消えた檳榔西施を探せ!街道沿いにある怪しい檳榔売り
台湾はタバコが吸えるところが少ないです。
台湾の喫煙率は15%前後。アジアの中では禁煙対策の先進国となんだとか。
日本も嫌煙に向っており現在の喫煙率は20.1%。年々減少しているようです。
かく言う私も2016年に紙タバコをやめ、2019年に電子タバコをやめました。紙タバコをやめてもうじき10年。禁煙はどうにか続いています。
台湾はタバコ害防止法という法律があります。1997年に施行された法律で日本の受動喫煙防止法みたいなものでしょうか。この法律が結構厳しく、すべての公共施設の屋内では禁煙となりました。公共施設はホテルやバー、ナイトクラブも含まれており喫煙所以外の場所では吸えないようです。路上喫煙は禁止されてませんが歩きたばこは禁止。また路上喫煙に関しても吸えるところが限られており、台北市ではコンビニなどの店舗前は禁止エリアとなっています。
電子タバコに関しては昨年二月の法改正で製造、販売が禁じられており輸入も違法。そのため日本から電子タバコや加熱式タバコを持ち込むことができません。電子タバコはタイも禁止されていました。
喫煙者は世界的に肩身が狭いですね。
このように煙草の喫煙文化が衰退していますが、台湾にはビンロウを喫する文化が残っています。
台湾では「檳榔」と書かれた看板をいくつも目にします。日本人にはあまり馴染みのないビンロウ。
ビンロウとはアジアや東アフリカに自生するヤシ科の植物で種子が嗜好品として利用されています。いわゆる噛みタバコに近いものでアルカロイドを含むビンロウはニコチンと似たような効果が得られるようです。
ビンロウは1500年前から嗜まれており、台湾の先住民は祭事の際に利用していたそうです。
製造量は年間10万トン程度でお米に次いで二番目に生産額が多い作物なんだとか。
使用者の多くは肉体労働者や長距離ドライバー。眠気覚ましの効果のあるビンロウは過酷な労働をする人たちに人気なのでしょう。そういえばミャンマーに行った際、バスに荷積みをする人たちがビンロウを使っていたのを見かけました。
ビンロウを嗜む文化があるといっても台湾人の使用率は6%程度とかなり低め。とくにビンロウは口腔ガンや食道ガンのリスクが高いため、利用者は年々減少しているようです。
台湾のビンロウは日本国内への持ち込みは原則禁止となっています。
持ち込み禁止なのは指定薬物ってのが理由ではなく防疫上の関係からです。ビンロウは南国原産の植物。そのため沖縄にも自生しているようです。このように日本でも手に入らないわけではありませんが、それでも流行らないのはそこまで魅力的な効果が得られないってのが理由なのでしょう。でもどんなものなのかちょっと気になります。せっかく台湾にいるんです。一度くらいは経験しておくべきですよね。
コンビニよりもビンロウ屋の方が多い台湾。そのため入手はしやすいのですが、せっかく台湾にいるんです。かつての台湾を味わえる店でビンロウを買いたいです。以前の台湾では檳榔西施(ビンランシースー)と呼ばれる女性が売り子をしていました。
西施とは紀元前5世紀にいた女性で中国四大美女の一人です。美の化身とされその美しさは魚が彼女に見とれてしまい泳ぐのも忘れて溺れてしまうほどなんだとか。美人の代名詞なので檳榔西施は美人な人がビンロウの売り子なのでしょう。
日本でも野球場のビールの売り子は女性がやっていることが多いです。球場に来るのは男性が多く、ビールを飲むのも男性が多い。売り子の見た目で売り上げが変わるなんてことも聞きます。
ビンロウを使用する人はいわゆるブルーカラーの人たちが多め。ビールの売り子と同じように異性が売った方が売り上げがよいんでしょう。そのためビンロウ売りは女性が多いのです。
美人から買おうとする下心丸出しの男性。女性が魅力的な方が売れるビンロウ。そしてコンビニよりも多いビンロウ屋。
下心を手玉に取る商売はサービスが過激化するもので、服装がどんどんセクシーになっていったそうです。下着姿で売ってる店もあったんだとか。
そう、あったんだとか。
水着や下着姿の女性がビンロウを売る。とくに幹線道路沿いに多いビンロウ屋。檳榔西施の美しさに見とれて事故を起こす危険がありました。また風紀上よくないため2002年に規制法ができ都市部で過激な服装をしてビンロウを売ることができなくなりました。檳榔西施がいなくなってから20年。もうその文化は台北市に残っていません。
そう、台北市に残っていないだけ。
都市部では禁止となっている。ってことはそれ以外であればあるんじゃないでしょうか!
