日本人も可能。バンコクのスネークファームで格安予防接種
感染症により海外渡航が制限され、旅行に行きたくてもいけない状態でした。
旅行が趣味の人だけでなく海外で働く人、観光業に従事している人は辛い日々が続いたでしょう。旅行が趣味の私もまだかまだかと渡航解除を待ち望んでいました。
騒動が始まってから二年後の2022年、やっと渡航制限が緩和されました。これで好きに海外に行けます。そして今、タイに来ました。
ただし渡航する条件としてワクチン接種が必要となりました。
今回タイに入国の際もワクチン接種が必要で、それらの書類を事前に用意しました。
これはほかの国でも同じように渡航する際はワクチン接種とその証明が必要なんです。
ただこれ、今に始まったわけではありません。行く地域によってはこれまでもワクチン接種の証明が必要だったんです。
例えば黄熱。アフリカでは黄熱が流行しているためそのワクチン接種が必要となります。ワクチン未接種の人は渡航ができません。このようにコロナ以前から渡航の際にワクチン接種が必要な国があるのです。
また渡航に必要ではありませんが摂取した方がよいワクチンがあります。
例えば狂犬病ワクチン。
日本では狂犬病がゼロですが、ゼロの地域は日本とニュージーランドだけで他の国は全て狂犬病リスクがあります。狂犬病とは犬を主に野生生物が宿すウイルスで、それに人間が感染すると100%死ぬ恐怖のウイルスなんです。過去に狂犬病を発病して奇跡的に回復したのは5人だけなんだとか。つまり犬にかまれれば死ぬ可能性が高いんです。
日本では飼い犬の狂犬病ワクチンは必須で、それを怠ると罰金刑となります。海外でもそのような法律があるのかもしれませんが、日本と違って野犬や野良犬が多いです。それらは狂犬病ワクチンを打ってないためウイルスを宿す犬がそこら中にいる可能性があるのです。
狂犬病だけでなくほかの感染症も注意しなければなりません。A型肝炎、B型肝炎、腸チフス、日本脳炎などなど。世界には様々な感染症があり、海外に行く以上はそれを防御しておくべきなんです。
そんなわけで私は、海外旅行に出る前に様々なワクチンを接種しました。
犬にかまれて死にました、娼婦呼んだら死にましたってならないために事前に予防をしたわけです。
しかしこれらのワクチンは自費です。チンチンイタイイタイになるリスクを国が保障してくれるわけでもなく、ワクチンは実費なんです。金額は10万円くらいしたでしょうか。命を守るのはそれだけ費用がかかるんです。
でもワクチンを打ったおかげで犬にかまれても大丈夫だし、マッサージを受けて恋に落ちたとしても病気のリスクが軽減されたわけです。
でも、ワクチンは一生ではない。
そうなんです。新型コロナウイルスのワクチンも半年経った段階で追加ワクチンを打ちました。高齢者には四回目のワクチン接種が始まっています。
一生涯続くワクチンもありますが、基本的には打ったあと徐々に抗体は減り、ある程度の期間が経ったところでブーストワクチンをしなければなりません。A型、B型肝炎ワクチンは10年近く効力があるためチンチンイタイイタイにはなりませんが、狂犬病は3年経つとワクチン効果が減るため再度打たなければなりません。
しかしワクチン一発14000円。
狂犬病ワクチンは吉原の格安店くらいの値段がかかるんです。抗体ができるまで3発ほどワクチンを打たなければなりません。つまり42000円かかるんです。そして3年ごとに14000円。頻繁に海外に行くのであればよいのですが、このコロナ禍ではなかなか旅行にも行けません。それに14000円はかなりの負担です。
でもこれ、日本で打った場合です。海外であれば値段が違います。そしてそれはタイでも。
どうやらタイで狂犬病ワクチンを打つんだったら6000円くらいで済むようです。つまり半額以下。
現在、タイにいます。そして最後にワクチンを打ってから三年ほど経ちました。これはちょうどよいんじゃないでしょうか!
