それは底辺の味!ストロー酒、いろいろ飲んでみた
以前は頻繁に飲みに行っていました。居酒屋やバー、スナック、キャバクラ、ピンサロなど、朝まで飲み歩いた日もありました。ただ年とともにオールは身体への負担があり、2020年以降は自粛の日々が続きました。そのため外で飲む機会が減り、今では宅飲みが主となっています。しかしその宅飲みも円安、インフレ、物価高により負担が多くなっています。これまで気軽に飲めていたお酒が倍の値段、三倍の値段になってしまったのです。とくに嗜好品である酒は価格高騰が顕著で気が付けば安い酒を頻繁に飲むようになってしまいました。
でも安くたって美味しい酒は必ずあるはず。最近だと安い酒の中でうまい酒を探すのが趣味となりつつあります。
こちらパック酒です。ストローがついてるヤツ。コンビニやドラッグストア、スーパーなどで見かけます。容量は180mlなので一合。価格は100円前後です。
日本人は西洋人に比べるとアルコール耐性が低く、日本人の半数が「お酒の弱い人」なんですが、ビール、酎ハイ、発泡酒、そして日本酒といった具合に結構お酒の種類があります。とくに國酒と言われる日本酒は多種あり、酒蔵は1500、銘柄は1万以上あるそうです。全部の銘柄を飲むには毎日飲んでも30年かかるんです。
そしてこのストロー酒もその銘柄の一つ。これを飲むことで残り9999銘柄となりました。
ストロー酒について、ちまたではこのように言われています。
底辺の飲む酒。
アル中が飲む酒。
ストロー酒はヤバイ。
このように評価はあまりよくないです。
確かにイメージは悪いです。だってちゃんとした日本酒があるのに、わざわざパック酒、しかもストローで飲む必要はないし、コンビニならワンカップがあるじゃない!そっちで良いと思うんだけど、ストロー酒を飲むってことは手が震えてるからコップ酒じゃ飲めないってこと?ハンズフリーで飲めるストロー酒だからそれを選んでるってこと?このような憶測から「ストロー酒はヤバい」って巷では言われてるんです。
でも、君はそのヤバいに一度でも触れたのだろうか?
ヤバいの先を見たのだろうか?
何をもってヤバいのかを理解した上でその発言をしたのだろうか?
おそらく大半の人は「なんとなくヤバい酒」って印象しかなく、外野がそのように言ってるから同調したに過ぎません。私もかつては大衆と同じ考えで「ストロー酒とか飲むとかヤバいな」と思ってました。このようにストロー酒は風評被害を受けているのです。
でも周りに合わせるのはもうやめようと思ったのです。
ヤバいかどうかはかは、この舌で確かめる!
とりあえず近くで売ってるストロー酒、片っ端から飲んでみたいと思います。
ってわけでまずはこちら鬼ころしです。108円。
こちらは小山本家ってところが出している鬼ころしです。
鬼を殺すほどうまい酒、もしくは鬼も酔う酒、はたまた鬼ですらまずい酒って意味でしょうか。
鬼ころしって一つのメーカーが出してるものだと思っていましたが多種多様の「鬼ころし」があり、その名はパブリックドメインとなっているようです。どっかがてっきり商標取ってるもんだと思ってました。
つまりは新しいエナジードリンクに「鬼殺し」と名付けても商標権侵害にならないのでしょう。英語だと「デーモンキラー」になるのでしょうか。なんか雰囲気がありますね。ちなみに鬼滅の刃は英訳するとデーモンスレイヤーなのでほぼ同じです。
この酒は「鬼滅の刃」とほぼ同義。
そしてこの酒「デーモンキラー」。
苦みのあるキツメのなにか。でも後味はスッキリしています。
こちらも鬼殺しの名を冠する酒です。
清洲城信長パック鬼ころし。容量が1.5合あって159円。スーパーやドラッグストアで売ってる鬼ころしは大抵コレです。
日本には酒吞童子伝説ってのがあります。京都の北側、丹波には酒吞童子という鬼の頭領がいたそうです。酒好きからこのような名前で呼ばれていたんだとか。源頼光が用意した神便鬼毒酒という毒酒を飲んだため酒吞童子は退治されたんだとか。それが鬼殺しが酒の名前となる由来のようです。
神便鬼毒酒は鬼には毒のようですが、人間には健康に良い飲み物なんだそう。私は医者に飲酒を控えるように言われています。
