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豚肉が名物だった八王子 屠畜場跡地そばで肉を喰う

豚肉が名物だった八王子 屠畜場跡地そばで肉を喰う

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肉と言ったら何を思い浮かべますか?
牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉。最近ではジビエなんかもあります。このように色々な肉がありますがスタンダードな肉と言えば豚肉でしょう。
カレーの肉と言えば豚肉、肉じゃがも豚肉です。生まれも育ちも関東の私は肉と言えば豚肉でした。

関西は肉といえば牛肉を指すそうで、カレーも肉じゃがも牛肉を使う家庭が多いそうです。また肉と言ったら牛肉なので肉まんではなく豚まんと表記しています。このように東西で違いがあるのは農耕用の動物が違ったのが理由のようで、西は農耕牛を使用し、東は農耕馬を使っていたからのようです。関東では馬肉が食べられていましたが、都市圏の人口増加に伴い生産しやすい豚が消費されるようになったそうです。

まぁ牛肉は単純に値段が高いので安い豚肉や鶏肉になりがち。円安だから国産肉が安くなるかと思いきや、飼料を輸入に頼っているため国産肉も高いです。そんなわけで最近はブラジル産の鶏肉、カナダ産の豚肉に落ち着いています。

そういえば都内にはトウキョウXというブランド豚がありました。日本には沖縄あぐー豚やかごしま黒豚など250種類以上のブランド豚があるそうですが、品種を掛け合わせて作ったトウキョウXは合成種としてはじめてブランド豚として登録されたそうです。登録されたのは1997年。最近登録されたと思っていましたがもう20年以上前なんですね。

トウキョウXが生まれたのは東京都畜産試験場。美味しい豚肉を作りたいという研究者の熱意により七年の歳月をかけて作ったそうです。トウキョウXの名の通り都内だけで生産されているのかと思いきや生産者は茨城、山梨、群馬、宮城と他県の畜産業者が多いようです。都内っていうより北関東。なんだったら東北。

でもトウキョウXなんです。

一応青梅市と西多摩郡瑞穂町、町田、そして八王子に生産者がいるようですが全国で10か所しか生産していません。昔はもっと生産者が多かったようですが、飼料や飼育に指定があり生産コストの割が合わないのでしょう。東京のブランド豚なのに都内では4か所でしか生産されていない状態になっています。

このように生産者が減少したのはコスト面だけではなく、別に理由がありました。

JR八王子駅南口から歩いて数分。線路沿いに比較的新しいマンションが建っています。旧国鉄駅の近くってのは開発が遅れることが多いです。でも八王子の南口にあるこれらの地域は開発が暮れたのではなく別の建物がここにありました。

八王子駅そばは、かつて屠畜場がありました。

八王子に屠畜場ができたのは1909年11月。八王子屠獣場合資会社が子安町に私設屠場を作りました。家畜を殺す際に悲鳴が出る、肉を潰せば血やにおいが出る。冷蔵技術が貧弱な当時の食肉加工場はあまり良い環境ではなかったのでしょう。そのため地域住民から疎まれる存在でした。衛生面などの問題から私設の屠場は閉鎖。1936年の5月に同地区にて市設の八王子屠場ができました。ここには東京都市部の台所があったようです。八王子屠場は八王子食肉処理場に名称を変え戦後も営業が続きました。

多摩地区の屠畜場。トウキョウXの食肉加工もここで請け負っていたそうです。つまりここが発祥地と言っても過言ありません。

しかし運営コストの問題から屠畜場は2012年に閉鎖しています。

食肉から人へ。

冷蔵技術に問題のない現代では地方の食肉加工場は不要となったのでしょう。全ての肉は芝にある食肉加工場へ。八王子にあった屠畜場は閉鎖し、マンションとなりました。それがこちらです。

オハナ八王子オークコートができたのは2015年。屠畜場がなくなってから3年後にできました。

八王子駅も歩いて数分の場所。2012年には小中一貫校がこの付近に開校しました。2020年には新校舎もでき、校内には学童保育所や保育園も併設されているため子育て環境は適しているのでしょう。住みやすい街八王子駅南側。実際によさそうな場所です。そんな利便性の良い場所なので人気のマンションなのでしょう。でもこちらはもともと屠畜場です。

