今でいうマスクを高値で路上販売していたような感じなんでしょう。マスクは国から供給する。しかし布マスクは届かない。仕方がないため怪しい中国人の露天商からマスクを買う。そして違法に仕入れたマスクは闇マスクと呼ばれる。戦後80年経った今も何も変わっていないようです。
この場所で商売していた露天商はまさに闇市の流れをくんでいたのでしょう。河川敷を占有していたわけですがこのままでは見た目がよくないということでオリンピックを機に建物を建てたんだとか。この手の成り立ちの場合権利関係が複雑になるものですが、土地建物は公社が権利者となっているようです。老朽化のため取り壊しの話も出たようですが歴史的建造物ということで保存する形を取ったようです。
闇市は食べ物がメインだったと思います。軍から横流しされた物品や残飯などを売っていたそうです。ここに建物ができるのが1964年。戦後20年も経っているため食糧も安定した頃でしょう。当時は洋品店やかばん屋などの商店と飲み屋という具合だったようですが現在は飲み屋だけになっております。
みた感じだとバーやスナックが多いようです。
新宿ゴールデン街もそうですが、こういうところに行きつけが何軒かあるといいですよね。人は皆最終的にスナックに落ち着くんだと思います。若いねーちゃんに囲まれるよりもくたびれたスナックで知らない中年のおっさんとママがロンリー・チャップリンを歌っているのを聞きながら過ごす方が落ち着くんです。こういう店をみんな求めているのでしょう。
ただこのあたりの店もコロナの影響でかなり厳しいようです。
たまたま居酒屋のお母さんに話しかけられました。街の状況を聞くと平日は人がいないんだそう。土日は場外馬券場があるため多少は人が来るとのことだが「こんなんじゃやってられない」ということでした。
※お母さんから花撮ってって言われたので撮影。
とくに“夜の繁華街”がコロナの感染経路の一つと言われています。いわゆる二号営業が問題視されていますがバーやスナック、居酒屋などの深夜酒類提供飲食店も同様となるのでしょう。お店を閉めていても家賃がかかる。お店を開ければ非難され、お店を開けていたとしても客が行きづらい状態でかなり厳しいのでしょう。
この手の店はモロ影響受けてそうですね。
看板の明かりはつけずに常連のためだけに開けている店もあるようです。緊急事態宣言は解除されても飲み屋に行くのは自粛傾向にあります。今回のことで体力のない店はつぶれていってしまうのでしょう。
やはり夜の街は夜に来るのが一番なんでしょうね。闇市があったということでお店の雰囲気もしょんべん横丁とかと似たような感じの店が多いです。流石に昼から営業しているところは少なく、車で来たため飲むこともできません。
ホルモンとか臓物系の店が多いですね。それと野毛はクジラが有名なんだとか。そういうのも食べてみたいです。
ちょっと古めの和菓子屋さんがあったのでそちらに立ち寄りました。もみぢ菓子司舗というところで昭和21年創業なんだそう。つまり戦後闇市のあったころからここで営業されているというわけです。大銅鑼焼きが有名なんだそうですが普通のまんじゅうを一個だけ買って食べました。
野毛はこんなところで食べ歩きできます。
本日野毛に来たのは夜の街並みを見に来たわけではありません。行きたい場所があったからです。それは映画館です。
川崎にはチネチッタという大型のシネコンがあります。川崎は映画の街ととも言われております。そして横浜にも大きな映画館があります。しかしそういうところはハリウッド映画とかディズニー映画とか有名俳優やアイドルが出ている邦画しかやっていません。今日行くところは成人向け映画館、ポルノ映画館です。
新宿にも東南口のそばにVシネマやピンク映画を流している映画館がありました。たしかパチンコ屋の隣にあったと思います。気が付けばそれはなくなりドン・キホーテに変わっていました。いつか行こうと思っていたのに気が付けば店がなくなっていました。
インターネットが普及しネット上で映像を配信できるようになりました。そのため映画を観に来る人は減るのでしょう。客が減れば立ち行かなくなり閉業することになります。新宿の映画館同様になくなる前に行くべきだということで今回来ました。
横浜光音座というところです。
こちらの映画館「光音座1」と「光音座2」があります。二つある理由は映画の趣向が異なっており「光音座1」はゲイ映画専門上映館で「光音座2」はピンク映画館となっています。
今回こちらを知ったのはこの映画館の運営元を見たことがはじまりでした。
ここの映画館を運営しているのは大蔵映画株式会社というところです。映画の配給会社とかは詳しくないのですが、こちらの会社が運営している施設には何度も行っていたようです。
