高齢化社会だからできた台北駅近くの小さなインドネシア
本日は台北駅にいます。
台北駅は新幹線、台湾鉄道、MRTが乗り入れる台湾最大の駅です。日本でいう東京駅みたいなところ。
駅の周りにホームレスがいるのもなんとなく東京駅っぽい。どこの国も主要駅は社会福祉から漏れてしまった人が集まるものです。台北駅には結構そういった人がいるし住み着いている様子があります。まさに東京駅っぽいです。
そして東京駅と同じように駅には大きな地下街があります。台湾駅地下街は「地下迷宮」と呼ばれるほど大きいんだとか。
台湾の地下エリアはY、Z、K、Rエリアに分かれています。本日はYエリアのほうに来ました。
Yエリアは台北駅から北門駅まで全長825mの距離がある地下街で台北駅地下街の中で一番大きいエリアです。ブティックや雑貨、飲食店など色々な店があります。
お土産品なども扱っていますがなんとなくサブカル要素が強め。日本の漫画やアニメ、ゲームを扱う店が多くあるようです。そして結構お客さんも入っているようです。かつてはサブカルチャーと言われていたこれらのジャンルは近年メインカルチャーになっているようです。少なくとも台湾では主要駅に当然のように鎮座しています。
日本のサブカル要素が強めなYエリアですがそれ以外に目立つのがインドネシア料理です。こちらのレストランは自助式となっているのでバイキング形式。いわゆる経済飯を出しているお店。
またヒジャブをかぶっているアパレルブランドもあります。このようにインドネシア要素が強いのは台湾はインドネシア人が多く住んでいるからです。
インドネシア人が台湾に多いのは理由があります。
台湾は日本と同じように少子高齢化となっており、古くからその問題を抱えていました。
65歳以上の割合は日本は29.1%、台湾は17.5%なので日本の方が高齢化の問題を抱えていますが、出生率は日本が1.26に対し台湾は0.87。そのためこのペースで少子高齢化が進めば台湾も2050年には高齢化率が40%を超えることになるんだとか。
出生率が低い原因は女性の高学歴化、女性の社会進出、育児休暇による収入減の不安、養育費や住宅費の高さ、将来の不安。台湾政府が補助金など政策を講じるも出生率は変わりません。日本も台湾も問題点は変わりないようです。
働き手がいなくなる。労働者不足は日本でも抱えている問題で、近年外国人労働者を受け入れる政策に移行しています。
日本は最近になって労働者の受け入れを緩和しましたが台湾は35年前の1989年から外国人労働者の受け入れをはじめました。
1987年に戒厳令が解除され自由化とともに台湾の経済は急速に発展。労働者不足の不安からタイから1000人ほどの労働者を受け入れたそうです。外国人労働者ができる仕事は当初は公共事業における建設業に限られていたようですが、その後は製造業にも適用されました。以後も受け入れ続け、2023年には73万人を超えました。
ちなみに日本の外国人労働者の数はおよそ200万人。数字だけ見ると日本も多いですが台湾は日本の総人口の5分の1。国土面積も差があるため台湾に外国人労働者が多くいるってのがよくわかります。
外国人労働者の国籍割合は日本と同じようにベトナム人労働者も多いのですが一番多いのがインドネシア人。インドネシアは4番目に人口が多い国、かつインドネシア政府が労働者送り出し政策をしていたため増えたようです。
そして前出の台湾高齢化問題。もともと台湾の外国人労働者は建設業や製造業で雇用される割合が多かったのですが、近年は介護分野の外国人労働者が増えているんだとか。ちなみに製造業と介護の二つの業種だけで外国人労働者の97%を占めているんだそう。
日本でも介護士やヘルパーが不足している問題があります。労働条件が厳しい割には収入が少ない介護業界。なり手がいないのは全世界共通のようです。台湾では外国人介護士を受け入れているようで、介護関連で働く6割が外国人。そのうちの8割がインドネシア人女性なんだとか。