ってことで行った先はシーロム駅です。
ネットで色々調べたところ、この近くにワクチンを安く打ってくれる病院があるんだそう。その病院はスネークファームと言われる名前からして明らかに蛇飼っているようなところですが、どうやら本当に蛇の動物園的なところみたいです。蛇は毒があるのもいます。それの血清が必要です。それが理由なのかわかりませんが、こちらではトラベルクリニックがあり、ここで様々なワクチンを打ってくれるんだそう。そしてここは赤十字協会が運営しています。海外の病院って不安しかありませんが、赤十字であれば世界基準なので安心できるでしょう。
でも、外観が怪しいんですわ。営業しているのか不安レベル。
こちらには営業時間が書いてありますが、これはスネークファームのほう。今回行くのはスネークファーム内にある病院です。病院は8時30分から営業しているんだそう。
おそらく日本もタイも変わりないのでしょう。タイも日本同様に老人を労わる国。そのため医療保障はしっかりしているんでしょうね。その結果どうなるか。病院には老人があふれ、老人の憩いの場となります。診察をするのではなく会話をするために病院に訪れる老人が増え、常に病院は混雑しているのでしょう。これはタイでも同じ。それであれば早めに来てすぐに診察をしてもらうほうがよいでしょう。ってことで8時30分前に病院に来ました。
でも、それ間違いでした。
こちらは翻訳した壁紙。これを見る限りトラベルクリニックは午後しかやっていないようです。ただただ早朝に病院に来ただけでした。
つまり、出直しです。
ってわけで翌日。今回は一つ先の駅サムヤーン駅で降りました。地下鉄で来る場合、こちらの方が近いです。
サムヤーン駅の近くにはチュラロンコン大学というタイで一番古くからある大学があります。タイで一番頭の良い大学、世界では16番目のようです。ちなみに東大は35位、京大は61位なのでチュラロンコン大学に通う人たちはかなり頭の良い方々なのでしょう。このように有名な大学があるためサムヤーン駅は学生の駅となっています。
ほかのところよりも少し若い人向けの店が多い。私が来るようなところではありません。
なんかレインボーカラーになっています。おそらくLGBT関連のやつなんでしょう。サムヤーン駅に直結するサムヤーンミットタウンではプライド月間をやっているそうです。性に寛容といわれるタイでも同性愛者は生きづらい世界なんでしょう。
商業施設がこのように前面にサポートをすることはよいのかもしれませんね。
13時前。スネークファームに到着です。これよりワクチンを打ちます。
病院に入ると先日とは打って変わって多くの患者が座っています。かなり混んでいます。病院に入るなり看護師?の人から声をかけられます。何言ってるかわかりませんが「ワクチンを打ちたい」と伝えると紙を渡されます。
トラベルクリニック用の紙です。氏名、国籍、パスポートナンバー、住所、連絡先などの個人情報の記入をしていきます。受診するためには診察券が必要でそれの作成のために情報記入をしなければなりません。そのほか打ったことのあるワクチンの記入をしなければなりませんが、最終的に先生と話をするためたぶん未記入で問題なさそうです。
そららを記入し受付番号をもらい待機。
順番になると血圧を測ります。普段は低血圧ですが、慣れない環境だったので少し血圧が高め。
血圧を測ったあとに20バーツ払います。これは診察券をつくるための費用。そのあとドクターがいる部屋の前に移ります。ここまですべて英語で案内してくれます。そこまで難しい英語ではなく「next one」「next two」といった具合で指差して次の場所を案内してくれるので英語がわからなくてもどうにかできます。
私の前に15人くらいいましたが30分程度でドクターのところに到着しました。
ここからはちゃんと説明しなければなりません。まずは私のワクチン接種履歴をドクターに話します。
このような摂取履歴が書かれたノートを私は持っています。
中身はこのように摂取日、摂取ワクチン、摂取場所が書かれています。これがあればいつワクチンを打ったのかがすぐにわかります。
ドクターにこれを見せ、狂犬病ワクチンを打ったのが三年前だからブーストワクチンを打ちたい旨を伝えます。
ドクター「No!」
まさかのワクチン打つの拒否。
は!?いや、私ワクチン打ちに来たんですけど?
最後に打ってから三年経つんですよ?日本では三回ワクチン打ってから三年後に打たないとダメってなってるんですよ?
