【骨を捨てる】うちの墓のこと。墓じまいから散骨まで
日本人は仏教徒と神道が多く、キリスト教やイスラム教は今でもまだ少ないようです。ただ今後訪日外国人や日本に滞在する外国人が増えれば宗教も多種多様となるのでしょう。現在でも都内は外国人が多く住んでおり、モスクや教会が点在します。価値観の違う人がいれば少なからずトラブルが発生することもあります。
先日、大分県にあるムスリム協会が日出町の町有地の土葬墓地を巡り設置条件に合意したそうです。日本は火葬の国でその理由は仏教徒が多いため。土地が狭い、衛生上、感染症蔓延などの理由により火葬が選ばれているそうですが、今後イスラム教やキリスト教信者が増えれば、この墓地問題も過熱しそうです。
そしてその墓地問題は我が家にもあったのですが、先日それが解決しました。
人は死んだらどうなるか?
人が死んだら日本では火葬して骨になります。魂は宗教によって異なります。
神道では黄泉の国へ、ヒンドゥー教や仏教は輪廻転生へ、天理教も輪廻転生、立正佼成会も輪廻転生。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は天国か地獄へ。幸福の科学は肉体から離れて魂となり、そしてあの世に還るとされているので神道系の考え方ですが、幸福の科学が影響を受けたとする宗教法人GLAは輪廻転生を提唱しています。
このように宗教によって死後の世界に違いはあれど、その多くは輪廻転生か別の世界に行くかのどちらかです。うちの家系は仏教徒なので祖先は転生したのでしょう。
ではなぜ墓を建てる必要があるのでしょう。
キリスト教やイスラム教は最後の審判後に魂は元の体に戻り復活するという考えから火葬をせずに土葬が基本のようです。いわばお墓は「復活をする為の肉体を保管している保管庫」です。そのため墓参りの習慣はないようです。
輪廻転生を提唱する仏教系の宗教は魂は不滅であり転生するのです。つまりお墓を建てる必要がありません。ヒンドゥー教、仏教徒の多いインドやタイでは遺体を火葬し川や海に散骨するのが一般的なんだとか。ガンジス川に流す、アレです。死者の魂が来世に行くために手元には残しておかないようにするんだとか(残っているといつまでも来世に行けず戻ってきてしまうため)。
このように見てみると日本は少し異常な感じがします。
死者の安寧を願い供養するってのがお墓を建てる意味らしいですが、ぜんぜん解せないんです。これに関しては日本の仏教がインド生まれのソレとは様相が大きく異なっているのが原因です。
仏教は輪廻転生ですが、神道は黄泉の国へ行く考え方。日本土着の神道と仏教が混ざり合い魔改造されたせいでなんかどっちつかずの状態になってしまっています。そのため輪廻転生しているのにお盆になるとあの世からご先祖を呼び出したり、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌、十七回忌...と延々と続けなければなりません。なにか行うたびにお布施を用意しなければならない。
仏教が日本に伝来して1500年くらい経ったのでしょうか。
1500年前から続くサブスクなんです。
そしてお墓問題。
かねてより私は「墓、いらないんじゃね?」と思っていました。
輪廻転生するからお墓なんかいらない!ってのは建前。本音はお布施や管理費を払いたくないから。
信仰心のない私はお布施サブスクも嫌だったし、墓の管理サブスクも嫌なのです。
親が死んだあとはお墓を相続しなければなりません。