どうやら私は鬼に類する種族のようです。
こちらの鬼殺しは酸味がありますが軽めの口当たり。ちょっと辛口で日本酒っぽい味がします。1合だとちょっと物足りないって人のために少し多めになっているのが良いですね。
さらに鬼殺し追加します。
こちらは日本盛の六甲山麓鬼ころし(赤)です。値段は100円。
コンビニでよく見るやつですが、これはファミマ限定の特別鬼仕様となっています。味は同じですがデザインがちょっと違うようです。
日本盛は大関、白鹿にならぶ兵庫県の日本酒メーカーです。創業は明治でかつては天皇の御用酒として納品していたんだそう。現在はコンビニで見る機会が多く、知らずのうちに日本盛の酒は飲んでいました。そもそも私の鬼ころしの印象は日本盛のものでした。
そんな天皇御用達の日本酒をストローで。辛口で刺激が強く苦みがあります。
こちらも日本盛の鬼ころししぼりたて「青」です。100円。赤と青で味の差を出しており青はフレッシュな味なんだとか。でもフレッシュな味わいはあまり感じませんでした。余韻は他の日本酒よりあっさりしてます。おそらく赤と同じ酒を使用しており、糖類や酸味料で味の変化を出してるんでしょうね。
そして鬼ころしの最高峰。ゴールドです。こちらは小山本家のやつです。パック酒の平均度数は13度ですがこちらは15度と少しだけ高め。そして値段も高めの112円。
まさにこれは「上撰の鬼」。ほかの鬼殺しは砂糖が添加されていますがこちらのは砂糖なしです。キレがある口当たり。結構おいしい。
こちらは界(かい)という酒。小山本家です。108円。小山本家さんのストロー酒が多いですね。
度数が少し高めの17度で飲んだ後感じるアルコールっぽさが強めですが飲みやすくはあります。
紙パック酒ってのは安く買えるけど品質の悪いイメージがあり、そのイメージ通り質の悪い日本酒も混ざっています。有り体に言えば米のとぎ汁にアルコールを混ぜただけなんじゃないか!ってやつもあるわけです。まぁ実際のところそこまで酷い日本酒に出会うのは稀ですが、質が悪いイメージが先行し、貧乏人が飲む酒、パック酒を手に取るかは人であるか否かの境目と言われることもあるでしょう。
こちらの「界」はパック酒のその界(さかい)を超えるひとつ上の新しい品質を目指した日本酒なんだそう。たしかにほかの日本酒はアルコール度数が13度前後ですがこちらは17度。度数が高いため味もどっしりしているのでしょう。これが晩酌の常識を変えるのでしょう。
でも「新しい品質を目指した」とあるように新しい品質になったのではなく現在進行形、つまり目指しているだけで達成はしていないようです。
三太郎も小山本家の日本酒です。270mlで148円。三太郎ってことで桃太郎、金太郎、浦島太郎の三人の絵が描かれてあります。強くて、旨くて、優しいってのを三太郎にかけているのでしょう(しらんけど)。
鬼成敗ともかかれてありますが、三太郎のうち鬼を成敗したのは桃太郎だけです。この「成敗」の意味は「鬼殺し」という意味なのでしょうか。とりあえず鬼を殺しておけばよいってのは日本酒メーカーの決まりごとなんでしょうかね。
大容量の270ml。度数は少し高めの15度です。
こちらの三太郎、糖類を添加していません。いわゆるストローで飲む紙パック酒のほとんどが「普通酒」と呼ばれるものです。
日本酒は製造方法や原料でカテゴライズされます。純米酒や大吟醸、本醸造酒ってのがソレで8種類に分類されるんです。例えば米と米麹だけで作られるお酒は純米酒、米と米麹だけで作られ、その米の精米歩合が60%以下のものは純米吟醸、それが50%以下となると純米大吟醸となります。
吟醸酒や醸造酒に関してはアルコールの添加が認められていますが、白米重量の10%以下でなければなりません。
このようにランク分けのようなものがあるんです。普通酒はそのランクに該当しないもの。酒税法では「清酒」が定義されており米・米麹を原料として発酵させて濾したもの、またはそれに別の原料を加えたもので度数が22度以内のものが「清酒」となります。
私はかつて30度の清酒を飲みましたがアレは清酒ではなく雑酒の扱いになっていました。酒税法の問題があるので定義はちゃんと守られているようです。