ってわけでやってきたのは桃園市中壢です。
桃園市も過激な服装が規制された地域ですが今でも檳榔西施がいるんだそう。その辺で買えるビンロウですがわざわざ1時間以上かけてやってきました。
長距離運転手がよく利用するビンロウ。そのため大通り沿いにあるようです。場所は台1線と呼ばれる縦貫道路。台湾の南北をつなぐ主要道路のようで多くの車が往来しています。ここであればビンロウが売っているでしょう。
こんな感じでビンロウを扱っている店がありますがこちらは普通のビンロウ売り。
台湾の大動脈と言われる縦貫道路。なぜかそんなところにある大人のおもちゃ屋さん。これは怪しいビンロウ屋が期待できそうです。
これまでのビンロウ屋とは少し様子が異なります。看板がピンク色なのはそっち系の店ってのは万国共通。そして「姫」の文字。ゼッタイ求めているビンロウ屋のはず。
こちらは曖昧とかかれて中心には女性の後ろ姿、そして「LOVE」の文字。文字の色はピンク。ここもそっち系っぽいです。
こちらはネジの看板ですがビンロウ屋の近くにあるとなんかエロく感じてしまいます。
こちらもピンク色の看板。「媛」の文字。パンイチの女性が接客してくれるのでしょう!
でも、そこまで過激じゃない。
たしかに女性が接客しています。そして若いです。でも服装が過激とまでは言えません。歌舞伎町のキャバ嬢くらいの服装。タイトミニドレスを着てるのでビンロウを売るのに似つかわしくない服装ですが過激ではない。まぁでも若い人から買うってのはいいもんですね。
せっかくなんでビンロウ買ってみました。
ホテルは禁煙ですがビンロウは禁止されていません。
ビンロウはビンロウの実にキンマというマレーシア原産のコショウ科の葉っぱが巻かれています。キンマの葉には陶酔成分は含まれていませんがキンマには石灰が塗られてます。この石灰によってビンロウのアルカロイド成分を引き出すのでしょう。まずは石灰なしでビンロウだけを噛んでみます。
繊維質の何か。竹を食ってる感じ。少し甘みがあります。鼻を抜ける臭いは夏草。青臭くてあまりおいしくない。多少刺激があるのでこれが陶酔成分の効果なのでしょうか。正直なところただ苦い繊維質の草を食べた感じでした。
ってわけでキンマと石灰、ビンロウを混ぜたものを噛んでみます。先ほどと違って口の中が痺れます。恐らく陶酔成分の効果。口の中がしびれる感じだけ。近いのがチョウジを噛んだ感じ。キンマの葉の効果なのか唾液量が多くなる。吐き出した唾液は茶褐色。
あまりおいしいものではない。
そう。あまりおいしくない。そして陶酔効果はかなり限定的。なんとなくホワっとするもののかなり弱め。
どうやらアルコールを飲んでいる人、タバコを吸っている人は陶酔効果が少ないんだとか。もう耐性ができているってことなのでしょう。
ビンロウは依存性もあるようですが、タバコ以上に面倒です。
台湾では廃棄物清理法という法律がありビンロウを噛むことによって出た唾液やビンロウを路上に吐き捨てることが禁止されています。ビンロウと一緒にコップがついてきているのはそのせい。
しかしビンロウを吐いたであろう跡が台湾の路上では見られます。
凄い使い勝手の悪いビンロウ。その割には陶酔効果も限定的なので日本で流行らなかったのも頷けます。それだったらコンビニでも売っているアルコール度数が9%の100円で買える酒の方がよいのでしょう。
私はビンロウにはハマりませんでした。
でも台湾では多く生産されビンロウ屋が成り立つ業種のようです。もしかしたらあなたはビンロウにはまるかもしれません。