お墓や仏具の相続は放棄できないんだそうで、強制的に管理をしなければなりません。もし私のあとに相続をする人がいれば墓守を続けてもよいのでしょうが、わが一族は私が最後の末裔です。つまり私が死んだら無縁仏になってしまうのです。そんなわけで墓じまいを考えました。墓じまいってなんとなくご先祖様に悪いように感じますが、この先無縁仏になるならば今のうちにしっかり処理をした方がよいでしょう。
ってわけで墓じまいのやり方をお話します。
大まかな流れとしては、お骨の行き先の決定、改葬許可書の申請、墓じまいといった流れとなります。
そのためまずはお骨の行き先を決めなければなりません。
一番費用がかからない手法はゴミとして捨てる形です。しかしどのような形であれ遺骨を燃えるゴミで出すことは死体遺棄になり三年以下の懲役に処せられます。
つまり捨てられないゴ...モノなんです。
一般的には永代供養のお墓に改装するか、散骨するかのどちらかになるでしょう。
川崎には高津区の市営霊園に共同墓地があります。1柱(柱は遺骨の数え方)あたり10万円かかる共同墓地です。ちなみに我が家のお墓には6柱の骨壺があります。つまり全てここに入れると60万円かかります。
ご先祖様には悪いのですが、骨ごときにこの金額は出せない...と思っていたのですが、そもそもこの共同墓地に入れるのは抽選なんだとか。そしてその抽選はかなり狭き門。つまり抽選に当たらなければ入ることすらできないんです。お骨の処理を国民に任せておいてその処理先を用意しないってのはいささか問題だと思うんです。今後この手の問題は加速しそうですね。
そんな感じで困っていたところ、現在のお墓を管理しているお寺から提案がありました。
わが一族の墓はお寺が管理する墓地にあります。檀家のため無料でその土地を利用しています。その代わり檀家費用や都度の法事の際にお布施を払わなければなりません。今回墓じまいをするってことでお寺にその旨を伝えたところ、親の代までは檀家として残り、お寺の共同供養塔に入れるのはどうか?という提案でした。この形であれば1袋30万円で対応してくれるとのこと。
まぁ結構な金額。6柱で180万円です。
ただ公共の霊園と違うのは1柱ではなく1袋です。この「袋」とはお骨を入れる入れ物のこと。つまり袋に入るならば6人分も可能ってわけです。スーパーの特売にある人参詰め放題とかのソレですが、お骨詰め放題を30万円で対応してくれるってことです。うまくやればはこっちの方が安く済みます。
親としても墓参りはしたいようなのでこの形で話を進めることとなりました。
お骨を別の場所に移動する場合、改葬許可の申請が必要です。散骨の場合は基本的に許可申請は不要のようですが、これに関しては各自治体によって対応が変わるようです。
申請書は現在お墓のある行政区の役所に申請します。
私は世田谷区なので世田谷区役所の戸籍課。
このような書類を持っていくのですが、ぶっちゃけるとそこまで厳密に書かなくても大丈夫そうです。現在のお墓の中にあるお骨の数はおそらく6柱。最後に納骨室を見たのが祖母が亡くなった時なので記憶が曖昧です。位牌から推測すると祖父母、曾祖父母、高祖父、高祖伯父で一番古いのが100年前の大正時代のころです。まだ埋葬の法律や現行戸籍法ができる前のモノです。そのためわからないものは「不詳」で構わないとのことです。
おそらくこの書類は改葬時にトラブルがあったときに必要な書類なのでしょう。骨ですが広義には死体を掘り起こしてるわけですからね。一応罰則規定はあるようですが、書類を用意しなくてもどうとでもできそうな感じです。ただ申請に費用はかからないのでちゃんと申請すべきです。
この書類が出来ればお骨を移動できるようになります。
次の作業は墓じまいです。墓石の撤去と墓場の整地、これらは墓石業者に頼むしかありません。見積もりをとったところ30万円とのことでした。
ここでも30万円!