清酒と日本酒の違いは日本国内で造られているか否か、また日本国内の材料を使用しているか否かで判断されます。
米・米麹・水以外に添加物が認められており、醸造アルコールや焼酎、糖類、アミノ酸塩などを足すことが可能です。追加できる添加物は米・米麹の重量の50%を超えない範囲であれば可能です。バファリンの半分は優しさですが、普通酒の半分はなんだかわからない原料を使用しているようです。
三太郎には糖類が含まれていませんが醸造アルコールが多く添加されているのでしょう。度数が高いのにも頷けます。
味は少し辛口です。度数が高い割にはアルコール臭さありません。ただ強いためガツンときます。そして1.5合もあるので飲みごたえ抜群。
こちらはキクマサピンです。176円。他のストロー日本酒よりも少し値段高めの酒。そのため味も安定していて明らかに味の差があります。これまで飲んだストロー酒の中で一番おいしいです。味は濃く辛口。でも日本酒の甘みがあります。
値段が高いので懐と相談でしょうか。まぁ50円くらいの差ですけどね。
こちらの酒は菊正宗酒造が作っている日本酒です。同社の創業は1659年、今から400年近く前に創業しています。400年も続く酒造がつくるストロー酒。いいですね。
ちなみに日本酒で「正宗」を冠する酒がありますが、訓読みすると「セイシュウ」となるから清酒とかけてるんだとか(諸説あり)。そして同社は正宗で商標登録をしようとしたが一般名称のため受理されなかったことから「菊正宗」にしたんだとか。
こちらは教姫の「かみなり」って酒です。109円。比較的コンビニにも置いてある酒で、鬼ころしの次に見かけました。他のストロー酒よりも日本酒っぽい味わいがあります。安酒の味はしますが甘みもあり美味しいです。
値段と入手のしやすさを考えるとかみなりが一番良いですね。流石は酒どころ伏見にある酒造メーカーってだけあります。
こちらは沢の鶴の「米だけの酒」です。160円。ストロー酒のほとんどが普通酒に対し、こちらのは純米酒です。
中口とのことですが砂糖を添加していないため変な甘みがありません。アル添や砂糖添加が悪いわけではありませんが、こちらは美味しいです。ただ値段は160円と少し高め。
清洲桜醸造のしぼりたてです。82円。今回購入したストロー酒の中で一番の最安値。
清洲桜醸造は鬼ころしも出しているメーカーです。ボトルデザインは紫色の何か。こちら、ブドウの味がするんです。容器の色に釣られているのかもしれませんが甘みがありブドウっぽい味わい。おいしいです。
こちらはくらのすけという小山本家の酒です。99円。国産米100%使用って書かれていますが、日本酒を名乗るには国産の米しかダメなんだそう。つまり六甲のおいしい水って商品に「六甲で取れた水100%使用」って書いてあるのと同じ。伯方の塩って商品に「伯方でとれてます(本当は取れてない)」と書くのと同じ。でもこういうの書いてないとわからない人にはわからないんでしょうね。
後味はスッキリしています。この味はスタンダードな日本酒の味なんでしょうね。正直なところ味の差がぜんぜんわかりません。
こちらは北関酒造ってところが作っているトクマル原酒という酒。117円。一見すると普通の日本酒ですが、こちら日本酒ではありません。
容器のどこにも「日本酒」という記載はなく、「清酒」としか書かれていません。おそらく国外の米を使用して作られた酒なのでしょう。これこそ日本酒のその先にある底辺の酒なんじゃないでしょうか。
度数は20度と高め。度数が高いためアルコール臭さがあります。日本酒っていうより焼酎の日本酒味って感じの味。喉に引っかかり後味はあまり良くありません。辛口っぽいけど甘みも強いです。でもこれ、結構おいしいかも。すごい科学的な味がするのですが、このように味の分別がつくのは最初の一杯目だけです。以後は酔っているから味の差なんてわからないんです。
むしろ度数が高い方がお得感があるじゃないですか!一合180mlだけど、水で割れば360mlになるんです。しかも10度の度数を保ったままなんです。これ、ありなんじゃないでしょうか!