外国人介護士だと雇う側の負担は少ないです。政府が決めた最低賃金があるようですが、その最低賃金で雇用できる。住み込みの介護士であればさらに少ない金額で雇用できます。そのため台湾では住み込み介護が一般的なようです。住み込みであれば家賃も食費も不要ですが労働時間が曖昧な状態になります。また閉鎖的な環境だとパワハラやセクハラなども横行するのでしょう。当然ながら外国人差別もあるのでしょうね。台湾ではこれが社会問題になっているようです。
こんな感じで少子高齢化、労働者不足、それらが理由でインドネシア人が増えた台湾。インドネシア人が増えたってことは、インドネシア人街、つまりリトルジャカルタが台湾にもできるはず。本日はリトルジャカルタに行きました。
台北駅の東側。駅にめちゃくちゃ近い場所です。東京駅で考えるなら八重洲ブックセンターのあたり。そのような近距離の狭い路地にリトルジャカルタがあります。台北駅は台湾最大の駅ですが、駅前はこんな感じの路地があります。一等地にあるリトルジャカルタ。インドネシア人が多いのが理由なのでしょうね。
リトルジャカルタがあるって言ってもかなり小さいです。インドネシア系の店が数軒あるだけ。
リトルジャカルタにある店は日曜日しか営業していないのがほとんど。その理由はインドネシア人は日曜日にしか自由が無いから。
記した通り多くのインドネシア人が住み込みの介護に従事しています。自由な時間は日曜日しかないため労働者が自由となる日しか開けていないんだそう。台北駅の近くはこのように憩いの場となっているようです。
私はバリ島に三回ほど行っていますが、それ以外のインドネシアの経験がありません。ムスリムが多いインドネシアではヒンドゥー教が根付くバリ島は少し特殊な場所です。そのため私はインドネシアに行ったとは言えません。せっかく目の前にインドネシアがあるんです。
インドネシア、満喫しましょう!
平日でしたが二軒ほど営業していました。台北駅はにぎやかですが少し外れると静かな街並みに。店内にはインドネシア人と思われる店員がひとりと、インドネシア人と思われる客が二組。それに場違いの日本人。台湾にいるのに台湾要素なし。
いわゆる経済飯も提供している様子。でもせっかくなんでそれっぽいものを注文します。頼んだとはナシゴレンとサテ。
ナシゴレンはインドネシア発祥の米料理。ナシは米のこと、ゴレンは炒めるって意味。つまりチャーハンです。ちなみにミーゴレンの場合はミーが麺を意味するので焼きそばになります。
ナシゴレンにはクルプックというエビせんがのってます。おそらく海老の代わりなのでしょう。ハラルマークがあったので豚肉は使用されていません。
こちらはサテ。一本だけ頼みたかったんですが5本からしか注文を受け付けていないようです。味濃い目の串焼き。酒が進みそうな味ですがアルコールの提供はしていません。
酒にあいそうな料理があるのにそれが提供されないのは少しモッタイナイ気がします。でもインドネシアのムスリムは飲酒をするムスリムが増えつつあるんだとか。酒の販売が禁止されている地域もあるようですがバリ島のように少数民族やイスラム教徒ではない国民がいるインドネシア。9割がムスリムのようですが中東のように厳格ではないそうです。そもそもビンタンビールを作っていますからね。今後は飲酒文化が浸透していくのかもしれません。
サテをアテにビールを飲む。そんな日がいつか来るのかもしれません。
こちらは台北駅のコンコースです。日本で駅の地べたに座るのはホームレスくらいですが、台湾ではヒジャブをした女性が多め。休みの日、気の合う同胞とここでおしゃべりするのが台湾外国人の楽しみの一つなんだとか。
コロナによりここに集まるのが禁止されていた時期もあったようですがまたおしゃべりできるようになったそうです。
外国人が一カ所に集まる様子は台湾だけのことではなく香港でも似たような状況でした。香港ではフィリピン人が駅に集まり路上で過ごしていました。
日本でも最近インドネシア人労働者が増加傾向にあります。そのため東京駅のコンコースで外国人が地べたに座って談笑する日が訪れるのかもしれませんね。
インドネシア料理は食べれましたが全然インドネシア感はありませんでした。味わうならば本国へ。次回の旅行先はジャカルタで決まりですね。