安酒界のシンギュラリティ。ブラックニッカディープブレンドのすごさ
私がかつて愛飲していたウイスキーはバルヴェニー12年ダブルウッドっていうスペイサイドのシングルモルトでした。甘みがあり上品な味のバルヴェニー。その当時は3000円程度で買えたんです。たしか10年くらい前のはなし。
現在のバルヴェニー12年の希望小売価格は6700円。実際の定価は10000~15000円。並行輸入品でも7000円くらいします。3000円で買えていた比較的良心的なウイスキーだったのに、今では三倍の価格となっています。流石に気軽に飲める金額ではなくなってしまいました。
原酒不足も時間が経てば解消するなんて言われていましたが、それもまだ解消はされず。そもそも物価高で円安なので洋酒はかなり高くなってしまっています。このように気軽に美味しい酒が飲めなくなりました。
そうなると安酒に手を出すしかないんです。
別に安くても美味しい酒は色々あるんです。数多ある安酒の中から良い酒を探すのも一興です。良い酒に巡り合えた時の感動は計り知れません。
そのような環境の中、これまでで安くて一番おいしいと思ったのがこちらの酒です。
ブラックニッカディープブレンドです。
ブラックニッカと言えばヒゲのおじさんのウイスキーです。サントリーのトリスと並ぶ安酒の一つ。10年前は比較的安い価格でシングルモルトが買えていたため、飲むことはほとんどありませんでした。大衆居酒屋でウイスキーを頼むと出てくるやつ。スナックのハウスボトルでキングウイスキー 「凛」よりはマシだけど、まずいイメージがあったんです。底辺の酒とその当時は思っていました。
実際に山崎や白州、余市などのシングルモルトと比べると、やはり劣るんです。そんなわけで避けていたのですが、近年はもっぱらヒゲのおじさんかトリスおじさんにばかりお世話になっています。そしてそのヒゲのおじさんが出すウイスキーの中でもこちらのディープブレンドは最高峰と言って間違いないでしょう。
何が良いってそれは値段です。1400円と安いんです。スーパーマーケットならもう少し安い値段で買えます。そしてそれは4000円以上の価値がある味わいです。初めて飲んだ時衝撃的でした。この価格帯でこの味が出せるってのに驚きです。
コストパフォーマンスがよいのでそれ以降私は散々これを飲んでいました。そして本日はその愛飲しているディープブレンドを紹介します。
ブラックニッカってストレートではなくソーダで割るのが正しい飲み方っぽいように言われていますが、ディープブレンドはロックやストレートで飲むのがおススメです。ロックの方がストレートよりも香りが楽しめるし、氷の解け具合で味の変化も楽しめます。でも面倒なのでストレートで飲みます。
比較的甘みが強くバニラっぽい感じがします。まさに私が飲んでいたバルヴェニーに近い味わい。ピート香もしっかりあり、流石は余市を作っているニッカってだけあります。どうやら海外のモルトを混ぜているようなのでスペイサイドのモルトを使用してそうですね。
シングルモルトの余市も入っているっていう噂もあります。サントリーオールドは山崎、サントリーリザーブは白州の原酒をキーモルトとして利用しています。それと同じようにブラックニッカも同社が製造する余市を足している可能性はありそうです。ピート香はそれ由来なのかもしれませんね。
この低価格でこの味を出せるってのが素晴らしいですね。なにか足してるんじゃないかってレベルの味の差があります。今のところこの価格帯でディープブレンドの右に出るものはいないです。
味に特徴があるので好みはわかれますが、ウイスキーが好きな人にはディープブレンドは美味しいと感じられるでしょう。もちろん高いお金を払えばもっとおいしいモルトは飲めます。でも1000円台でおいしいウイスキーを味わえるのであれば、もうそれでよいですよね。ヘタなモルトウイスキーよりも味にまとまりがあっておいしいんです。
コロナ禍以降、ウイスキーを飲む機会が減ったのはこのディープブレンドがあったからです。
それまでは値段相応で価格帯を基準として味が判断できました。高いものは美味しく、安いものはそれなりの味ってのが値段でわかったんです。しかしディープブレンドはその基準通りではありませんでした。
まさに安酒界のシンギュラリティ。
「安酒は安い味」ってイメージをディープブレンドは覆したのです。
目新しいものを見つけても失敗のリスクを考えるとなかなか別の酒に手が出せなくなります。今ではディープブレンドが基準の一つになってしまったし、ディープブレンドさえあれば何もいらないって状態になっちゃってます。
同じ価格帯でこれを超えるウイスキーはもう現れないんでしょう。そしてディープブレンドより高いのに美味しくないウイスキーは山ほどあります。そんなわけでウイスキー離れが加速してるんです。最近はウイスキーに手を出すのは諦め、ラム酒やテキーラを飲むようになりました。
もうウイスキーは、ディープブレンドで充分です。
今宵のアテはさきイカで。ウイスキーのアテはもっぱら甘いものを食べますが、日本のウイスキーにはやはり魚が相性がよいでしょう。しかも北海道産のスルメイカを使用しています。ニッカウィスキーディープブレンドの生まれはたぶん北海道の余市。そりゃ相性が良いわけです。
北海道で造られたものに合わすのならばやっぱ北海道のものが良いんです!
製造しているのは千葉県柏市でした。