こちらも北関酒造が作っている祝駒です。99円。トクマル原酒と同じで日本酒ではなく清酒。
日本酒の酒造メーカーで有名なのは京都の伏見と兵庫ですが、そこから関東まで運ぶ場合、輸送コストがかかります。
ストロー酒は安くなければならない。
味云々よりも安く酔えるというコストパフォーマンス重視なので輸送コストのかからない北関東にある酒造メーカーのものが関東では多いのでしょう。栃木のあたりは水もキレイです。酒蔵が多いのも頷けますね。そして原料コストを抑えるため日本酒ではない何かを作っているようです。実際飲んでみて日本酒との違いはそこまでわかりませんでした。でも、ストロー酒は日本酒の方が安いのもあるんですよね。
こちらはヨイトマケという酒です。98円。北関酒造の作っている酒でこちらも日本酒ではなく清酒。
ローラーや転圧機の無かった時代、基礎工事の際の地固めは重量のある槌を滑車で上下させていたんだとか。滑車を使って縄を巻き取る際の掛け声が「よいっと巻け!」だったことからこの手の土木作業員の人たちを「ヨイトマケ」と呼んだそうです。技術を必要とせず、力さえあれば出来る業種だったことから日雇いで賃金も安く社会から蔑まれていたそうです。ヨイトマケで有名なのは美輪明宏の「ヨイトマケの唄」でしょう。ジャパニーズ・ブルースの代表作といってもよいでしょう。
そんな「ヨイトマケ」の名を冠する日本酒。まさに土方のための日本酒でしょうか。度数は20~21度、一般的な日本酒よりも少し高めです。口当たりは甘いですが度数が高いためけっこうアルコールの刺激があります。空腹で飲むと胃が熱くなります。度数が高いので日本酒版のストゼロでしょうか。べつに特記するほど美味しくはないですが、私はこの味が好きです。
日本酒のヨイトマケの名称由来が土方のための低価格な酒ってことなのか、土方のように強い酒って意味なのか、はたまた「酔い」にかけてこの名がついたのか不明です。でもなんか、ヨイトマケって感じの味ですね!
最近じゃモンスターエナジーやレッドブルのことを「魔剤」なんて言い方をしますが、本来の魔剤とはコレのことなのでしょう。コンビニなどで100円あれば手軽に買える魔法のようなドリンク。しかもそれをストローで飲む背徳感。ゼッタイに身体に悪いの間違いなし。でもこれがいいんです。
超有名メーカー、黄桜吞です。
黄桜か大関かってくらい昔からお世話になってる酒です。値段は109円。甘くスッキリまろやかでしつこくない味。さんざん飲んでるので慣れ親しんだ味です。パック酒なんて味の差はないだろうと思っていましたが、このように飲み比べると結構差があるようです。
散々お世話になっている酒ですが、容器には「日本酒」の記載がありません。
日本酒と名乗れない理由があるのかもしれませんが、原料は米も米麹も国産。おそらく製造所も国内のはずです。つまり日本酒が名乗れるのに敢えて清酒としているのでしょう。これを考えると北関酒造の作る酒も日本酒なのでしょうね。そもそも外国産米は輸入関税が高いため原料コストが高くなります。海外で製造するにしても輸送コストや関税のことを考えると最適とは言えないのでしょう。日本には合成清酒という清酒ではない酒もありますが、それとは違いパック酒のほとんどが清酒です。清酒と名乗っている以上、それらは全て日本酒と考えてよいのでしょう。
最後に玉乃光酒造が出している純米吟醸酒「玉乃光」です。様相が明らかに違います。
飲み口はストローが挿せるスタイルですが、ストローそのものがついていません。そのためストロー酒とは呼べない部類のものです。そして値段も他の酒に比べると2倍近く高く、味はこれまで飲んだストロー酒の中で一番日本酒らしく美味しいです。
結局は値段相応ってことなんでしょうね。
コンビニにはビールや酎ハイが売っていますがどちらも炭酸飲料です。炭酸を好まない人は一定数おり、その中で安く早く酔える酒は日本酒なのでしょう。そしてストローで飲むことで日本酒の味を最大限味わえるんです。
ストロー酒、悪くないです。
容器が小さくかさばらない。重くないから携行に便利。そしてゴミもコンパクトにできる。これなら駅前の路上で飲むだけでなく、アウトドアでも活躍します。そもそも都市部のアウトドアの人たち御用達の酒ですからね。
そして何よりアル中で手が震えている人でも溢さず飲めるユニバーサルデザインなんです。大人版のおしゃぶり。容器を手で持たなくても飲めるので、ゲームをしているときとかコントローラーを持ったまま酒が飲めるんです。そんでもって手ごろな値段でどこでも買えるうれしさ。
ストロー酒がヤバいって?そんなことありません。風評被害はやめましょう。私は10種類以上飲み比べてわかりました。
本当にヤバいのはストロー酒を飲んでいるヤツです。