屠畜場跡ってことでちょっと嫌な気分になる人もいるでしょう。少なからず家畜が何万、何十万と潰されてきた場所です。気分の良いところではないですよね。

人間は動物を殺して食べる罪な生き物。

こんな言い方をするとスピリチュアル系のちょっとヤバイ人って思われるかもしれませんが、これに関しては事実です。人間は生きるために動物を殺し、その肉を食べてるんです。屠畜場はその最たる場所です。そのため屠畜場には必ず畜魂慰霊碑というものがあります。

尊い家畜の命に感謝するため慰霊碑があるのでしょう。
自ら食肉にしておいて家畜の冥福を祈るってのは普通に考えればかなりサイコパスですが、「供養をしている」をすることで屠殺の整合性を保っているのでしょう。

八王子の屠畜場にも慰霊碑がありました。でもその慰霊碑はありません。現在屠畜場跡地にはマンションが建っています。もう肉に感謝する必要がなくなったのでしょう。供養が必要なくなったのか、その慰霊碑は撤去されました。この手の慰霊碑って移設するものだと思っていましたが、家畜ごときに墓標はいらねぇってなったんでしょうね。
このようにして八王子の屠畜場はなくなりました。屠畜場がなくなったことでトウキョウXの生産者も年々減少。かつては肉の街だった八王子でしたが、屠場閉鎖によりその名残はなくなりました。

八王子は内陸です。海の幸は期待できません。そうなると肉が名物となるわけですが、屠場は閉鎖されました。もう残されているのは生糸と蚕だけ。

ここは長野に倣い、虫を名産にするしかないです。長野ではカイコの佃煮がスーパーで売っています。八王子もカイコを名物にすればいいじゃん!ってなりますが、それは出来なかったんでしょう。

だってここ、東京だし(都下だけど)。

都民が虫、食べるわけないでしょ。
虫食べるなんて野蛮人がすること。
そんなわけで八王子のご当地ソウルフードは「パンカツ」になりました。

パンカツってパンにカツ挟んである料理っぽいですがそうではありません。戦後食糧難で豚肉の入手が困難だった際にとんかつの代わりにパン粉を揚げてソースをかけたものをパンカツと呼び、八王子市民はそれをカツと思って食べたんだとか。

市内に屠畜場あるのに!

むしろ屠畜場があったからこのような料理が生まれたのかもしれません。そう考えると八王子は豚肉のメッカなんでしょう。

だったらその聖地に触れてみたい!
ってことで南口側の焼き鳥屋に来ました。

ぜんぜん豚肉関係ない。

豚肉関係ないけど八王子屠場近くにある焼き鳥屋です。なんとなく当時の雰囲気を味わえるのではないでしょうか。焼き鳥屋と言っていますがいわゆる街中にある赤提灯。どうやらこちらの名物は煮込みなんだとか。トウキョウXを卸していた屠場跡のそば、そこで食べるもつ煮込み。求めていたものがありそうな予感がします。

一般的な煮込みは味噌味ですが、こちらでは定番の味噌以外に塩味やカレー味が選べるようです。

こちら、塩味の煮込みです。塩味はキャベツと相性が良いんだそう。モツは臭みもなく柔らかくおいしいです。

尊い家畜の命に感謝です。
東京の下町にもかつて屠畜場があり足が速い臓物は近場の店で消費されたようです。
低価格で栄養価も高いモツ煮は戦後の飲み屋で人気となり一般化しました。都内には東京三大煮込みってのがあり北千住の大はし、月島の岸田屋、森下の山利喜が東京三大煮込みって呼ばれているんだそう。煮込みの聖地巡礼、してみたいですね。

創業1989年のやきとり小太郎。開業当初は近くに八王子食肉処理場がありました。
当時は潰したての肉が手に入ったのでしょう。八王子の屠畜場は牛と豚なので鳥は関係ないけど煮込みに使われていたモツはその当時はトウキョウXだったかもしれませんね。トウキョウXも屠畜場も一切関係ないけど。屠畜場跡地のそばで食べるもつ煮込みと焼き鳥。トウキョウXじゃないし屠畜場も関係ないけど、居酒屋で食べる煮込みと焼き鳥はサイコーです。

本日は屠畜場跡近くにある焼き鳥屋に行きました。
屠畜場一切関係ありませんが美味しかったです。食肉がなくなったことで名物がヤンキーと暴走族しかなくなった八王子。

やっぱり虫を名産にするしかなさそうです

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