横浜の外れのリトルサイゴン。ベトナム人街「県営いちょう団地」
近年、歓楽街にはフィリピンパブの代わりにベトナムパブが増えています。日本の在留外国人で一番多いのは中国人で75万人です。まぁそもそも中国は人口が多いため一番になるのは当然です。二番目は韓国かと思いきや現在は在日ベトナム人が増えているようです。韓国は特別永住者も含め41万人に対しベトナムは47万人。次に多いのがフィリピンで28万人なのでベトナムが突出していることが分かります。
中国人が在留外国人で一番多いのですが、外国人労働者の割合はベトナムの方が多いそうです。そのためコンビニや飲食店ではベトナム人率が高くなっています。
ベトナム人が増えだしたのは2017年頃から。外国人技能実習生制度が改正され実習期間が5年に延長されました。
以前までは中国人が多かったのですが、中国は近代化し、自国での賃金が上がったことから出稼ぎをする必要がなくなりました。その代わりにベトナム人が増えたようです。
ベトナム国内の平均月収はおよそ38000円ほど。年々増加傾向にありますが、まだまだ自国の賃金は安いのです。また若年層の失業率が高く、大学卒業生の就職難もあり、それらが理由で賃金の良い国外に働きに出る人が増えているようです。国外で技能や技術を身につければ自国に戻っても手に職があるわけです。しかし現実は体の良い労働者であり、労働力の搾取でしかありません。ある種の人身売買。今後、日本は移民問題や技能実習生の問題が大きくなるのでしょう。でも母国より稼げるから日本に来る人は絶えないのでしょうね。
こちらは県営いちょう団地です。横浜市泉区と大和市の市境にまたがってある団地です。全部で79棟あり約3600戸もある大規模団地です。ちなみに神奈川県では最大規模なんだとか。この団地の二割が外国籍の人で、ベトナム人が多く住んでいるそうです。つまり「リトルサイゴン」なんです。
いちょう団地にベトナム人がいるのは近年増えている外国人実習生ではなく、その歴史は50年前にさかのぼります。ここにベトナム人コミュニティができたのはベトナム戦争後から。1975年に南ベトナム共和国が崩壊するとベトナムやラオス、カンボジアから大量の移民が国外に脱出しました。総数は144万人。ラオスやカンボジアの人たちは陸路で近隣諸国へ逃げましたが、ベトナムの人はボートに乗って諸外国に逃げたのです。いわゆるボートピープルという人たちです。
ボートピープルの大半はタイやマレーシア、インドネシアなどの近隣諸国に逃げましたが、さらに遠くに逃げた人もいて、日本にも1975年に126人、以後四年間で3500人の難民が流れ着きました。その人たちを受け入れるため、大和市に大和定住促進センターを1980年に開設しました。同施設は98年に閉鎖しましたが定住支援を受けた人たちが「いちょう団地」に住みついたそうです。
日本にはコリアタウンやチャイナタウン、ブラジルタウンと色々な国のコミュニティがありますが、ここは他の外国人街とは出自が少し異なります。
神奈川県最大の団地。広さは東京ドーム6個分なんだとか。南北に1kmほどの範囲に団地があるためでかすぎて全てを見てまわれません。
県営団地なので貧困世帯も多く、また着の身着のままできた日本語が不自由な難民がいたわけです。その当時は結構荒れていたのでしょうね。スラムではないものの治安のよい場所ではなかったのでしょう。
いちょう団地の外国人割合は25%ほど。4人に1人は外国人です。実際に外国人だろう人を見かけます。ベトナムだけでなく中東の人も多いんだとか。そんなわけで標識も何語かわからない文字を見かけます。
県営住宅なので駐車場はありません。理由は車の所有が基本的には認められない人たちが多く住んでいるから。郊外ですが高座渋谷駅までそこまで遠くない距離です。車がなくても生活は出来そうです。
敷地内には自転車と原付が結構停まってます。また付近には月極駐車場が多くあります。
建物は総じて古いですが立地はとくに問題ないですね。新宿まで小田急線で一本だし横浜にも二又川を経由して行けます。近くにはスーパーもあるし高座渋谷駅前にはイオンもあります。県営住宅なので3Kで12000円くらいです。現在神奈川県では単身者でも一定の条件を満たせば県営住宅に入居できるようになっています。いちょう団地はほぼ満室だし、入居条件を満たせたとしても抽選になりますが、ここに住めるのならば家賃の負担が軽減できますね。
こちらは団地内にある商店街です。薬局、美容院、理髪店、洋品店、中華料理店、青果店にアジアン雑貨。一通りの店が揃っています。
こちらはアジアン雑貨の店。
ベトナム人が多いといっても恐らく一番多いのは中国籍の人でしょう。白酒が置いてあります。
白酒はヤバいですからね。でも違う銘柄のやつが気になります。
外国人が経営しているのでしょうね。なんか異国に来た感じ。
ここの長屋にはベトナム料理やカフェがあります。近年ベトナム料理店は増えていますが、いちょう団地のこのあたりはベトナム率が高めです。
こちらは町内にある「いちょう小学校」です。すでに閉校しています。同小学校は団地建設に伴い昭和48年に開校しました。一時は2000人を超えるほど生徒がいたそうです。しかし少子化により生徒数は170人を下回ったため500m離れた飯田北いちょう小学校に統合することになったそうです。同校の半数は外国にルーツを持つ生徒なんだとか。しかし生徒数はその後も減少し、統合したのにもかかわらず現在も170人程度しか子供がいないようです。
こちらは飲食店兼雑貨店です。
バインミーにフォー。いいですね。すでに別の場所で食事をしてしまったので今回は辞退しますが、次回ここに来たときはこちらで食事をしたいです。ちょうどお昼時だったため店内で食事をしている人がいました。ちょっとだけ異国期分。店員さんはおそらくベトナムの方です。
食事はしませんでしたが代わりにベトナムのビール「BIAサイゴン」を購入しました。日本で見かけるベトナムビールって333かハノイビールくらいですが、ホーチミンに滞在しているときはもっぱらこのビールを飲んでいました。安くておいしいんです。
ただビールがおいしく感じるのはその土地の気候にあっているから。ベトナムのビールはやはりベトナムで飲むのが一番なんでしょう。
近年は歓楽街にベトナムパブやベトナム料理店が増えています。わざわざここまで来なくてもベトナムは味わえますが、いちょう団地にあるお店はベトナム人のためのベトナム人が作ったベトナム料理店です。そのためよりベトナムっぽさが味わえるのでしょう。