在日クルド人自治区「ワラビスタン」でラクを飲む
今回の池袋滞在、埼玉散歩。一番行きたかったのはここ蕨駅です。本日は蕨駅界隈を散歩します。
蕨駅は蕨市と川口市が近くにあります。この近辺は中国人も多いですが在日クルド人が多く住んでいるようです。現在日本にはおよそ2000人の在日クルド人がいるそうですが、その内の7割ほどが蕨駅界隈に住んでいるようです。そのためこの地域を「ワラビスタン」と呼ぶようになったんだとか。
そもそも川口に外国人が多い理由は家賃が安いのもそうですが、外国人労働者を受け入れていた背景があります。
川口は工業の街で中小企業が多く、そこで働く外国人が住むようになったそうです。それ以降は同郷の人を伝手にどんどん集まりコミュニティが出来上がったんだとか。
ワラビスタンの話の前に、気になるお店を見つけてしまいました。
蕨市は外国人に寛容ですが、この手の店にも寛容のようです。市内にはここ含め3軒ほどその手の店があるようです。
蕨市のサイズは東京ドーム100個分。その中に3軒あるってことは東京ドーム30個に1軒あるってわけですよね。
このストリップ小屋、日本最小の劇場なんだとか。東京ドーム何個分でしょうかね。
蕨駅の西側。飲み屋街となっており特にワラビスタンの雰囲気はありません。この辺にモスクもあるようですが外観からは判断できません。
そもそもワラビスタンっぽさってなんでしょう?
中東のイメージをしていましたが、クルド人とトルコ人、イラン人、区別ができないんです。なんとなく中近東あたりにいる人。大体の方がこんな印象でしょう。基本的にほにゃららスタンは区別ができそうにありません。
カザフスタン、パキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、アフガニスタン。これらの違いが分からないのです。
違いは判りませんが個人的にすごい興味のある地域です。アフガンとパキスタンは色々問題ありで入国は厳しい。トルクメニスタンはビザの申請が難しいため入国が困難。唯一行けるところはウズベキスタンとカザフスタンでしょうか。この辺の旅行は検討しています。
ワラビスタンを紹介するにあたりちょっとだけわかる範囲の話をします(間違っていたらすみません)。
まずクルド人についてですが、国を持たない民族と言われています。
クルド人が住んでいた地域はチグリス川付近。四大文明のところですね。そのあたりに住んでいたそうです。昔はオスマン帝国がその付近を統治していました。でもオスマン帝国はそこに住む人をがんじがらめにするのではなく、自治権を与えていたそうです。そのためオスマン帝国の中にいるけどクルド人は自治があり国として成り立っており、そこは「クルディスタン(クルド人の土地)」と呼ばれていました。
しかし第一次世界大戦でオスマン帝国が破れると勝利国のイギリス・フランス・ロシアによりオスマン帝国の分割が行われ、クルディスタンと呼ばれる地域はバラバラになってしまいました。トルコ、イラン、イラク、シリア。この辺のぐちゃぐちゃってしたところに国境で分断されてしまったわけです。割合としてはトルコが多いのでしょうか。
国境で分断された挙句、宗教観や民族的アイデンティティの違いにより各々の国とクルド人との間で争いが絶えないようです。クルド人は自国が欲しい、統治している国は出ていってほしいという感じで争っているのでしょう。
とくに陸でつながっている地域はこの手のトラブルはどの国でも抱えているものです。理想は国境のない多民族国家ですがなかなかそれも叶わないのでしょう。中東のあたりはずっと宗教と民族でもめてます。
日本にいるクルド人の多くはトルコ国籍の方です。日本とトルコは友好国。そのためお互いビザが免除されています。中には観光ビザで入国してそのまま不法滞在しているクルド人も多くいるようです。その人たちが難民申請をしており、それがちょっと問題になっているようです。
日本とトルコの友好関係は1890年のエルトゥールル号遭難事件の頃からの付き合いです。そして1985年のイランイラク戦争でイランに住んでいる日本人215名を助けたのはトルコの航空機でした。「エルトゥールル号の借りを返しただけ」トルコはそのように言ったようです。このような経緯がありトルコは親日家も多いんだとか。
クルド人の迫害を認めてしまうとトルコを悪く言うことになります。そんなわけでこの件は触れたくないのでしょう。日本としては知らぬ存ぜぬで通しているんだと思います。
個人的にもトルコは好きです。行ったことないけど料理とか美味しいし、文化もいいですよねー。
ちなみにこちらは蕨市内にあるトルコ風...ではなくソープランドです。
トルコとはそのような関係のため、日本としては難民認定はしづらい立場なのでしょう。