ドクター「次に必要なのは犬に嚙まれたとき。今は不要なのでワクチンは打てない」
どうやらタイと日本でワクチン接種の考え方が違うっぽいです。
日本では3回ワクチンを打った後、一年後に追加ワクチンを打てば5年間抗体が継続、追加ワクチンを打たなければ3年間継続ってことでした。私は追加ワクチンを打たずに3年経ったので追加ワクチンを打つつもりでした。
しかしタイでは3回ワクチンを打てばその時点で5年間抗体ができるという考えのようで、私は抗体があるため追加ワクチンが必要ないってことのようです。
つまり私はワクチンを打てないのに病院に来たわけです。
でも、でもこれで引くわけにはいきません。せっかく安くワクチンが打てるわけです。それであれば打てるワクチン、打つべきではないでしょうか。
私はワクチン接種をある種のスキルと思っています。本来持っていなかった能力をワクチンで得られるんです。安くスキルを得られるなら、今のうち入手した方がよいんじゃないでしょうか。
イエローフィーバーワクチン。
黄熱ワクチンを打ちたいです。黄熱リスクのある地域は南米とアフリカなんだそう。まず行くことなさそうですが、もしかしたら行くかもしれないし今後ほかの地域で流行る可能性だってあります。日本で打つと2万円近くしますが、ここでは1400バーツ、およそ5400円で打つことができるんです。15000円お得であればこっちで打った方がよいじゃないですか。ってわけで、黄熱ワクチンを打ちたい旨を伝えました。
ドクター「なぜ、そのワクチン打ちたいの?」
まさかこんな質問されると思いませんでした。
「もしかしたらアフリカ行くかも」とか「もしかしたら宇宙人が攻めてくるかも」程度の理由ではワクチンは打ってもらえず、どうやら相応の理由が必要のようです。そのため「アフリカに渡航します」と伝えました。
ドクター「アフリカのどこに行くの?」
なにこの執拗な質問攻め。ここのワクチンは公費でまかなわれているのでしょうか。そのためちゃんとした理由がなければ打てないのかもしれません。
私「エジプトとかに行きます」
とっさについた嘘。アフリカで行きたいところっていったらエジプトでしょう。ピラミッドとか見たいし、なんとなく楽しそうだし。そもそもアフリカはエジプト以外の知識がありません。
ドクター「エジプトは黄熱の対象外地域です」
あっ、詰んだ。
適当に言ったウソですが、適当すぎて適当ではありませんでした。
黄熱は「黄熱ベルト」と呼ばれる感染地域があるようでエジプトはそこから外れるようです。つまりエジプト渡航は黄熱ワクチンは不要。
でも、でもです。私は「エジプトに行く」とは言っていません。私は「エジプトとかに行く」と言ったのです。ここで重要なのは「エジプト」ではなく「とか」の部分です。エトセトラ、つまりほかの国にも行くんです。
そのため医師にほかにも行く旨伝えました。ナイジェリアとか、そのへん。と。
ドクター「あなたはなぜその国に行くんですか?仕事は何ですか?」
さらに質問攻めです。
私「ドクター、君は旅に目的が必要なのかい?」
ってアメリカ人ぽく言ったとしても受け入れてもらえなさそうだし、そんなニュアンスの言葉を伝えられなさそうです。
そして私は二つ目の嘘をつきました。
私「アイアムユーチューバー」
YouTubeを始めたのが昨年の11月。8カ月経った現在ユーチューブ登録者は500人に達していません。収益化には1000人必要なんですがそれすら満たしていません。反復継続する者を業をなす者とするのであれば私はユーチューバーですが、収益化できていないのであれば名乗るのはお門違い。私はユーチューブに動画をアップしてるだけの人。つまり私は嘘をついたわけです。
でもユーチューバーってなんか便利です。何か聞かれても「ユーチューバーです」と名乗っておけばそれですべてが収まるんです。ユーチューバーってコロナ禍でもアフリカとか行きそうじゃないですか。ドクターも私がユーチューバーと名乗ってから納得したのか質問攻めはここで終わりました。
逆に、「アフリカ行くなら髄膜炎菌ワクチン打った方がよいよ」と必要なワクチンを提案してくれました。
予定では狂犬病のワクチン接種のはずが、流れで黄熱と髄膜炎菌ワクチンを打つことに。料金は黄熱が1400バーツ、髄膜炎菌ワクチンが2500バーツ(地味に高い)、注射代が50バーツの計3950バーツかかりました。髄膜炎菌ワクチンは日本で打つと30000円くらいかかるので、まぁここで打てて良かったんじゃないでしょうか。
問診が終わるとワクチンを購入。それを看護師に渡して打ってもらいます。外国人旅行者が多く利用するため看護師さんも手馴れています。狂犬病ワクチンは打てませんでしたがほかのワクチンが打てました。
そもそも狂犬病のワクチンって事前に打っておかなくてもよいんです。ワクチンを打っていない人が犬に噛まれた場合、一カ月かけて5回ワクチンを打たなければなりません。でも事前にワクチンを打っていれば2回だけで済むそうです。ただ、事前のワクチンですでに3回打ってるんです。結局5回打つのと同じです。違うのはワクチンを打ってないと5回打つのに一カ月かかるのに対し、ワクチン接種していれば3日で済むってことだけ。日数的には事前にワクチンを打った方がよいですが、金額的には保険適用のため無料で狂犬病ワクチンを接種できるようになるため、むしろ摂取しない方がよいという考えもあります。他の感染症は事前に打つべきですが、どっちにしても噛まれたら追加摂取が必要な狂犬病は、ワクチンを打たなくてよいのかもしれませんね。
今回予定とは違うワクチンを打ち、私はアフリカに行く片道チケットを入手しました。今回アフリカに行くというでっち上げた話でワクチンを打ちましたが、これは現段階での話のこと。もしかしたら来月アフリカ行きが決定しているかもしれないし、明日にはユーチューバーデビューしているかもしれません。アフリカ系ユーチューバー、ちょっと新しいんじゃないでしょうか。
アフリカでユーチューブ配信。今回の嘘が嘘でなくなる日も近いかもしれません。