探せばもっと安いところもあるのでしょうが、この辺りが妥当な金額なんじゃないでしょうか。
永代供養の30万円、墓じまいの30万円。計60万円で済んだのはよいのかもしれません。これでお墓のことを悩まなくて済むし、私が死んだらゴミとして処分されるわけです。年取ってからこの手の作業をするのはしんどいですからね。まだ動けるうちに終活はすべきでしょう。
ってことで墓じまい当日。
墓石解体業者がお墓から骨壺を出してくれます。事前通り6柱あります。
骨壺は素焼きのものと陶器のものがあります。素焼きは水が抜けますが、陶器は水が抜けないんだとか。そのため骨壺の中は水浸しです。酸性雨で消えてなくなると聞きましたがガッツリ残っています。
ここで問題が発生。お骨を入れる袋、案外小さい問題。
まぁ事前説明の時からわかってはいたんです。
「悪いなのび太、この袋、二人分の骨しか入らないんだ」
祖父母の骨と他の4柱の骨を少しずつ入れるだけでいっぱいいっぱい。もうこれ以上は入れられません。追加をするとしても2袋必要なので60万円かかります。そんなわけで残りの骨は私が処分することになりました。
これを処理しなければならないってのは、骨が折れますね。
記した通りお骨を捨てれば死体遺棄で逮捕されます。そのためちゃんと供養しなければならないようです。「宗教観は人ぞれぞれ、ごみとして捨てるのも供養のうち」って考え方もありますが、そこはちゃんとした方がよいでしょう。まぁ費用が掛からず無難な方法は散骨になるんじゃないでしょうか。ってわけで散骨の準備をしていきます。
散骨、つまり骨をまくこと。お骨をそのまま海や川にまくとそれを見つけた人が警察に連絡、死体遺棄事件へと発展してしまいます。そのため骨とわからない状態まで砕く必要があるそうです。人が見て骨とわからない状態であれば海や野山に撒くこともできます(埋めているわけではないので山でもOK)。
海にお骨を撒くってなんとなく不法投棄っぽく感じますが、宗教的な意味合いが強い散骨は不法投棄には当たらないんだとか。それであれば骨を砕いて多摩川に流してあげれば、そのまま東京湾まで流れていき、それを魚が食べ、江戸前寿司へと転生できるのでしょう。
ってわけで骨を砕く作業を行いますが、ガッツリ骨の形しています。
骨を粉砕してくれる業者はあるようです。洗浄、乾燥そして粉砕までしてくれるようで値段は差がありますが概ね1柱あたり3万円前後。安いところだと1万円で対応してくれるようです。費用を抑えるのであれば自分で砕くしかないでしょう。そして私は費用をかけない選択をしました。これより骨を砕きます。
必要な道具は金槌、土嚢袋、ザルです。
レジ袋はすぐに破けるので土嚢袋を2重にして上から金槌で叩いていきます。土嚢袋も使っていくと破れるため適時交換してください。
やっていることは死体損壊。しかも4体分。それを白昼堂々とやっています。
祖先の骨を金づちで潰す。かなり罪深いことをしている感じ。でもこれは現世に生きる私にしかできないこと。この罪、さすがに親に背負わすのは悪いため、私ひとりでやることにしました。
この骨を粉砕する行為は刑法第190条の死体損壊に該当します。
「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は三年以下の懲役に処する」とあります。私は遺骨を損壊しているため同条が適用されます。いわゆる「バラバラ死体損壊事件」です。いや、粉々死体損壊事件でしょうか。
ただ刑法第35条には「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」とあります。私のこの行為が違法性阻却事由に該当するかは警察や検察が判断することですが、たぶん大丈夫でしょう。
この土嚢袋にいれて骨を砕く行為が「死者に対する一般的な宗教的感情や敬けん感情を害するもの」に当たるかどうかは賛否あるかと思いますが、骨を砕くのは散骨に必要な行為です。
骨を細かくすることで他者が遺体を発見することが難しい状況を作り出すわけですが散骨は習俗上の埋葬のやり方です。そのため海に捨て...散骨しても死体遺棄にもならないはずです。
フライドチキンの骨をイメージしていましたが、案外簡単に砕けます。ひとつの柱に対し20分くらいの作業で細かくなります。ただこれだと少し粗いですね。理想は2mm以下なので根気よく砕かなければなりません。
ただ水分をかなり含んでいるため骨汁が結構飛び散るんです。そのため骨壺から出した後は一度乾かした方がよさそうですね。骨を砕いているときに匂うのは石灰の香り。土に撒けば土壌改良剤にもなりそう。
乾燥させ100円ショップで買ってきたザルで濾していきます。
ほぼ見た目は砂っぽいかんじ。公園の砂場に撒いてもバレないくらいです。恐らくバレないでしょうが、ちゃんと散骨をしましょう。
私の生まれ故郷、川崎。
川崎は多摩川に沿って東西に長く、多くの川崎市民が多摩川の恩恵を受けてきました。かく言う私も多摩川には色々な思い出があります。ヤンキーに絡まれたり、カツアゲされたり...。私にとってはよい思い出です。
インド人はインダス川を聖なる川とし、そこで散骨をするようです。私にとっても多摩川は生まれ育った親しみのある川であり、そして聖なる川なんです。
行く河の流れは絶えずして、もとの水に非ず。
万物流転とは輪廻転生の考えに近しいです。まさに多摩川は輪廻転生にうってつけの場所です。
当家は仏教信者。それであればインドに倣い、多摩川に散骨するのが最適なんじゃないでしょうか!