学生の頃、ボウリングをするとなるとトーヨーボウルかオークラボウルでした。現在もまだ世田谷にオークラボウルがあります。連日通ったこともあるボウリング場。そのボウリング場の運営元が大蔵映画株式会社でした。
大蔵映画について話すとだいぶ長くなるので大筋だけお話します。
現在はピンク映画専門となっていますが大蔵映画は日本の映画史にも深くかかわっているようです。
大蔵映画を最初に作ったのは大蔵貢という方です。
大蔵は長野で貧しい暮らしをしていたそうですが13歳で上京し活動弁士となったそうです。時代はまだ明治の終わりころ。当時はまだ映画に音声がないころです。映画を説明する副音声のような役割をする人のことを活動弁士と呼んでいたんだそう。大蔵は活動弁士として人気者だったそうです。
しかし映画に音声が入ればお役御免。活動弁士の仕事はなくなります。弁士のほとんどが寄席などに移る一方、大蔵はお金を貯めて映画館を買収したのだとか。浮き沈みはあったもののそれにより大成功をおさめ映画興行師となったそうです。
大手映画会社の株主となり日活、東宝や松竹、東映などを渡り歩き新東宝映画製作所の社長に就任。一時は繁栄を謳歌していたようですがワンマンっぷりが仇となり赤字へ転落。新東宝映画製作所は倒産してしまったそうです。
その後大蔵映画株式会社を設立。手間やお金のかかる邦画ではなく「安い、早い、質はそこそこ」をモットーに多くの映画を作ったそうです。低予算でも集客を見込めるのはまさにピンク映画だったのでしょう。ピンク映画の第一号作品は1962年大蔵映画製作の「肉体の市場」なんだそう。つまり、大蔵映画は日本のピンク映画の祖なわけです。
学生のころにお世話になった店を運営していた会社がそんなとこと知ったからにはぜひ行っておきたいと思ったわけです。
「光音座1」と「光音座2」があります。さて、どちらにはいるかと悩むのではなく両方行きたいと思います。
さて、まずは光音座2から入ります。映画館が混むとあれなのでオープンすぐに行きました。券売機でチケットを買いモギリに渡します。コロナウイルス感染防止対策のためマスク着用です。マスクしていても結構なタバコの臭いがします。昔の映画館の雰囲気が味わえます。
映画は三本立て、入れ替えなどはありません。つまりずっといても金額は同じ。
全てピンク映画です。館内は当然撮影禁止なのでイメージを膨らませてください。
人生ではじめてこの手の映画を観ましたが、その手のビデオとは違い一応ストーリーはあります。出ている女優は見たことのある“女優”です。そこまで演技が上手いというわけではありませんが、棒読みのような状態ではありません。
それよりも出ている男優の演技が秀逸です。
森羅万象さんという俳優の方のようでなんだかどこかで見たことがあるような気がしますが、名演技です。
全体的には安っぽい作りではありますが、これが味ってやつなんじゃないでしょうか。過激なシーンはあるものの、雰囲気は昭和の時代にあった“家族で見ていると気まずいお色気シーン”を少し過激にした程度でしょうか。
人生ではじめてこの手の映画を観ましたが案外楽しめるようです。てっきり棒読みの女優が「ダレカー、タスケテー(棒)」みたいなストーリーの起伏もなくただ絡みのシーンが続くだけだと思っていましたが、ちゃんとストーリーは用意されているようです。もちろんその手の映画なので強引に絡みシーンに繋げたりしているところは否めませんが、それでも見る価値のある映画でした。低予算で作られているという割にはしっかりとしたものでした。
今の世の中であればレンタルビデオ屋に行ったり、動画配信サービスを使えば足りるでしょう。ロマンポルノはそれだけが目的ではないんでしょうね。映画監督がいて伝えたいものがあるんだと思います。そしてこういう映像はちゃんと映画館で観たい。大きなスクリーンでじっくり見るのが一番でしょう。
ただどうやらここの映画館は少し様子がおかしいんです。
座席数は80席ほど。コロナの影響で席の間隔をあけての上映なので実際40席ほどでしょうか。席には10名ほどしか座っていません。映画が終わり後ろを振り返ると立ち見をしている人が10名ほど。席あいてるのに座っていません。
映画館ってそんなに頻繁に出入りするものではないですが、ここではそれが日常なようです。ひっきりなしに人が出たり入ったりするのです。上映中もなんだかずっと後ろに気配を感じていました。
来る前にこの映画館のことは調べて知っていましたが、こちらはそういうところのようです。
出会いの場というべきでしょうか。そういったところのようで映画を観ているよりも周りの人を見てなんやら物色している感じです。映画を観に来るというよりも、こちらで相手を探して外のロビーで談笑したりとか色々するんだそう。