まぁそもそも日本は難民認定については消極的で令和元年の難民申請者は10375人に対し在留が認められたのは81人。内訳は難民と認定されたのが44人。難民ではないが人道的な配慮によって在留資格が与えられたのが37人です。申請しても認定されるのは1%にも満たない狭き門なんです。
当然クルド人はこの44人の中にいません。そもそもクルド人という扱いはせずトルコ国籍を持つトルコ人という扱いになっています。2020年のトルコ国籍者の難民申請者の数は836人。全てがクルド人ではないにしろ、割合は多いのでしょう。この時も難民認定はされていません。
難民申請をしているということは、在留資格を持っていない人たち。在日クルド人は2000人ほどいるようですが、4割が在留資格を持っていない方々のようです。難民申請をすれば仮放免という形で収容はされないものの軟禁状態が続いているようです。
クルド人は難民ではないというのが日本の考え方。
このような中で在留資格を取るならば「人道的配慮」を理由にする形でしょうか。
まぁ実際のところ難民ではないのに難民申請をしている人もいるため、全部まとめて拒否しているのでしょう。
在日クルド人が多くいる街、蕨・川口ですが、そういった雰囲気はありません。
たしかに中東系っぽい人が目立ちますが、街は至って普通です。悪さをすれば収容されるか強制送還となる。そしてその行為が在日クルド人への偏見を助長させ、同胞らにも迷惑をかけることとなる。結果的に息を殺して生活をしているのでしょう。
駅前にある飲食街。飲食街なのにパブとスナックの看板しかないんです。
ぜんぜんワラビスタンな感じではない。
スナックにキャバクラ、風俗店が密集している場所も。
ぜんぜんワラビスタンな感じではない。
駅前のチャリ置き場。味があっていいですね。蕨・川口っぽさがあります。
ワラビスタンっぽい場所はこちらでしょうか。
日本クルド文化協会。この付近にクルド人が多くいる証拠。表札があるだけでここで何かを発信しているわけではなさそうです。
せっかくワラビスタンにいるのでそれっぽいの食べたいです。探したところ数軒トルコ料理?クルディスタン料理?を提供している店がありました。
ケバブ屋さんですね。トルコ料理っていうより中近東料理ってかんじでしょうか。
中国だけど新疆ウイグル料理屋にも似たような料理がありました。
お酒を注文しました。
こちら「ラク」と呼ばれるトルコの蒸留酒です。原料はブドウ。ワインを蒸溜し、そこにアニスを足してあるようです。アニスは加水すると白濁します。
この「ラク」は蒸留酒の祖になります。
蒸留酒はメソポタミア文明がはじまりです。ちょうどクルディスタンのある地域がメソポタミア文明のあった場所です。そこで作られたのがアラックという蒸留酒でした。それは海を渡り伝来し、イギリスではアクアビット、モンゴルではアルヒ、ネパールではラキシー、ブータンではアラ、インドネシアではアラック、そして日本では「阿剌吉酒(アラキ酒)=焼酎」と中東から日本まで伝来したわけです。つまりラクはトルコ焼酎なんです。
イスラム教では飲酒は禁忌とされ、国によっては販売すら禁じられるところもあるんだとか。
トルコもイスラム教の人が大半ですが、イスラム教には派閥がありオスマン帝国では飲酒は寛容だったんだとか。そのため現代でもトルコでは飲酒文化が残っており、この手の酒も製造販売ができるようです。
ラクはシロックというフランスのブドウで作ったウォッカの味がします。
アニスで味付けをしているのは蒸留技術が未熟だったころの名残で、香りづけをすることで特有の味や臭いを消しているのでしょう。アニスが強めなのでアブサンとかアニゼットとかに近いです。ただ甘さはかなり控えめでアニス味のシロックって感じ。
アニスの匂いが苦手な人はちょっと厳しいかもしれませんが、アブサン好きなので「ラク」も美味しく飲めます。
トルコに行ったときにでもまた飲んでみたいですが、現地では密造酒が販売されていることがあるようです。粗悪なだけであればよいのですが、原料にメチルアルコールを使用しているのも出回っているそうで、死者も出ているんだとか。海外では蒸留酒ではなくビールにとどめておいた方がよさそうですね。
こちら、シシケバブです。やっぱ羊肉は美味しいです。
クミンの味とマッチします。米とサラダがグチャグチャってなってるやつ、日本だとこういうの少ないですよね。米がサラダ感覚なのが新鮮です。もっと違うトルコ料理も食べてみたいので次の海外はトルコでしょうかね。
ワラビスタン、普通の街でした。トルコ料理屋ってどこにでもありますしね。
ただお客さんは全員外国人で一切日本語は飛び交ってなかったです。なんか、海外に行った気分が味わえます。日本は島国ですがそれでも中東の民族問題を抱えているようです。何かできることがあるとすればクルディスタン料理を食べるくらいでしょうか。海外旅行に行けない今、ちょっと中東気分を味わえるワラビスタンに行ってみてはいかがでしょう。