多摩川なら近いので遺骨をすぐに捨て...処...供養できます!
でも、海洋散骨ってのはよく聞きますが、川で散骨ってのを日本では聞きません。インドでは一般的なのに日本だとそういうのないんですね。
いろいろ法律を見ても特段問題はなさそうですが、念のため多摩川を管理する国土交通省に確認をしてみました。
国交省職員「川に散骨をするのはやめていただきたい」
国交省からはこのような回答となりました。散骨が認められないのは無用なトラブルを避けるためってのが理由なんだとか。
まず、散骨を禁止する法律はありません。市町村の条例で散骨を禁止しているところはあります。北海道長沼町では「長沼町さわやか環境づくり条例」が平成17年に制定され、墓地以外の場所での散骨は禁止されています。秩父や諏訪市、御殿場、湯河原、熱海、箱根など禁止ではないものの何らかの規制のある地域は全国にあるようです。ただそれらは条例の範疇で、国では規制していないのです。
つまり、多摩川に散骨をしても法律上は問題がない。
でも国交省としては散骨はしてほしくないそうです。散骨を禁止する法律はないが、多摩川は国交省が管理する地区。管理者として、散骨は認められないってことでした。世の中には声の大きな人がいるもので、そういった人たちとのトラブルを避けたいようです。
法律で規制されていないので散骨は問題ないのでしょう。むしろ散骨禁止は基本的人権の「葬送の自由」を侵害する行為です。もちろん基本的人権は公衆衛生や公共の福祉ってのが前提ですが、川への散骨が公共の福祉に反するとは思えません。それってインド人が公共の福祉に反する人種と言ってるようなもんですからね。
まぁ管理者がダメだっていうならそれは従うしかありません。生まれ故郷である多摩川。そこに散骨できないってのは残念ですが、そもそも私の生まれ故郷は川崎ですが、先祖の出身地は千葉でした。ぜんぜん川崎関係ない。
ってわけで千葉の海にまきます。千葉県も調べたところ散骨に関する規制はないようです。散骨業者もあり、船をチャーターして遠洋で散骨するんだとか。あとは東京湾の比較的近場で散骨する業者もあるようです。でも私は船を所有していないし、チャーターするのも費用がかかります。そのため余り迷惑がなさそうなところに散骨しました。
今回の散骨費用、土嚢袋と金槌はあったので100円ショップで買ったザルと、千葉の往復交通費だけでした。墓じまいと自分で散骨であれば30万円ちょっとでできます。墓石除去の費用を安く抑えられるならば、20万くらいでどうにかできそうな感じです。
現在は市区町村の条例程度で散骨を禁止する法律はありません。信教の自由を保護するため、国としても規制できないところがあるのでしょう。しかし今後私のように信仰心の低い人が遺骨の処理に困って散骨を考えるケースは増えるのでしょう。そうなると散骨の法規制ができるかもしれませんね。
法律で規制され、行き場を無くしたお骨。
これは新たなビジネスチャンスじゃないでしょうか!
樹木葬や海洋散骨といったビジネスは現在でもあります。でも「毎年お盆に供養がー」とか「ご先祖様への供養が―」とかで、なんだかんだで結構いい値段なんです。市が管理する共同墓地でも10万円。樹木葬だと50万円くらい。イオンの散骨は5万5千円ほどかかるようです。
供養したい気持ちもあるんですが、先立つものがない。でもお骨を処理しなければならないって人もいるでしょう。例えば1万円で骨を処理してくれる業者が現れたらいかがでしょう。ちょっと地方の空いた土地に散骨してくれる。郵送で骨を送るだけ。供養も何もできないけど、骨を処理してくれる。
一年間の死亡者数はおよそ150万人なんだそうです。そのうちの1割の15万人が利用すれば15億円になります。1%だったとしても1億5000万円です。空いてる土地に骨をまくだけで1億5000万万円もらえるんです。これ、いいビジネスなんじゃないでしょうか!
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