こんな映画を観ていたらちょっと気分が高揚しちゃうこともあるかもしれないわけです。でも光音座2は女人禁制。女性の客はいません。しかし女装した男性であれば入館できます。
男性客がいて女装した人がいる。つまりそういうことです。
映画は一時間くらいでしょうか。じっくりとエンドロールまで見ました。映画はよかったです。人の往来が激しいのも一つのスパイスというところでしょうか。館内がタバコ臭いのもなんか昭和のロマンポルノを彷彿とさせる演出なのでしょう。
まだ二本ありますが次に行きたいと思います。
お次はとなりの「光音座1」です。1も2も一つの建物ですが中央に受付があり、銭湯と同じようなつくりで右と左で別れています。
右は男湯で左も男湯ですが。
左にある光音座1はゲイビデオのみの上映です。
男性向けの映画という点は同じですが、毛色が全く違うためこの二つをハシゴする人は少ないのでしょう。明らかに冷やかしだと思われているのでしょう。実際のところ興味本位で見に来たわけですからね。
別料金を払い光音座1へ。
光音座2は女人禁制ですが女装子はOK。光音座1は女人禁制の上に女装子も禁止らしいんです。中に入れるのは“おとこ”のみ。まぁそういうところのようです。行き来は禁止だと告げられました。つまり行ったは最後、もう元には戻れないということです。
すでに上映が始まっており映画は途中です。
新作が出づらい種類なのかわかりませんが上映していたのは1983年のものでした。近年ボーイズラブのドラマが人気となっていますが、この手の映画で採算を取るのはなかなか難しいのでしょう。今から37年前の映画のため画質は古いため荒いですが、しっかりとしたストーリーっぽいです。露骨な描写は無く、男の肉体美を魅せるような雰囲気でどちらかというと友情や青春など男心の機微を描くようなヤツなんだと思いますがどうも気乗りしません。
滞在時間は15分ほどでしょうか。さすがに気が引けたのか、これ以上ここにいると周りの人に迷惑をかけると思い退室しました。
1と2合わせて3160円。1は短時間滞在となりましたがよい経験となりました。
ゲイ映画に嫌悪感を抱くのではないかと思っていたのですが、全くそんなことはなく最初から最後までちゃんと見てみたいという気持ちになりました。ネット配信で見れるようですが出来れば落ち着いた映画館で落ち着いてみたいものです。ただ関東では光音座1が唯一の映画館のようです。大阪にも似たようなところがあるそうですが、落ち着いて観れる環境ではなさそうです。
午前中に横浜まで来て映画観て帰る。最高の贅沢です(映画の種類が一般的ではありませんが)。でもせっかくなんで昼ごはん食べていきましょう。
記した通り野毛はクジラが有名なんだそうでクジラ横丁と呼ばれる区域があるそうです。
ゲイ映画をみたあとは野毛で鯨(げい)を食べたいと思います。
こちらの老舗っぽいお店に立ち寄りました。
クジラの刺身とかありましたが無難にクジラフライ定食を注文しました。
とくにクジラが大好物というわけではありません。捕鯨が禁止となり食べれなくなっても困りません。でもたまに食べたくなるんですよね。店によっては下処理がいまいちで血生臭いのとかもありますが、さすがはクジラ横丁と名乗るだけありちゃんとしていました。こちらのお店のクジラは臭みがなく美味しかったです。
野毛という街はゲイタウンと呼ばれているようですが新宿二丁目のようなところではなく一般向けの店も多く点在します。ちなみにゲイタウンとしては50年以上の古い歴史があるそうです。それだけ長い間共存してきたのでしょう。
みなとみらいができ、桜木町駅が廃止となり野毛に来る人が減った時があったそうです。そのためかなりの店が廃業したそうです。それでもこの街を愛し、利用してきた人が多くいたのでしょう。現在は新たな入居者も増え最近では若返りをしているようです。
確かに飲みに行くなら駅近くがよいです。
でも少し離れていたとしてもそこに行かなければ出会えないものがあるならば足繫く通うのでしょう。ここ野毛にはそういった店が多いのかもしれませんね。
店を覗いたわけではないので判断はできませんが、なんとなく新宿の飲み屋よりも居心地がよさそうな感じがしました。野毛地区には飲食店が600店舗あります。色々楽しめそうですね。まだまだコロナの影響がありますが落ち着いたときに飲み屋を散策したいです。
横浜ってやっぱいいところですね。川崎にいると東京のほうばかり行ってしまいます。横浜より都心に出た方がいろんな店もあるし何でも揃うんです。でも東京と横浜は同じではないんですね。似たような繁華街、東京と横浜で距離的にも離れていませんが江戸だった東京と港町だった横浜では違いがあるんだと思います。野毛は横浜の古き良き雰囲気が味わえる場所ってところでしょうかね。東京に行かずにこちらに足を運ぶのもよさそうです。
野毛にくれば何でも揃うみたいなんで。